名探偵コナンの脚本を手掛けてるなんて「たかが殺人じゃないか」
去年買った本を積読から引っ張り出して読みました。
昭和24年の推理小説という副題からわかるように戦後間もない愛知県が舞台の推理小説で、リアルな当時の生活が眼前に現れるような文章が、とても、うらやましい……。
私はミーハーミステリファンだったと過去形なのはもう随分とミステリを読んでいないからです。
高校時代は有栖川有栖の火村シリーズにそれはもうはまってはまって、火村先生と結婚したいと願うような女子高生でした。
他にも浅見光彦も好きだし、結婚はしたくないけど御手洗潔がいたらけちょんけちょんにされたいし、中禅寺明彦がいたら逆に顔だけでも拝ませて!というミーハーぶり。
色々推しが増えるにつれて残念ながらミステリから遠のいてしまったんですが、久しぶりに読んだ本書はもう、面白いのなんのって!!
ミーハーにありがちなトリックを考えずに読む派なんですけど、「読者への質問状」があるのを目次で知ったので久しぶりだし頭を使いながら読みまして。
なんとなく犯人もトリックもわかったような気になりながら読み進めましたが、トリックはもう全然ハズレてました。
やだなあ、もう。
青春小説としても面白く、探偵や助手が主人公ではなくて、推理小説家を目指す日本初の高校3年生の少年が主人公で、大人を知り女を知り、青春をしていきながら殺人事件に巻き込まれるわけなんですね。
ミステリの感想の難しいところは、ネタバレなのでは?
なんにも書けないことにいま気がつきました。
青春小説部分の感想も謎解きするには語りたくない……難しい。
書ける部分といえば戦後風俗の生々しい描写についてですね。
誰もが憧れるモダンとか浪漫の世界を自由自在に操っている筆致!憧れます。
当時のことを当時の言葉で当時らしく書けるかっこよさ!
言ってしまえば、それらしい言葉を勇気を持って断言的に描けばそれらしくなるんだけどそういうのとは信憑性が違うんですよね。
米寿の凄みが字面から浮かびあがって、楽しさに拍車がかかります。
たとえば昭和レトロとか大正浪漫を妄想してもそれを文章にするのって大変じゃないですか?
その時代を象徴するものから小物まで、思い描けても単語を知らないと文章に出来ない歯痒さを感じたことが誰しもあるはず!ない?あるよね?
モガの着てるあのワンピースってワンピースでいいの?ドレスって呼んでたの?ベレー帽はベレー帽だったの?
知らなさから生まれる単語の揺らぎ、描写の揺らぎが本書はほとんどなくて、たとえば太宰治作品をリアルタイムで読んでたらこんな気持ちだったのかなと思わせてくれるような想像力を掻き立ててくれました。
タイムスリップな一冊でした。
映像化とかしないのかな。