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マジで推しがいる人は逆に読めない「推し燃ゆ」

推しがいると重なって辛いとか、わかりみが深いとかそういうことではないです。
本書を手に取る人のうち、自分にも推しがいると思って手に取るのは悪手です。
作者、主人公の推しスタイルに抵抗を感じると途端に白けてしまいます。
これはどちらかと言うとよくも悪くも青春小説であって、あの生きづらかった思春期のあの日々を描いたものだと思った方が惹きつけられる。
私は自分と程遠かろうと近しかろうと主人公だろうと登場人物だろうと推し測って没頭できるタイプの小説読みなんですが、私自身に推しがいるために本書はいささか主人公とは距離ができてしまった。

それでも、生々しくて瑞々しい自分のことしか見えていないし考えられない強くて弱い女子高生を介した世界観はとても強烈でした。

感想というよりも推しとの付き合い方語りになってしまう。

主人公が推しの全てをかわいく愛しく思って祭壇を作ってノートに発言をまとめていくのは推しがいるあるある的に描いてるのかなと捉えてます。
推し方は十人十色で年代にもよるけどあの高校時代の生きづらかった日々に推しとどうつきあってたかっていうのが重ならなくて、ともすればすぐ古参のオバの気持ちになるし、なんなら姉の気持ちわかるううという憑依が雑音になってしまいました。

すっごい小説の表題からかけ離れたこと綴ると、主人公の部屋が汚いのが許せなかった。勉強できないのもしんどいし、バイトが出来ないのもしんどくて、推してると、自分を通じて推しが評価されることが多くなるから、主人公ほど現場に入ってブログ書いてSNSやってるとあのアイドルこんなファンしかいないのまじヤバという視線を嫌でも感じると思うんだよね。
推しがかわいいから今日も元気!という推しに生かされてる感も少なくてあくまで主人公が生きるための推しでしかなく、作者に推しはいるのかな……って邪推も出てきてしまいました。
まじで感想でも気付きでもなくて更新するか迷いつつ筆を運んでいます。

アイドルを推してる女子高生というより、担当をナンバーワンにしたいホスクラ通いのメンがヘラってる女子の思考回路の方が近い気がする。

SNSの炎上している様とか、インスタライブのコメントとかアンチの感じとかはとてもリアリティーがある分、マジで主人公のように推してる女の温度湿度が低くて、根底に流れてる家族とのやり取りとか主人公の生活の部分に目が行ってしまう。
それが狙いならまんまと姉やバイトのだるさとかまざまざと感じました。

姉の長女みが強いので妹のいる長女は読むとアナ雪がこじらせ長女の心折ってきたみたいになるか注意してください。

海外赴任の父と教育熱心な母とがんばりが報われるからついがんばる姉がいる主人公がこうまで病むのも母の教育ボタン掛け違え……もしかして定形じゃないのかな……言語能力に特化しちゃったとか……みたいな邪推が入って、メンヘラった女にありがちな推しへの執念とそこからの良くも悪くも脱却……つらみ……が正直なところです。

小説の中の推しは、地下アイドルほど金に物言わせて近くなれないし、ジャニーズほど距離が遠くない感じで、二次元舞台俳優か声優あたりを推してるとなかなか生々しいと思います。

推しが燃えるとこんなに落ち着いてられないし、解散引退はマンション凸する気も起きないのでは?というオタクなので主人公とは解釈違いだし同担拒否じゃない私でもこの主人公のアカウントは知った気になってんじゃねぇブロックです。

種火のような燻りを推しにぶつけてるメインストリームの下に流れる命と家族と力のない自分を味わう一冊でした。

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