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美術館と焙煎理論。

ボクの取り組んでいるローストの味づくりでは、焙煎理論という考え方は今はもう無くなって、シンプルに感覚で味づくりをしている。
それは、結果的にそうなってしまったというものである。
まぁ、あえて理論として語って貰いたいと聞かれれば、ローストにおける熱量の与え方が、オーバーではダメ、ジャストか、もしくは若干だけアンダーを意図して狙って感覚で整えることだと述べるだろう。それを感覚にて整えるためにすることが、コーヒーローストにおける技術なのだと思っている。
そしてその感覚の使い方とは、実際にローストしたコーヒーをカッピングして行う。フレーバーや酸味、液体の質感をローストされた味づくりから設定値を感じ取り、味わいが整っていない場合にはそれを分析し、次回のローストの設定をカッピングからたどり、そこを修正をするための感覚の使い方になる。

結局のところ味づくりとは最終的には脳内で風味を情景として認知していて、また口内で感じられている味づくりのバランスがあり、その「脳内の風味の情景」と「口内のバランス」という2つの状態の異なる感覚の味づくりを重ね合わせて、ひとつの味わいと感じているため、その両者をロースト技術によりコントロールするためには焙煎機における技法の挙動を感覚において理解することが重要であり、それら技法の組み合わせ方によって表現がなされるため、感覚においてローストにより変化している詳細を感じられるための感覚の育成がとても重要なのだと考えて取り組んでいる。

ローストにおける味づくりが難解なのは、一つの技法による設定値が、「脳内の風味の情景」と「口内のバランス」という2つの異なる状態が一つの設定値で両者が変化をしているためであり、そのため化学的な理論からローストを構築するアプローチをとるよりも、感覚にてロースト技法における挙動を理解し、その組み合わせ方を感覚により判断する味づくりを目標としたアプローチをとる方が、理屈や理論という工程を咬まさなくてもよくなるため、ダイレクトに味づくりに繋がるため、レスポンス性が高く即時に対応が可能になるため、この取り組み方が最善であると考えて「感覚による味づくり」を採用することに至った。

そしてそれは、どのような技法の組み合わせによる挙動の状態が感情にまで働きかける良質で美しい状態であるのかを感覚で理解をすることで、それをローストで表現が出来るものであるという考え方から美しさの状態を学ぶことになった。
その学びこそが、美術館で学べるものであると思っている。

そのような考え方は、5年くらい前から取り組むようになり、実際に美術館に出向き、その中で感情にまで働きかけられた作品から、その表現で使われている技法を紐解くことで、ひとつひとつの技法は何のために使われていて、何を得るためにそれら技法を組み合わせているのか?を分析することが出来れば、それをローストの技法の調合という味づくりに当てはめることが可能になるというロジックである。そのためにボクは美術館に足を運ぶことにしている。
そしてその表現の分析では、脳内の風味の情景の美しさを表現するための技法の調合となっている。

ボクは「鎖国」と呼んでいるのですが、そこにたどり着くためには閉鎖的な環境をあえて選ぶことで、今の時代の流れを取り入れることよりも、美しさという普遍的な状態を認識することが大切なことであるという解釈から、取り組み始めることになったのです。
それには、美しさとは時代の流れの中にある存在だけではなく、新しくても古くても美しさの価値は変わらない存在であり、ゆえに色褪せることもない。それこそが、美しさが持ち合わせている状態の価値なのだと考えているため、美しさの本質を表現できるようになるために美術館で技法の組み立て方を学んでいるのです。

ボクが参考にしているものは、日本画や書道など日本に古来からある美術品の中にある美しさである。
塗りの重なり方がそのまま認識でき、それを含んだ表現がなされるところはローストと酷似しており、どのような生地を使うかによってもその上に表現される色の登場の仕方が変わるため、その表現にたどり着くまでのひとつひとつの要素の重なりを分析することにより、その意味を紐解くことで、いろんな発見や気づきが得られるため、美術館に出向いています。

また日本は湿度が高い国のため、いろんな箇所にその影響を及ぼしている。
その湿度が高いという状況の中で、どのような状態が美しさの本質を表すものであるのか?を知ることは、とても大切なことだとも思っている。
なので、美術館に足を向ける理由には、本当に美しいという状態を理解することを含めて目的としていることになる。

そして、美術品の多くは、自然の中で感じられる美しさの状態を作品の中に切り取り、閉じ込めていたりする。それはその作品を作った作者自身が、何が美しい状態のものであるのかを認識しているからこそ、その状態を作品の中で表現することが出来ているということになる。
そこから言えることは、表現者は自然界の中の美しさの状態を感覚で認識することが求められており、それを表現に置き換えるために技法の組み立て方を熟知していることが求められるものであると言える。
そこを目標と定めることで、思い描く表現ができるようになると考えている。

すると、美しさの状態の認識の幅を深めるために取り組まなければならないということを理解することだろう。

ボクの取り組みでは、美術館はローストにおける技法の組み立て方という表現の背景に存在している部分の理解の幅を広げてくれる場所になる。
また、美しさの本質を認識させてくれる場所でもあり、それはテイスティングで感じられている脳内で感じられている世界観と繋がっているものでもあると認識をしている。








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