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あれこれ試してダメでオッケーよ

つい昨日の話である。
ここ数年通っている心療内科で、私は医者に褒められた。
内容は、「新しくアレコレやってみて駄目だったから、今まで試して来た方法を毎日こなせるよう縮小版でやってみますね」という報告だったのだが、どうもその判断が良かったらしい。
「最初に来た頃に比べていろいろと良い方向になってますね」というような事を言われて、私はその後、待合室でうっかり泣いた。

私がこの病院で『パニック障害』と診断されて、数年以上が経過した。
なったのは、20代の入り口。
一人で海外旅行をしてみたら急に発作を起こし、そこから「また発作が起きたらどうしよう」という不安で飛行機や新幹線、エレベーターなどの閉鎖空間や展望台などの高所に強い忌避感を感じるようになった。
いわゆるパニック障害と予期不安、広場恐怖症である。

おかげで仕事も出張や転勤、長距離移動が無い職種で低層階の建造物にある職場でないと働けないし、好きな旅行や観劇も一人では出来ない。

歳を取るにつれて、行ける範囲がどんどん狭まることに私は恐怖した。

好きなところに行って、好きなものを見に行きたい。
障害がなければ、体自体は健康で時間も金も工面すればあるのだから出来るはず。このまま年を取って、さらに何もできなくなってしまうのかという不安は常に私の頭の中にあったし、今でもそれはある。

じゃあ、さっさと病院に行けよと誰もが思うだろうが、病院にも色々ある。最初に相性最悪な病院に当たると、マジで人はメンタル系の病院を避ける。実際私がそうだった。勧められた精神科で処方された薬が強すぎて、不安が爆発。あの時したことは親に申し訳なさ過ぎて、あまり思い出したいものではない。
(そのせいで、次の病院を探すことも二の足を踏み、5年以上障害は放置。
調べたら初期の段階なら完治も目指せるこの障害も、そうして私が放置したせいで今の病院から「完治は無い」と言われている。(ので、なった人はさっさと口コミを見て病院に行って早期回復を目指しましょう))

が、さすがに田舎暮らしの生命線である車の運転にも支障が来たらそうもいっていられない。
近所の心療内科に駆け込んで、そこで私は改めて自分が『パニック障害』であると診断された。

診断されて、薬を処方されたからと言って、パッと治ることはない。
これさえやれば一発で治るなんていうのは、ぜーんぶ嘘だとこの後私は身を持って知った。
実際苦しいし、しんどいし、掴めるものは藁でも掴みたいが、本当に藁なのでなけなしの金だけ飛んでいく、ということもままあった。
そもそも病院での診察も保険制度のおかげで誰でも安く受診できるけど、カウンセリングを受けない限りは問診時間は短く5分程度で、話せることは来ない間の体調を説明して終わってしまうし、なんら効果を感じないのだ。

が、状況にひっ迫されて「こうしたいんです」と自分から相談したところから私の治療はやっとスタートしたような気がする。医者から暴露療法を教えてもらい、毎日挑戦し、そのうち関連本を読み。(下の二冊は良書。監修の伊藤絵美さんの本もお勧め)

マインドフルネスを知り、スキーマ療法もやってみたり、カウンセラーを探してみたりもした。
合う合わないはあったし、合わないことが殆どだったし、なんなら今通ってる心療内科で最初に教えてもらった方法、現実暴露療法が自分に一番合ってると気づいたときは膝から崩れ落ちた。自分がやったことが回り道過ぎて。

カウンセリングも、仕事に就くと暴露療法に割く時間も無く、気力も無くしがちなので伴走してくれるコーチ的な意味合いでカウンセラーを探して何度か人を替えて受けてみたが、そもそも信用できない人間に胸の内を明かすのが大っ嫌い(反面、信用した瞬間に扉は全開放になる)な性格のせいか、それとも昔受けたカウンセリングでの鬱屈を思い出してしまうのか、絶対カウンセリングを受けたくない自分を自覚しただけに終わってしまった。

思えば、藁を掴みたくて、とにかくアレコレ手を出した気はする。
ブログで3年日記は自身の振り返りにイイと聞いて、気持ちをつづり続けたら同じことばっか言ってると落ち込んだし、筋トレをやってみたら続けられなくて落ち込んだし、セッションしてもその時は気づけても後に続かない気がして落ち込んだ。

だがそこで終わらず、また本で調べて日記はやった行動を記録し、さらに褒めるように赤ペンで添削するようなスタイルに変えると日々やりすぎな自分の行動を客観視することができた。(パニック障害になる人って基本いろんなことをやりすぎて交感神経を働かせすぎてしまうのでリラックスできない)
筋トレするほど気力がないことを通っている整体師に言われたので、筋トレからストレッチに変えると続くようになった。
セッションで自分の丁度を見つけるには、思ったことを言語化して何度もやってみることが私にはいいと気づいた。

何度かすっころんでも、私はしぶとく小石拾いを続けていたと思う。

それで、昨日、私は医者に褒められた。
「昔に比べて考え方も変わり、怖いと思っても避けず、ダメならダメなりに出来る範囲で挑戦している。マインドフルネスやスキーマ療法などについても勉強していていいと思う」
多分、ざっくり言うとこんな感じのことを言われたのだけど。
その後、会計待ちの席で、私は少し泣いた。

ダメで何をやっても進まなくて、何にもならないと思っていたけれど、なんとかしようとジタバタしていた自分が報われた気がしたのだ。

何度もやってみて、読んだ本も無駄だと思った。
でも、失敗も少しでも蓄えた知識も、全部繋がって生かされている。

全然、ぜんっぜん、パニック障害は治っていないんだけれど、私はこれによって結構自分を知り、自分の人生を少しだけ良きものに変えていると思う。


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