マガジンのカバー画像

連載「記憶を食む」|僕のマリ

17
思い出すことのかたわらにはいつも、食べものがあった。大切な記憶も、ちょっとした記憶も、食むように紡いでいく。気鋭の文筆家・僕のマリによるはじめての食エッセイ連載。 隔週金曜日の…
運営しているクリエイター

記事一覧

書籍『記憶を食む』|僕のマリ 応援店(特典ペーパー配布店)リスト

いよいよ11月6日頃より並びはじめます。 『記憶を食む』僕のマリ 著 応援書店をご紹介です。…

カンゼン
5日前
10

予約スタート!|書籍「記憶を食む」|僕のマリ

2023年12月にスタートさせたnote連載『記憶を食む』 今年の8月で全15回の連載を終了し、書籍化…

カンゼン
1か月前
8

わたしとコーヒー|連載「記憶を食む」第15回|僕のマリ

 三十年以上生きていると、忘れていることがたくさんある。記憶力には自信のあるほうだが、そ…

カンゼン
3か月前
43

炙ったホタルイカ|連載「記憶を食む」第14回|僕のマリ

 いわゆる名作と呼ばれる漫画を、あまり読んだことがない。『ドラゴンボール』や『SLAM …

カンゼン
3か月前
34

キッチンで缶ビール|連載「記憶を食む」第13回|僕のマリ

 いつか「寮母」という仕事をやってみたいと、夏がくるたびに思う。大量の料理を作って、大勢…

カンゼン
4か月前
31

社食の日替わり|連載「記憶を食む」第12回|僕のマリ

 自分の人生を振り返ったとき、総じて「運が良かった」と思うことが多い。例えば、交通事故に…

カンゼン
4か月前
34

先生となんこつ|連載「記憶を食む」第11回|僕のマリ

 夜、走っている。五月下旬は気候がちょうどよく、植物の瑞々しくて青い匂いも含めて気持ちいい。運動音痴でどんくさいわたしだが、走ることは苦手ではない。球技はセンスがゼロで戦力外だったが、走るのが意外と速いのは、遺伝と高校時代の走り込みが効いたのだと思っている。わたしの母校は普通の公立高校だが、スポーツに力を入れていた体育会系の学校でもあった。運動部の人口が圧倒的に多く、制服よりジャージ姿の生徒の方が目立った。運動に関する行事が多く、体育祭はもちろん、水泳大会や球技大会、冬はマラ

幻とコンソメスープ|連載「記憶を食む」第10回|僕のマリ

 近所にある古ぼけた喫茶店は、朝八時頃にオープンして正午には店じまいしている。歩いて三分…

カンゼン
5か月前
26

苺の効力|連載「記憶を食む」第9回|僕のマリ

 わけあって自分の子どもの頃の写真を見ていたら、フグのようにプクプクとしていた。針でぷす…

カンゼン
6か月前
20

祖母と梅、メロンに焼肉、初夏の風|連載「記憶を食む」第8回|僕のマリ

 寝るときに暑いと、ものすごい悪夢をみる。それはもう絶対に。秋から冬にかけては寝るのに気…

カンゼン
6か月前
27

退屈とコーラ|連載「記憶を食む」第7回|僕のマリ

 寒さにめっぽう弱い。寒いというだけで、すべてのやる気は削がれ、鬱々とした気持ちになり、…

カンゼン
7か月前
30

いつかマックで|連載「記憶を食む」第6回|僕のマリ

 わたしは記憶力が良い。とても、良い。自分でも苦しいくらい色々なことを覚えているし、忘れ…

カンゼン
7か月前
29

直樹の焼きうどん|連載「記憶を食む」第5回|僕のマリ

 昨年、やたらとお祭りに行った。ほぼ毎週と言って良いほど行っていた。家から歩いて行ける距…

カンゼン
8か月前
35

りんごを剥いたら|連載「記憶を食む」第4回|僕のマリ

 犬の散歩のバイトに応募して、落ちたことがある。ものすごくやりたかっただけに、ショックが大きくてふて寝した。大好きな犬と散歩できて、お金がもらえるなんて最高!と舞い上がっていた自分が哀れだった。今思えばそんな最高なバイト、倍率が高いに決まっている。実際にやってみたら大変で責任も大きいかもしれないけれど、それでも一度はやってみたいと今も未練たらしく思う。いつかくるその日に向けて、体力をつけておこうと意気込んでいる。  近所にキャバリア・キング・チャールズスパニエルを飼っている