『昨夜のカレー、明日のパン』を読みました。
読書感想文投稿コンテスト「#読書の秋2020」に参加です!
普段は図書館で目に入った本や短くて読みやすそうな青空文庫作品を中心に読書をしている私、『課題図書』という存在が懐かしいやら新鮮やら。企画ページでわくわくしながら選びました。
そして真っ先に目に入ったのがこちら
『昨夜のカレー、明日のパン』です。
(河出書房新社/木皿泉著/2016.1)
たぶん、お腹すいてたんだと思います。
河出書房新社さんの企画ページも読み、著者の木皿泉さんが『野ブタ。をプロデュース』などで有名な脚本家で、この本が初めての小説作品だということも知り、「脚本家さんの小説なら読みやすいかなあ」という勝手な偏見で読むことにして本を入手。
【『昨夜のカレー、明日のパン』裏表紙あらすじ】
7年前、25歳で死んでしまった一樹。遺された嫁・テツコと今も一緒に暮らす一樹の父・ギフが、テツコの恋人・岩井さんや一樹の幼馴染など、周囲の人物と関わりながらゆるゆるとその死を受け入れていく感動作。本屋大賞第二位&山本周五郎賞にもノミネートされた、人気夫婦脚本家による初の小説。書き下ろし短編「ひっつき虫」収録! ◎解説=重松清
あれ、重そうな話だな?
タイトルから勝手に最近流行りのごはんもの日常系ストーリーだと思い込んでいましたが、全くそんな気配を感じさせないあらすじ。あれ? 改めて河出書房新社さんの企画ページを確認しに行き、ようやく『昨夜のカレー、明日のパン』の内容について触れられてないことに気づきました。河出書房新社さん!?
多分、このあらすじを先に知ってたら読まなかったでしょうね……。元々こういった、人間模様や生活模様中心の現実的な小説はあまり読む方でなく、さらに身内が亡くなって七年どころか三年も経っていないので。
でもタイトル可愛いし、タイトルの文体も可愛いし、表紙の絵もクレヨンタッチで可愛いし……と、「可愛いものは正義」精神で読み始めました。こういう本の選び方もありです。
結論から言うと、私みたいな人間の方が読むべき小説だと思いました。
「私みたいな人間」というのは、「身内や大切な人が亡くなっているが悲嘆に明け暮れる期間は過ぎていて、でも喪失や悲しみ苦しみを昇華できているわけでもない人間」ということです。
身の置き様に困っているし、でも生活は続いているし、亡くなったことを理解してそれが当たり前になって、けれど生きていたころの延長線で生きていて、ぐるぐるはしていないけどすっきりもしない。そういう人にお渡しする日にち薬の成分表、あるいは薬効の具体的な結果がこの小説という感じです。
(ちなみに「日にち薬」は実際の薬はではなく、「月日の経過が薬代わりになること。」という意味の言葉。「時薬」という言い方をすることもありますね。私はなぜか「時間薬」と覚えていました)
この小説は、日にち薬が効いてきた人には共感できるところがあるだろうし、服用中の人には「こういう風に効いていくんだな」という一例になります。昨夜のカレー、明日のパン。重すぎず暗すぎず、生活の場を近しくする人たちの様々な視点でオムニバス式に描かれる、日々の生活のお話です。
ごはんものではなかったですが、とても読みやすい作品というのは当たってました。大変おもしろかったです。皆さんもぜひどうぞ!