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読書記録『初恋料理教室』

こんにちは、神崎翼です。

季節は二十四節気の「啓蟄」、七十二候では「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」です。まだ肌寒い日もありますが、虫だけではなく人間も、そろそろ本格的な春を感じるようになってきているのではないでしょうか。

そういう季節のせいか、今回は普段あまり読まないジャンルに手を出しました。

初恋料理教室
(藤野恵美/2014.6/ポプラ社)

京都の路地にたたずむ古びた町屋長屋。どこか謎めいた愛子先生が営む「男子限定」の料理教室では、今日もさまざまなドラマが起こる―。『ハルさん』の著者が贈る、滋味たっぷりのやさしい物語。

(honto商品ページより引用)

というわけで、わかりやすく恋物語です。といっても、明確に恋物語なのは表題作である「初恋料理教室」だけですね。

今回の小説は、4つの短編が連なった連作形式で綴られています。男子限定の料理教室に通う4人の男性がそれぞれ主人公になっていて、恋に不器用な建築家の卵、フランス出身のパティシエ、フランス人形めいた服装の大学生、熟練の彫金師と、年齢も出身も属性もバラバラ。その4人が料理教室を通して、恋に限らず、人と人の縁を繋いでいくさまはあたたかく、心がほっとします。

「初恋料理教室」というタイトルに春を感じて手に取ったのですが、実際には4人の物語には四季も割り当てられていて、一年を通した物語となっています。作中に出てくる料理にもそれが反映されていて、春には菜の花、夏にはきゅうりや甘酒、秋にはゆずや銀杏、冬にはかぶと、旬の食べ物が料理へと丁寧に調理されていくさまは読んでいて大変興味深く、また、なぜだが懐かしい気持ちになりました。巻末にはレシピも掲載されていたので、興味がある方はぜひ作ってみてください。

あと、京都の文化も大いに反映されていて、京都を味わいたい人にも良い物語だと思います。最近は旅行もしづらいので、本を通して京都の文化や料理を味わうもの乙なのではないでしょうか。

私が読んだのはハードカバーなのですが、こちら文庫版も出ています。

ただ、個人的には最後まで読み切るとハードカバーの表紙イラストがとてもタイトルと合っていて、大変愛おしくなるので、文庫版で読まれた方もぜひ一度ハードカバーの表紙を見ていただければいいかなと思います!

短編連作ということもあり大変読みやすく、食べ物マンガや小説が好きな人、心をあたためたい人や優しい物語を読みたい人、あたたかな春、新しいことをしてみようと思っている人にもおすすめです。面白かったです。

それでは、今日はこのへんで。
次の読書記録で会いましょう。それでは。


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