読書記録『魔女のパン』
「ショートストーリーなら読みやすいのでは?」と考え、「分量じゃなくて話の濃密さで考えろ」と毎回撃沈するのは私です。ショートストーリーとロングストーリーって最早別の生き物ですよね。読むときに使う筋肉からして違う気がします。
ということで、今回の読書はこちら。
『魔女のパン (オー・ヘンリー ショートストーリーセレクション)』
(オー・ヘンリー著、千葉茂樹訳、和田誠絵/2006.6/理論社)
アメリカ文学を代表するショートストーリーの名手、オー・ヘンリーの作品をすべて新訳で紹介。初訳作品も多数収録した短編セレクション。いつも売れ残りの古パンを買っていくお客とは…。表題作を含む全8編を収録。(honto商品説明より引用)
浅学ゆえ私は手に取ってから知りましたが、ショートストーリーの名手の方の作品です。アメリカ文学はあまり馴染みがなかったのですが、これはするする読めて面白かったですね。
収録された八作品はこちら。
魔女のパン / 伯爵と結婚式の客 / アイキーのほれ薬 / 同病あいあわれむ / 消えたブラック・イーグル / 運命の衝撃 / ユーモア作家の告白 / 休息のないドア
どの作品も、人間の愚かさと強かさ、その掛け合わせや落差から生まれるおかしさを最大限表現している作品ばかりで、大変おもしろかったです。個人的には、表題作である「魔女のパン」と、あと「運命の衝撃」が好きでしたね。
「魔女のパン」は、簡潔にまとめると40代女性の片恋のお話です。正直苦しみながら読みました。私の反応をざっとまとめると、
「見守ることしかできない恋かぁ」「いやちょっ………きついきついきつい!」「なんでお相手の職業を絵描きだと想定してその可能性に気付かない!?」「魔女ってそういう……そういう……」
って感じです。この短さでこれだけ心にダメージ食らわせるのだから、確かにこれは名作です。作品は心に傷を残したもの勝ちなので。それと、アメリカ文学でも魔女って悪役なんだなぁと知れたのは一つ勉強でした。それにしたって心がしんどいですが。
「運命の衝撃」は、伯父のあととり問題に振り回された二人の男性のお話でした。おかしかったのは、主に振り回されているのがお金をたくさん持っている方という事実でしたね。頭にふと、数千万も口座に持っていながら「何かあったら困るから」と使わず貯金し続けている90代の方のお話を思い出しました。何も持っていない方がいっそ無敵なのかもしれない……と書こうとして、最近巷を騒がせがちな凶悪犯が、俗に「無敵の人」と呼ばれていることを思い出しました。人間が倫理を持って生きていくためには、ある程度ストッパーになる重荷が必要なんでしょうね。
他の作品も素敵で、一度読んだらどれも頭に残る作品ばかりでした。ちなみに、「魔女のパン」だけなら実は青空文庫でも読めます。翻訳者が違うので、読み比べてみるの楽しいかもしれませんね。
それでは今日はこの辺で。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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