読書記録『「山奥ニート」やってます。』
世の中が大きく変わって4年目。
「適者生存」という言葉がありますが、部屋に閉じこもり誰にも会わなくても過ごしていける人間、つまりニートこそが今の世の中に最も適しているのでは、と話題になったのはいつ頃だったでしょうね。
というわけで、今回の本はこちら。
『「山奥ニート」やってます。』
(石井あらた著/光文社/2020.6)
今の世に最もふさわしい生き方かもしれない生活を、感染症が流行る前から実施していた山奥ニートたちの記録です。2014年からということは、今年で9年目ですね。
昔なにかのドキュメンタリーで見たなぁ、今どうなっているんだろうと検索してみたところ、赤ちゃんが増えてました。山奥ニートが赤ちゃん!?
驚きましたが、著書の内容を思い出して落ち着きました。
山奥だろうとどこだろうと、人間が生きて暮らしているのだから、結婚も出産も普通にありえることです。もちろん、しないのも普通です。「ニートだから結婚も出産もできない」というのは違うんだな、と自分の中で浮き彫りになった偏見を反省しました。
この本の中で特に印象に残ったのは、まだ山奥にはいなかったけどニートだった著者が、東日本大震災のボランティアで福島に行ったときのこと。
毎日会社で働いて社会貢献している人々は間違いなく素晴らしいです。でも、だからその人達と比較してニートやひきこもりの人はだめだとか、価値がないとか、そういうことではありません。逆に会社がなくなったり、社会構造自体が変わって、今までバリバリ働いていた人たちが何もできなくなったとき、その人に価値がなくなったわけでもありません。
人間にはそのときそのときにふさわしい環境があり、力が発揮できる居場所があるのだと、山奥ニートから改めて教わったのでした。
環境といえば、こちらも興味深かったです。
冒頭で適者生存という言葉を使いましたが、あくまでこれは結果論です。たまたまそのときに居た環境がその人にとって過ごしやすいものだったから生き延びられた、というだけの話。
山奥ニートになれば人生が変わるのではなく、ニートの中でも山奥が過ごしやすい人たちが居着いて、生活を続けている。この本に描かれているのはそれだけです。
ちなみに私は昔、適応障害と診断されたことがあります。適応障害がどんなものかをざっくり説明すると、環境に適応できないために心身に悪い影響が出ている状態を指す言葉です。当時勤めていた会社を辞めたらさくっと治りました。
自分が弱いからだめなんだ、何も出来ない人間だと思っている人は、環境を変えたら嘘みたいに治るかもしれません。そのきっかけの一つとして、こちらの本を読んでみたらいかがでしょうか。
それでは今日はこの辺で。
次の読書記録で会いましょう。
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