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読書記録『お皿の上の生物学』
食べ物は総じて生き物だったということを、今回の本のタイトルを見て思い出しました。「いただきます」の言葉の行く先、お皿に並べられた命たち。これからも大切にいただきます。
と、神妙な感じに始めましたが、本の中身は割とゆるっと、でもきっちり生物学について書いたものでした。というわけで今回の本はこちら。
『お皿の上の生物学』
(2020.4/小倉明彦著/KADOKAWA)
新入生の5月病対策として設けられたという、大阪大学の人気講義。
実験(=調理実習)をもとに、生化学・解剖学など科学の話題から、知られざる食の文化の歴史まで、ときに小ネタも挟むユニークな授業が始まる!
「酸味を甘味に変える「味覚修飾物質」の仕組みとは?」「ホワイト・デーのホワイトは、あの商品に由来していた!」
大阪大学の人気講義「料理生物学入門」の講義録をまとめた本です。ちなみに上記に引用したURLは新章が追加された文庫版で、元は2015年9月に出た本です(私が読んだのもこっち)。一応元の本のURLも貼りますね。
科学の世界は日進月歩なので、読み比べてみるのも楽しいかも? 新章のお刺身についての話も気になるので、文庫版も改めて読みたいですね。
さて、感想ですが、生物学がわからなくても結構楽しめます。私は学生時代の理科を全て理科総合で押し通してきた生粋の文系なので、ぶっちゃけ科学的な話は欠片もわからなかったです。でも食文化や歴史、語源についてなどなど、幅広い食にまつわる話の知識や雑学が詰め込まれていて大変勉強になりました。例えばこの辺。
ここで注目すべきなのは、かつ丼の誕生が「とんかつ」の誕生より前だということだ。とんかつは昭和四(一九二九)年、御徒町の「ポンチ軒」で創始されたとされる。それ以前の早稲田の学生が食べていた洋食のカツレツとは違うのだ。(中略)とんかつはコートレットの変形というより、あらかじめ骨を除き、切って供し、箸で食べたかつ丼からの変形と見るべきなのだ。
つまり羽毛は、本来飛翔のための装置ではなく、哺乳類の毛と同様、保温のための装置で、恐竜のうち羽毛を備えたものだけが、六五〇〇万年前の大隕石衝突後の寒冷気候を生き延びることができた。それが鳥の先祖で、その後羽毛が軽量で面積稼ぎに好都合なことから、飛翔用に転用された、と推論できる。
「へ~!」と素直に声が出ました。普段何気なく食べているとんかつや鶏にこんなに秘密が詰まっていることに驚きです。ほかにも興味が惹かれる食の知識が山盛り詰まっており、入門講座という学びの第一歩にふさわしい内容だなと深く感心しました。
言語学が好きな人間としては、セピアの語源はイカだとか、ナデシコは英語だとPinkだとか、蒲鉾はガマの穂から来ているとか、そういった語源雑学の話もすごく楽しかったです。文系を自認する人も「理数系の本はちょっと……」と嫌厭せず、ぜひ手を取ってみてください。
また、誰かに興味を持って学んでもらうためには、教える側は数十倍幅広く学んでおかなければならないのだなと、お世話になった過去の恩師たちにあらためて感謝の気持ちがわく本でもありました。そうした気づきも得られて、大変有意義な読書体験でした。読んでよかったです。
それでは今日はこの辺で。
また次の記事でお会いしましょう。
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