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便利=楽という考え方にしないこと(一般公開)

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私が懇意にしていて、現場の最前線で奮闘していらっしゃるよしよしさんが、施設の設備についての記事を書いていました。


その答えにはなりませんが、先日から老人ホームの入居についての相談を受けており、その考え方の参考にはなるかなと思いまして、その相談者とのやり取りの中の私の考え方を記事にしたいと思います。
もちろん私の個人的見解です。


よしよしさん、失礼にあたりましたら申し訳ございません・・・。



できれば母親には幸せに暮らしてほしい。もちろん自宅で生活することが一番幸せだということは理解しています。しかしながらいくらお金に糸目をつけないという考え方だとしても、在宅で生活していくには限界があり、家族も全く負担がないということはありえない。出来る限りは在宅でという考えで、必死に頑張っては来ていますが、


正直、元プロとしてはそろそろ限界かなとは感じています。


介護という仕事に30年近く携わっていると、自分なりのこだわりというのがどうしても出てきます。そのこだわりが自分自身の軸になるものですので、この軸をぶらすことは、自分自身を否定することにもなります。こだわりというのは考え方とは違うもので、このこだわりを貫くために考え方を変えていくものだと思っています。
私は介護はサービス業だと考えています。なので介護という枠組みではなく、サービス業とはという枠組みで物事を考えます。サービス業としてと考えた時に、主役はもちろん介護が必要な方やそのご家族という、いわゆるお客様になるわけですから、


私の考え方は、お客様が安心をどう考えるのかということにつきます。



今もサービス業ですから、基本的にはこのこだわりは変わっていません。職業が変わっても向かっているベクトルは変わっていないということになります。そのベクトルが変わっていないので、こうやって介護を離れた身でも相談していただけるという状況はありがたいと思いますし、しっかりと意見を押し付けるのではなく、考え方をお伝えしなければいけないと認識しています。そんな中、相談者が心配しているのは、


「設備が整っている施設って良い施設なのか」ということです。


前回の記事で見学した施設は、設備は十分なほど整っていました。見守りカメラ、離床センサー、自動寝返りエアマット、24時間脈拍が測定できるベッド、移乗介助の負担軽減の為にリフターや介護職の力を増大させるためのベストなど、ありとあらゆるものが装備されている、ものすごい施設です。設備からいうと文句はありません。ほぼベストと言っても良いと思います。ですが相談者が引っかかっていることがあり、それが私が指摘した、


「やっぱり人なんだよ」という言葉です。



施設は綺麗。様々な設備が整っている。一流ホテルの雰囲気を想像してみてください。皆さんも憧れると思います。ですが設備は一流ですが、それを使う担い手(従業員)が、笑顔がない。お客様に対してタメ口に近い言葉を使っている。トップ(施設長)の考え方として、介護職の負担軽減や新しい設備を導入すると、人材獲得にも繋がるのでということを伝えてしまっている。


「便利=楽」と考えてしまっているわけです。



何のために便利にするのかは、「お客様が安心して生活できること」という目的が大前提です。人手不足の問題はありますが、それを補うための設備投資が大事なのではなく、あくまでもサービスの質の向上を目的とするということが全面に出ないといけないわけです。ここがズレてしまうとどうなっていくのか。人は便利になると少しずつサボるわけで、便利になることにより作れた時間を、サービスの質の向上に向けるんではなくて、


自分の休息時間に当てるだけなんです。



仕事の概念として、負担軽減はもちろん大事です。ですが仕事に楽を求めるというのは、少し話が違うわけで、そこを管理者がしっかりと指導していなければ、良い設備を入れたとしても間違った方向に進んでいくだけの話になります。従業員を楽にさせたいのであれば、私は技術の向上しかないと思っています。身体に負担のかけない援助の仕方、精神的ストレスのないコミュニケーションスキルの獲得。身体のことについても基本的な医療知識を吸収させるための訓練。この3本柱をしっかりと教育して、その上で設備投資をする。


これがサービスの質の本質だと私は考えます。



もちろん理想論です。まさしく綺麗事です。ですがトップが綺麗事を堂々と言えず、ましてや言語化も出来ない。そしてその考え方を納得もさせられない。そんな施設が良い施設なんてなるわけありません。なかなか表立っていないのが悲しいですが、日本では設備が整ってなくても、人員が足りなくても良い施設と感じられるところはいくらでもあるわけです。その施設の殆どがとトップの考え方にブレはなく、その考え方が末端にまで浸透されています。良い施設の基準が「設備の充実」なんて悲しすぎます。


最後に勝つのは人だということを証明し続けて欲しいなと思います。

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