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続・中国古典笑話4則
呑兵衛
斉の艾子は大の呑兵衛で、しらふの日はないくらいだった。
門生たちがみなで相談して言った、
「この酒はふつうに諌めても無理だな。なにか手荒い方法で脅してやめさせよう」
ある日、艾子が大酒を飲んで吐いた。門人たちはこっそりブタのはらわたを吐いたものに混ぜて、それを艾子に見せて言った、
「そもそも人はみな五臓六腑がそろってこそ生きられるのです。いま先生は酔われて一臓を吐き出してしまわれ、四臓だけになってしまいました。この先どうやって生きてゆかれるのですか」
艾子は吐いたものをじっと見つめ、笑って言った、
「三蔵法師ですら生きていられたではないか。ましてわしはまだ四つも残っておる」
艾子好飲,少醒日。門生相與謀曰,此不可以諫止,唯以險事怵之,宜可誡。一日,大飲而噦。門人密抽彘腸致噦中,持以示曰,凡人具五髒方能活,今公因飲而出一髒,止四髒矣,何以生耶。艾子熟視而笑曰,唐三藏猶可活,況有四耶。
蛍の光、窓の雪♪
車胤は袋に入れた蛍の光で勉強し、孫康は窓に映る雪明かりで勉強した。
ある日、孫康が車胤を訪ねに行ったが留守だった。「どちらへ行かれたのか」と門番に尋ねると、「蛍を採りにお出かけです」とのこと。
のち、車胤が返礼に孫康を訪ねると、孫康は庭でぼんやり突っ立っている。
「どうして勉強なさらぬのか?」と尋ねると、孫康はつぶやいた、
「今日の空模様では雪は降りそうもありませぬ」
車胤囊螢讀書,孫康映雪讀書。一日康往拜胤,不遇問何往,門者曰,出外捉螢火䖝去了。已而胤答拜康,見康閒立庭中。問何不讀書,康曰,我看今日這天不像箇下雪的。
近視の兄弟
近視の三兄弟がいた。いっしょにある人の邸宅を訪れ、座敷に入ると座敷の上に「遺清堂」と書かれた横額が掛かっていた。長兄がこれを見て言った、
「ご主人は夢精でお困りでおられるのか? でなければ、なんで『遺精室』などと書いてあるんだ」
次兄が反論して言った、
「いやそうじゃない。ご主人は道を好まれる御方なのだ。だから『道情堂』と書いてあるんだ」
二人はどちらも譲らず、若くてまだ視力がまともな末弟に判定させることにした。末弟はじっと目を見開いて言った、
「お二人とも何をおっしゃる。横額など掛かっておりませぬ」
兄弟三人皆近視。同拜一客,登其堂,上懸遺清堂扁。伯曰,主人病怯耶。不然何為寫遺精室也。仲曰,不然,主人好道,故寫道情堂耳。二人爭論不已,以季弟少年目力,使辨之。季弟張目曰,汝二人皆妄,上面那得有扁。
お父上は?
ある男が遠出することになって、息子に言い聞かせた、
「もし誰かが訪ねてきて『お父上は?』と聞かれたら、『ちょっと用事があって外出しております。どうぞ中でお茶をどうぞ』と言いなさい」
男は息子が頭が悪くて忘れてしまうのを心配し、それを紙に書いて渡した。
息子はその紙を袖に入れ、時々取り出して確認していた。
三日経っても誰も訪ねてこないので、息子はこの紙はもう要らないと思い、灯火で燃やしてしまった。
すると、四日目に急に客が訪れ、『お父上は?』と尋ねた。
息子は袖の中の紙を探したが見つからず、答えて言った、
「なくなりました」
客は驚いて尋ねた、
「いつなくなられたのですか?」
息子は答えた、
「昨夜、焼いてしまいました」
一人遠出,嘱其子曰,如有人問你令尊,可對以小事出外,請進拜茶。又以其呆,恐忘也,書紙付之。子置袖中,時取看。至苐三日無人來問,以此紙無用,付之燈火。苐四日忽有客至,問令尊,覔袖中紙不得。因對曰,沒了。客驚曰,幾時沒的。對曰,昨夜燒了。
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