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「梅花」の漢詩
先日の記事「花を歌う漢詩3選」の中で、梅花を歌った有名な漢詩として、北宋・林逋の「山園小梅」を採り上げました。
今回は、「山園小梅」以外であと2首よく知られた梅花の漢詩を読みたいと思います。
北宋・王安石「梅花」
墻角數枝梅 墻角 数枝の梅
凌寒獨自開 寒を凌ぎて 独り自ずから開く
遙知不是雪 遥かに知る 是れ雪ならざるを
爲有暗香來 暗香の来たれる有るが為に
垣根のすみにたたずむ数本の梅の枝、
寒さをものともせず、ひとり花を咲かせている。
遠くからでも、それが雪ではないとわかるのは、
ほのかな香りが風に乗って漂って来たから。
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南朝宋・鮑照「梅花落」
中庭雜樹多 中庭 雑樹多きも
偏爲梅咨嗟 偏えに梅の為に咨嗟す
問君何獨然 君に問う 何ぞ独り然るや
念其霜中能作花 念え 其れ霜中に能く花を作し
露中能作實 露中に能く実を作すを
搖蕩春風媚春日 春風に搖蕩し 春日に媚ぶる
念爾零落逐寒風 念え 爾らは零落して寒風を逐い
徒有霜華無霜質 徒らに霜華有りて霜質無きを
中庭にはさまざまな樹木が植えてあるが、
わたしが褒め称えるのは梅の木だけだ。
他の木々が問う、「どうして梅ばっかり?」と。
「考えみよ。霜の降る寒い中で花を咲かせ、
梅雨の露に濡れて実を結ぶ、そんな梅の気高さを。
お前たちはどうだ。ただ春風にゆらゆら揺られ、
暖かい春の日に競い合って咲くだけではないか。
いざ寒い風が吹けばすぐに枯れ落ちてしまう。
お前たちは霜のような花は咲かせるけれど、
霜の試練を耐え忍ぶ気丈さは無いではないか」
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✍️
梅花は、蓮花、菊花、牡丹などと並んで、古来中国の人々に愛されている花です。梅花はとりわけ文人や知識人に好まれ、漢詩の中にもしばしば歌われています。
林逋の「山園小梅」は、
疎影横斜水清淺 疎影 横斜 水 清浅
暗香浮動月黄昏 暗香 浮動 月 黄昏
と、梅の古朴な風情と清らかな香を歌い、王安石の「梅花」もまた、
遙知不是雪 遥かに知る 是れ雪ならざるを
爲有暗香來 暗香の来たれる有るが為に
と、梅花のほのかな香に着目しています。そして、鮑照の「梅花落」は、
霜中能作花 霜中に能く花を作し
露中能作實 露中に能く実を作すを
というように、人々が梅花を褒め称える所以を端的に語っています。
梅花は牡丹と尽く対照的です。豊満で豪華なイメージのある牡丹が富貴と繁栄を象徴するのに対して、清楚で気高いイメージのある梅花は、高潔な品性と不屈の精神を象徴します。目下、この二つの花は、中国の「国花」の座を巡って競い合っています。
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