
「変臉」~1秒で3回顔が変わる秘伝の技!
川劇と変臉
川劇は、四川省一帯に伝わる伝統演劇です。京劇をはじめとする中国の代表的な地方劇の一つです。
川劇の目玉が「変臉」と呼ばれる秘伝の技です。瞬時に瞼譜(隈取)を変える技巧で、日本では「変面」とも呼ばれています。
その仕組みは、中国の「国家機密」とも称されるスゴ技で、顔が変わる瞬間を人の目では追うことが出来ません。
現在は、演劇としてではなく、大道芸や雑伎のような出し物として演じられることが多くなっています。日本でも公演されたことがあります。
まずは下の動画をご覧ください。(2分29秒)
役者が袖や扇で顔を隠したり、後ろを振り向いたりした瞬間、あるいはただ頭をサッと横に振っただけの間に仮面が変わっています。
こうした基本的な技に加えて、さらに、
1秒で3回仮面が変わる超速の技、
花を口で噛んだまま仮面が変わる技、
仮面を通して口から火を噴く技、
素顔を見せてから再び仮面を被る技、
など、熟練した達人でないとできない特殊な技もあります。
さて、こちらは、川劇『白蛇伝』での変臉のシーンです。(43秒)
変臉は、古くは劇団が「門外不出」とし、しかも役者が自分の子一人だけに伝えた「一子相伝」の奥義です。
また、伝統的には、技を継承するのは男子だけで、女子が継承することはありませんでした。
変臉のカラクリ
カラクリを知りたくない方は、この項をスキップして、次の映画紹介の項へ進んでください。
種明かしをされたら興醒め、謎は謎のままにしておきたい、という向きもあろうかと思いますが、謎解きの記事や動画が拡散されていますので、一応、ご紹介します。
まず、スロー再生した謎解き動画をご覧ください。(3分35秒)
スロー再生で見てもよくわからないほど素早い動作です。
劇団が公式にカラクリを明かしているわけではないので、あくまで推測ですが、基本的には「仮面を紐で引っ張る」ということのようです。
極く薄い布の仮面を何枚も重ねて顔に装着し、衣裳のどこかに隠した糸状の細い紐を引っ張って仮面を順次剥がしていく、という技であると言われています。
映画『變臉/この櫂に手をそえて』
1995年制作の中国映画『変臉』(邦題:「變臉/ この櫂に手をそえて」)は、後継者のいない老いた変臉の名人がその技を一人の少女に伝えるという物語です。
監督は、第五世代の張芸謀や陳凱歌らを育てた名監督呉天明、主演は、国宝級の名優朱旭が務めています。

あらすじは以下の通り。
1930年代、大道芸人の王は、かつては川劇の俳優で変臉の名人であった。妻子を亡くし舟の上で暮らす孤独な老人は、秘技を伝える後継者を求めて、人身売買で男の子を買い、狗娃と名付けて可愛がっていた。
ところが、実は、狗娃は性別を偽って売られた女の子であった。当時、この技芸は男子のみが継承するものとされており、怒った王は狗娃を追い出そうとするが、行く当てのない狗娃は必死に懇願し、召使いとしてそばに置いてもらうことになる。
ある時、狗娃は誤って王の舟を火事にしてしまう。逃げ出した狗娃は、罪滅ぼしのつもりで幼い男の子を密かに王の元に連れてくるが、そのせいで王は誘拐の罪を着せられて逮捕され死刑を宣告される。
狗娃は王の友人で名高い京劇俳優の梁に助けを求め、その客である軍人の前で王の無実を訴え、屋根から飛び降りる。狗娃の覚悟を見て心を動かされた梁は、王の釈放を手助けするよう軍人を説得する。無罪放免となった王は、狗娃に芸を伝え、二人で櫂に手を添えながら舟で旅を続けてゆく。

下の動画は、映画『変臉』の全篇(1時間36分)です。英語と中国語の字幕が付いています。
映画に登場する変臉の演技だけをご覧になりたい場合は、以下の箇所をご覧ください。
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