カラーマーケティング VOL.03【 マーケティング・デザイン視点から見た色彩 】
結論から言うと「売れる色がある」ということは、いまからおよそ35〜40年前に、あらかたの研究が終わっています。「売れる色」は存在しています。
そして、この投稿に「共感できるデザイン関係者」がいるとすれば、それは「売れるもののデザイン」を いくつも作り上げてきている デザイン関係の業界で、トップクラスの人だけだろうと思いながら 書いています。
そのことを大前提に、順序立てて「色彩をどうマーケティングしていけばいいのか?」。「売れるデザインを作るには、どうすれば良いのか?」の概要をご案内していきます。
シリーズ最初の投稿
前回の投稿
つづき・・・
1)忘れられていた「色」のマーケティング
「ちまた」ではマーケティングという言葉がよく使われていますが、実は「色彩マーケティング」という言葉は、1980年代にも存在していませんでした。
私は1987年に『色彩マーケティングについて』というレポートを上司に提出し、それが私が勤めていた会社の「マーケティング部門で全社的に共有される情報」となりました。
当時は、こんな「言葉づかい」をしたら笑われるのではないかと心配したほどです。いうなれば、それほど未開拓な分野だったとも言えます。
私は1982年から「業務のついで」に「商品外装」の研究を始めました。それから、およそ5年、販売色についての研究を行いました。私は、とても恵まれた環境にいました。
百貨店は「販売色の宝庫」だったからです。贈り物を購入しに来られるお客様が多い百貨店。また、基本的に「箱入り」にされた商品が非常に多い百貨店。
私の職場でもある百貨店の売場には、色々な「色の箱」が、あふれていました。たとえば「男性の靴下やハンカチ」は箱入りギフトになりやすい商品でもあります。
ラルフ・ローレンは「紺色」の箱。バーバリーは「焦げ茶色」の箱。同じ「靴下やハンカチ」を詰めるにしても「ブランド」によって箱の色が違っています。
女性用の「口紅」が入った箱。シャネルは「黒」の箱。イブ・サンローランは「赤」の箱。エスティーローダーは「紺色」の箱。ブランドごとに色が違う。
幸いしたのは、百貨店では「お歳暮」「お中元」用の商品があふれていたことです。同じコーヒーギフトでもブランドによって色が違い 売れ行きも違う。
そして、百貨店には「テナント」も多く入っていました。同じような商品を扱っているのに「ブランド」ごとに「看板の色」や「内装のメインカラー」が違う。
地下の食品売場に行けば「和菓子」「洋菓子の焼き菓子」といった「箱入り商品」が多くあります。「たねや」は「白」の箱。叶 匠壽庵は「黒」の箱・・・
それらを色ごとに整理していきました。このレポートを提出してから、それまで存在しなかった「商品開発のアドバイス」という仕事を任されるようになりました。
提出した「レポート内容」を当てはめれば「デパ地下のグロサリー部門(セルフ販売コーナー)商品パッケージ」も「同じパターン」であることが見えてきます。
東京で言えば「代官山の高級食品スーパーのパッケージ商品」「成城石井といった店舗で扱っているパッケージ商品」といったものの「売れるパターン」が わかってきたのです。
こうなると「通常の食品スーパー」で販売しているパッケージ商品の「パッケージデザイン」も「もうちょっと、こうしたら売れるようになる」とわかるようになる。
つまり、1987時点で「色彩のマーケティング」が成立していたわけですが、その後も「色彩マーケティング」というテーマで販売を研究レポートした方を私は知りません。
そのために誤解を招きやすい面があります。そこでまず、基本的なことを説明しておきたいと思います。 まずは、マーケティングという言葉の認識です。
かいつまんでいえば「販売術(セールス・テクニック)」のことです。現在では 「マーケット(市場)」という言葉は、日本語として通用しているほど普及されています。
しかし、英語には動詞で「市場で商い(売買)をする」という意味があり、それの進行形がマーケティング(marketing)という言葉になり名詞として使われています。
残念ながらマーケティングという言葉の最適な日本語訳はありません。ですから、さらに誤解されやすいのですが、マーケティングは「販売術」といってよいものです。
以上のことを整理して一示すと、次のようになります。
マーケット(名詞)……市場
マーケット(動詞)……市場で売買する
マーケティング(名詞)……市場で売買すること(転じて、心理的・組織的な販売術のこと)
このようなことを強調しておきたかったのは、私自身もまた未熟なころは、大きく誤解をしていたからです。マーケティングは端的にいえば「販売術(セールス・テクニック)」そのものです。
最も、かつ、極めて心理的な販売術なのです。そして、その手段としてデザインと色彩が戦略的・計画的に駆使されながら使われています。
つまり、マーケティングというのは 「デザインによるノンバーバル(非言語)なコミュニケーションを駆使した販売術」 だといえるでしょう。
デザインと色が販売に大きな影響を与えているということは、実は以前からわかっていることでした。
しかし、いざとなると、どういうデザインにしたら売れるのか、どの色にしたらよいのか、という ことがさっぱりわからなかったのです。ですが、それでは困ります。
そんな状態では、マーケティングにならないのです。 ここに、1985年頃(40年ほど昔)に、私が命がけで取り組んだマーケティングの悩みがありました。
そして、これは、今の時代、マーケティングを学び始めた人にとっても ほぼ同じだと言ってよいのだろうと思います。
2)「Web」と「リアル」
今の時代、こういったデザインに関するレポートに興味がある人の多くは「Webデザイナー」といった、インターネットに関わっている人たちだろうと思います。
そういう人が「このレポート」を読むと「何を古臭いことを言っているんだ」と思うかもしれませんが、正直「Webマーケティング」より「リアルマーケティング」の方が難しい。
それは車の運転のようなもので「ミッション(シフト)車の運転」がリアルの世界。「オートマチック車の運転」がWebの世界といった違いです。
ミッション車を運転できる人にとって、オートマチック車の運転はカンタンです。しかし、オートマチック車の運転はできてもミッション車の運転ができない人も多い。
たとえば、百貨店で言えば「お歳暮・お中元の商品カタログ」を紙ベースで作る。売れるカタログが作れる人にとっては、EコマースショップのWebデザイン構成構築は楽勝な仕事です。構成パターンは まったく同じ。
新聞に折り込む「通販チラシ」もまた紙ベースで作られてきました。売れる通販チラシが作れる人は、Webでの「ランディングページ」の構成構築も楽勝な仕事です。
たとえば、百貨店で言えば「ショーウィンドウの構築」「各階のエレベータの降り口の前に展示してある そのフロアの代表商品のディスプレイ」・・・
これを「VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)」と言いますが、この商品演出展示ができる人は「Web ページのトップ画像の構築」は楽勝な仕事だと言えます。
写真という「平面」を作るより「360度の方向から見られて おかしくない立体ディスプレイ」を作るほうが、遥かに難しいことは、この説明で理解できると思います。
幸いにも、私は、こういった仕事に携わっていたこともあり「VMDシニア・インストラクター」と「商品装飾展示技能士1級」の資格を取得しなければ ならなかった。
チラシ、カタログ、パンフレット、TVCM、プロモーションVTRといったものも、どれくらい作ってきたのか? 数え切れないほどです。なので 売れるリアルパターンのWeb化はカンタンなのです。
なにせ、Webマーケティングというものは、リアルマーケティングという基礎の上に成り立っているもの。基礎力があれば、ツールが少し変わったとしても、構成やデザインパターンは同じ。
ただ、自分でHTMLを使った構築ができないというだけ。売れるお歳暮パンフレットが作れれば、HTMLのWebだろうがレスポンシブデザインだろうが 売れるようにする監修はできます。
Webマーケティングをしている人たちは、ぜひ、次のレポート・シリーズを読み込んでおいていただきたいと思っています。マーケティングには歴史があります。
小手先のテクニックや知識で、ちょろちょろと どうにかしようとしても、なかなか上手くいかない。まず、その基礎となる「知識」を理解しておいて欲しいと思うのです。
この話の続き
ここでは『「デザイン」における「色彩」というものについての概略のみ』を ご案内します。商品開発の詳細ノウハウについては、別のマガジン(シリーズ)をご覧ください。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?