カラーマーケティング VOL.07【 マーケティング・デザイン視点から見た色彩 】
結論から言うと「売れる色がある」ということは、いまからおよそ35〜40年前に、あらかたの研究が終わっています。「売れる色」は存在しています。
そして、この投稿に「共感できるデザイン関係者」がいるとすれば、それは「売れるもののデザイン」を いくつも作り上げてきている デザイン関係の業界で、トップクラスの人だけだろうと思いながら 書いています。
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1)油っこい色、あっさりした色
人間にとって食べるということは、生活の原点です。「腹がへっては戦はできぬ」です。極論すれば、人間は食べるために働いているといってもよいのです。
おいしい物や料理を食べたときの喜びは格別です。つまり、喜びに実感がついてまわります。そこで、食べるということに関連した言葉が意外に重要な使われ方をするのです。
よく「あっさりした人」とか「さわやかな人」という表現をします。また「ねちっこい人だなあ」「しつこい人だなあ」というようなケースもあります。
もう、若い方々は聞いたことさえない死語になった言葉かもしれませんが、年輩になった人の生活の様を「お茶づけの味」などといったりすることもあります。
また「あいつには歯が立たない」と表現しますが、このことを考スると、堅い人、柔らかい人という イメージの原点は、歯が立つかどうかから来ているのかもしれません。
ところで、油っこい味とあっさり味について、大真面目に、次のような実験をしたことがあります。 色違いの二種類のパッケージを用意します。中身はハンバーグです。
パッケージから取り出して 試食してもらい、味の違いを報告してもらうというもの。この実験ですが、何度やっても同じ結果になってしまうからおもしろいのです。
パッケージのデザインの色が少し濃い方は「油っこかった」と報告され、白っぽいデザインに入っていたハンバーグは「あっさりした味でした」と報告されるのです。
実は、両方のパッケージには同じ原料で同じときに調理し、まったく同じ味付けをした、まったく同じ状態のハンバーグの包みだけ変える実験なのです。
たまたま油ものだったからかもしれませんが、濃い色のパッケージの方が油っこいと感じられ、色の白っぼい方があっさり味だと感じられたわけです。
つまり、色の濃い、薄いが、味の濃い(こってり)、薄い(あっさり)に比例して感じられたのです。このような感じ方は、名古屋以東の人に特に敏感のようです。
私は福岡県生まれですから、私の味覚は関西圏に属しているのかもしれませんが、社会人になってからの東京以東での生活も短くはありません。
これは、こういった実験結果のざっくりとした統計ですが関東圏の人は色で味を感じることが多いのです。色が薄いと味がない感じがして頼りない。
それに対して関西育ちの人は、関東の料理のように色が濃いものを見ると食欲が湧かないといいます。それは特に「うどん」や「おでん」に顕著にあらわれているようです。
東京の「うどん」「おでん」はつゆの色が濃いので、これを見ると食べられない、食欲がわかないと言い出す関西育ちの人も少なくないのです。
話は変わりますが、また油っこさから連想されるものに西洋の油絵があります。油絵と比べると、日本人の描く水墨画や、水彩画、日本画の淡泊さが目立ちます。
元来、日本人は性格的に西洋人のような粘っこさ・しつこさ・ドロドロした汚さがありません。それは、日本人は西洋人に比べて油っこいものをそれほど食べないところからも来ているようです。
これは「王宮の装飾」を見ても同じ。西洋は頑強な石垣などに守られた「石の城」の中に「金銀」や「油絵」の装飾がビックリするほど施してある。逆に、日本の皇居は、徹底的にシンプルです。
加えて、人間の性格も食べ物と相関関係があるといわれています。 これは「ざっくりとした統計」ですが、個人的にも食と性格が関連している医療関連のレポートは、世の中に多く存在しています。
2)おいしそうな色、まずそうな色
こと、パッケージのデザインにおいては、色の性格を利用して味を表現しますが、その結果として「おいしさ」が感じられることが大切です。
そうでないと売れないからです。 おいしさは、食べ物のそれぞれが持っていますが、パッケージの中に入れられた商品はその中身 がわかりません。
したがって、パッケージのデザインに食物をおいしそうに表現しておくことが必要です。逆にいえば、おいしそうなデザインにすればよく売れるのです。
では、「おいしさの表現」のデザインはどのようにして行うのでしょうか。
それは、どういう食べ物か、どういう味か、どのように違うか(差別化) という観点から考えることができます。
この三つの切り口でデザインを評価する手段が見えてきます。つまり、この3点からチェックすると、デザインに工夫の余地が出てくるわけです。
①「食べ物の種類の表現」
②「味の種類の表現」辛い、甘い、濃い、薄い・・・
③「差別化の表現」高級、大衆的、和風、洋風・・・
たとえば、私などが監修を任された時には、パッケージされた食品が売れるかどうかのデザインは、この3つの角度からチェックをするわけです。
ここで起こってしまう問題は、購入者が商品の外見=パッケージを ひと目見ただけで、一瞬のうちに「イメージ的に判断してしまう」ということ。
「おいしそうだ」とか「まずそうだ」と感じて、勝負がついてしまうのです。「第一印象恐るべし」という言葉があるくらいに、人間の直観的判断には鋭いものがあります。
分析的に筋道を立てて考えてみることも大切ですし、実際に食べてみて「おいしいこと」も重要ですが、それよりも購入者側が 第一印象で どのように感じるかが大問題になる。
つまり、おいしそうに思うかどうかという購入者側の感じ方のチェックが必要になります。 ここでは、おいしそうに感じる色、まずそうに感じる色について説明します。
おいしさの基本は「白」にあります。白い御飯を思い出すとよくわかります。また、食べ物を盛り付 ける白い食器を思い浮かべてもそのことがいえます。
白さがおいしさを演出するのです。 どのような食品でも、ヒットした商品は白さが生きているものです。
パッケージの地色が白になっている場合と、白がクッキリとしたアクセント文字として使われている場合とがありますが、基本パターンはこの2つ。
いずれにしても、白が、さわやかに見える工夫がなされています。 コカコーラの赤い缶、ポカリスエットの青い缶はその好例です。
この2つの商品がロングセラー・ヒット商品であることの理由の大きな部分がそのデザインにあるのです。
それに対してまずそうに感じる色は、濁った色です。そして必ずといっていいほどデザインに白が生かされていません。
それは、実際に売れている商品、売れていない商品の実例を、販売現場であるコンビニや食品スーパーに出かけて、実際に見比べるとよくわかるでしょう。
あ
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