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いるはずもないふたりの姿を、放課後のグラウンドで走る人たちの中に探す。 霜がとけてぬ…
「人って、一日に十分でも一人になる時間が必要だと思うわけよ」 実家の玄関に仁王立ちする…
「代官山あやかし画廊の婚約者」9/15発売 × 「わたしと隣…
大学の図書館の窓から見える空は、今日も雲ひとつない青さだ。 梅雨入りしたというのに、…
彼が来た。 十年前より、少し恰幅のよくなった体で。 「やぁ、久しぶり。元気そうだね」 …
女らしくない女、だって。 察しの悪い女、だって。 がさつな女、だって。 デリカシーのない女…
誰でも、身の危険を感じる言葉の一つや二つを浴びた経験は、あるんじゃないかって思う。 そして、それによってその後の人生が変わるってことも。 回覧板を持ってお向かいの篠田家に行くと、篠田のおばさんが出てきた。 「あら、理佐子ちゃん、こんばんは。お仕事、お疲れさまでした。お母さんは忙しいの?」 「今日から明日の土曜日までお兄さんの家です。赤ちゃんが生まれたんで、父と一緒に泊まりがけて遊びに行きました」 「なら、今夜はひとり? ちょっと、寄って行かない?」 おばさんが、
高速道路に乗ってから、車は順調に流れている。ウィークディの昼間に、ひとりで車に乗ってい…
篠田(しのだ)家の四兄弟が、そろいもそろって優秀なのは、近所ではもはや常識だった。 …
学校からダッシュで本屋に寄って、そのまま走って家に帰る。 玄関に鞄を投げ置いたまま…
高校卒業を翌月に控えた二月のある日、忽然と幼なじみの住田(すみだ)一家が消えた。消えた…
土曜日の午後二時。緑道沿いのカフェは、ほぼ満席だった。わたしと恋人のハルこと佐田 晴…
卒業式の最中に、麻衣子(まいこ)からメールが入った。 「くそっ」 腹痛と偽り式を抜…
昨日まで、宮坂真吾(みやさか しんご)主任が使っていた机には、一枚の紙も載っていなかった。 「おれの机、やけにすっきりしちゃったな」 聞きなれた低い声に振り向く。わたしより頭一つ高い宮坂さんが、そこにいた。宮坂さんは何も載っていない机を、撫でだした。 「退職されたんだから、もうそこ、宮坂さんの席じゃないですからね」 「岡田は冷たいなぁ。少しは寂しいくらい言ってくれよ」 「寂しがる間もないですよ。宮坂さんが会社を辞められたのって、昨日ですよ? ちゃんと、お別れ会もして、豪