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ピッチャーに求められる理想のリリースとは
以前、Twitterでボールのリリースに対する感覚的な見解を投稿しましたが、思ったより反響があったので、今回はより論理的に解説していきたいと思います。
“ボールを投げている”というより、
— KANO Takumi (@pmecha_kano) June 19, 2023
“腕ごとボールを前に飛ばしている”の方が表現がしっくりくるぐらい、最後までボールに力を伝えている
実際に指導してても、この表現の方が選手の動きも良いので、おすすめです🕺pic.twitter.com/EDJVljlfvR
この記事では、ボールを前でリリースする5つの方法と、それぞれのメリット・デメリットについて紹介した後に、ピッチャーに求められる理想のリリースについて解説していきます。
専門用語を極力減らして画像/動画なども交えて書いておりますので、気軽に読んで頂けたら嬉しいです!
1️⃣ “肩関節水平屈曲”でリリースする
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メリット
短い距離や低出力で、素早く投げることに適している
デメリット
遠い距離や高出力になると、肩や肘を痛めるリスクが高まる
肩関節の水平屈曲に頼った(肩関節を支点にした)ボールのリリースは、最も基本的な方法です。特に、近い距離を素早く投げる必要があるバント処理や牽制などに有効です。
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しかし、高い出力で繰り返し投球を行うピッチングでは、力の支点になっている肩関節がその負荷に耐えられず、怪我の原因となってしまいます。
また、他にも肩関節の水平屈曲の後に、肘関節伸展に頼ったリリースを行う選手が見られますが、この場合は力の支点が肘関節になってしまい、肘の怪我を引き起こすリスクが高まります。
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これらの問題を予防するためには、ボールをリリースする際に腕を両肩のラインから前に出さないことが重要です。この方法によって、力の支点は体の中心部位(胸椎や骨盤)となり、肩や肘への負担が軽減されます。
つまり、目の前でボールをリリースするのではなく、目の横でボールをリリースするのが一番肩や肘への負担が少ないのです。
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腕を両肩のラインより前に出さずに、ボールを前でリリースする方法は2パターンあります。2️⃣ 〜 5️⃣ ではこの2パターンについて詳しく解説します。
⑴ 上半身を横に回転させて出す( 2️⃣ 3️⃣ )
⑵ 上半身を前に倒して出す( 4️⃣ 5️⃣ )
2️⃣ “骨盤回旋”でリリースする
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メリット
下半身の回転エネルギーを使って、高い出力で投げることができる
デメリット
必要以上に回転させると、前の膝が割れてしまい力が逃げてしまう
「上半身を横に回転させて出す」方法の1つ目は、骨盤回旋です。
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骨盤回旋は、下半身のエネルギーを活かして投げる上では欠かせない動きですが、骨盤が正面を向いた状態からさらに回旋させようとすると、前の膝が割れてしまい、むしろ軸がブレて力が逃げてしまいます。
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よって、ボールを前でリリースすることを目的とした場合、骨盤を正面からさらに反対側面まで回旋させる必要があることから、あまり良い方法ではないといえます。
3️⃣ “胸椎回旋”でリリースする
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メリット
骨盤の位置を固定した状態で、上半身を回旋させることができる
デメリット
胸椎の可動域が狭いと、腰椎に負荷が集中し腰を痛めてしまう
「上半身を横に回転させて出す」方法の2つ目は、胸椎回旋です。
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投球動作における胸椎回旋は意識的に動かすというより、十分な可動域があれば自然と生まれる動作になります。逆に、十分な可動域がないと腰椎への負荷が大きくなり、腰を痛めてしまいます。
骨盤回旋と比べてデメリットはほぼないので、「上半身を横に回転させて出す」ことに関しては胸椎回旋が担っていると理解して頂ければ概ねOKです!
4️⃣ “骨盤前傾”でリリースする
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メリット
下半身で生み出したエネルギーを上半身の前屈速度に変換できる
デメリット
上半身の前屈に対して、投げ手が遅れるとボールが高めに浮いてしまう
「上半身を前に倒して出す」方法の1つ目は、骨盤前傾です。
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軸足の伸展で生み出した骨盤回旋(横回転)のエネルギーを、前足着地によって骨盤前傾(縦回転)に切り替えることで、下半身で生み出したエネルギーを上半身の前屈速度に変換できます。[ 参照 ]
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ただし、デメリットとして上半身の前屈によって腕が遅れると、ボールが高めに浮いてしまうことがあります。これに対して、高めに浮かないように腕で無理やり押さえ込もうとすると、今度は低めのボールが垂れやすくなったり、力の支点が肩関節に変わることで肩を痛めやすくなります。
よって、骨盤前傾だけでは、リリースポイントを前に運ぶことができても、ボールが高めに浮いてしまうリスクがあり、効果的な方法とはいえません。
5️⃣ “胸椎屈曲”でリリースする
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メリット
開いた胸を閉じる(伸展した胸椎を屈曲させる)ことで、リリース直前にボールを上から押さえ付けることができる
デメリット
意識し過ぎると手投げになってしまう
「上半身を前に倒して出す」方法の2つ目は、胸椎屈曲です。
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胸椎屈曲は骨盤前傾のデメリットを打ち消す役割として非常に優秀です。基本的にボールが高めに浮くのは、胸を張ったまま上半身が前傾することで起こります。そのため、リリース直前に張った胸を閉じる(屈曲させる)ことでボールが上に抜けるのを予防できます。
ただし、胸椎屈曲を過度に意識すると下半身の動きを無視した手投げになってしまいますので、あくまで自然体で行うことが大切です。
✅ ピッチャーに求められる理想のリリースとは
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結論からいうと、ピッチャーに求められる理想のリリースは「骨盤前傾」「胸椎前屈」「胸椎回旋」の3つで構成されており、前足着地で生じた骨盤前傾の後に胸椎屈曲と回旋を同時に行うことがポイントです。(投げ手の脇を前に突き出すイメージ)
胸椎屈曲と回旋を同時に行う理由としては、それぞれ単体だけだと横回転または縦回転に偏った運動となり、コントロールの乱れや球質の悪さにつながってしまうからです。
横回転と縦回転を同時に行うことで、リリースの軌道が綺麗な円ではなく、キャッチャーに向かって伸びる楕円となり、コントロールや球質の安定に繋がる。
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「肘から出して、目の前でリリースしなさい!」
「体を回旋させてボールを投げなさい!」
「上半身は突っ込んではいけない!」
など、僕自身選手だった頃、こういった感覚的な指導をたくさん受けてきました。
大学で体の構造を理論的に学び、メジャーやプロ選手のフォームから共通点を探し出し、自分でもいろいろ試した結果、従来のリリース動作の指導には非合理な点がたくさんあることに気づきました。
感覚的な指導によって、伸び悩んでしまったり怪我に苦しむ選手を一人でも減らしたくて、こういった発信をしています。
今回の記事が、少しでも皆さんのリリース動作改善にお役に立てればとても嬉しいです。また、もしこの記事を面白いと思っていただけたら【いいね】を頂けると大変励みになります!
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