【岩手県一関市】厳美渓の団子は空を飛ぶし、ガラスパークは尋常ではない
岩手県の一関 (いちのせき) 市は、宮城県と接する岩手県最南端の街だ。
世界遺産を有する平泉町と隣接しており、この街も骨寺村荘園遺跡のような重要な遺跡などが残っているほか、舟下りで有名な猊鼻渓 (げいびけい) のような景勝地や温泉など非常に見所が多い街だ。
その中でも今回紹介するのは厳美渓 (げんびけい)という場所だ。
渓流といえばつい先日奥入瀬渓流の記事をアップしたほか、何度か触れている久慈渓流など北東北には美しいスポットがいくつもある。
その中でも厳美渓を取り上げようと思ったのはそれらとは勿論独特な趣があるからだ。
こちらの写真を見てほしい。
これまで渓流のような景勝地は人里からかなり離れた場所にあった。しかしここ厳美渓の周辺は温泉街が立ち並び、先ほど紹介した道の駅とそこに隣接する一関市博物館も徒歩圏内だ。
新幹線の停車駅である一ノ関駅からもかなりのペースでバスが出ており、関東からも日帰りでかなり気軽に行けるスポットだ。
最初に紹介した仏ヶ浦に始まり、自家用車がないと行きにくい場所ばかり紹介してきた当noteだが、たまにはこういった場所の紹介もしたいと思う。
あと単純に、行ってみたくて行ったらものすごく綺麗だった。
さて、橋から厳美渓を眺めていると、岩場の真ん中に建てられた東屋に多数の人々が集まっているのが見える。
人が集まっている理由は、厳美渓名物の郭公(かっこう)だんごだ。
上述した通り、一関市は餅食文化が盛んで厳美渓周辺にも様々な団子を売りにした店が立ち並んでいる。中でもこの郭公団子は、その提供方法が面白いことで知名度が高いのだ。
まず、この東屋と対岸にある店舗との間にはワイヤーが貼られている。
そこに釣られているのは直径50センチほどの籠だ。中には小さい籠が入っている。
注文したい数に応じた額をこの小さな籠に入れ、近くにある板を叩くことで注文は完了だ。
紙幣を使う場合は小さな籠に入っているクリップで挟もう。
すると注文が成立し、対岸の店舗の方が籠をするすると引っ張っていく。そしてお茶と団子が入った状態で戻ってくる、というシステムだ。
この団子、注文システムが奇抜なだけではなく、味もしっかりと美味しいのだ。
賞味期限は1日だけと念を押されるだけのことはある。串に刺さった状態では形を保っている団子は、歯が入った途端に舌の力だけでとろけるように伸びる。普段であれば正月にだけ食べられる、ついた当日の餅のような食感、いやあれよりも柔らかいかもしれない。なんでも蒸したての団子を一口大に糸で切り、串に刺して作っているとのことだ。
恥ずかしながら、団子粉を湯を混ぜてこねて茹でただけのスーパーで売っているような串団子の味を想像していたのでかなり驚いた。
流石は「もちと湯の郷」を自称するだけある。これが一関なのか。
もちろん団子は対岸の店舗に直接行っても団子は購入できる (2023年11月現在店内飲食は休止中) が、東屋からの景色は絶景だ。
足元の悪いこの岩場まで団子とお茶を運び、飲み食いするという体験は、このシステムがなければ思いつく人はいても実行に移す人はそう多くないだろう。
郭公団子は1878年に創業し、初代創業者の時代からこの「団子の谷渡り」システムはできていたらしい。
このシステムが現在まで継続しているのは、厳美渓の美しさと団子の美味しさの両方が、150年もの時を経て今も続いているからだろう。
さて、そんな厳美渓周辺を散策していると、明らかに異様な雰囲気の建物が目に入る。
「サハラガラスパーク」なる名前で観光マップにも載っているこの建物、検索すると以下のサイトが引っかかった。
なんというか、尋常ではないことはわかる。
こちらはガラス製品の専門店とのことだが、レストランやカフェも有する膨大な規模と独特の世界観は、もはやテーマパークと呼べる域に達しつつある。
厳美渓から本館に至る歩道は「ガラスの小道」と名付けられており、ステンドグラスを思わせる色ガラスが天井を飾り色とりどりの光が降り注いでいる。
あまりにも迫力のあるレトロさを前に、本当に入って大丈夫かたじろいでいたが、門をくぐるとかなり活気がある。
奥の駐車場には何台も観光バスが停まり、自家用車もそれなりに停まっている。店内に入る人を見るに、どうやら厳美渓に行く為だけに停めているのではなくこちらのガラスパーク目当ての人が大半のようだ。
入ってみると驚いた。
店内は撮影禁止なのだが、「日本最大のガラス販売店」を名乗るだけある広い店内には食器やインテリアといった大小様々なガラス製品が展示・販売されている。
値段はシャンデリアのような高価なものもあれば、グラスなどはかなりお手頃な価格で購入できる。
厳美渓の自然美に対し、自在に形を変えながらもそれぞれの役割を果たすガラス製品の美しさはまさに人工美の極地の1つだ。
「なんでここにガラス製品の巨大な店が?」と入るまでは困惑したが、ほんの少しだけ分かったような、でもやっぱり分からないような気がした。
一関市の紅葉はまさに今が盛りだ。
晴れた日には、ぜひ訪れてみてほしい。
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