思春期に価値観をひっくり返された一冊
「学校というやつは画一的な価値観を押し付けるところだ!」
と思っていた。
いや常々反抗的に感じていたわけではないが、結果的に思春期前半の自分は、成績とか、進路とか、部活とか、恋愛とか、すっかり「学校生活で得た価値観」を疑いもせずに信奉していたように思う。
『ぼくは勉強ができない』(山田詠美/著)という本を姉に薦められて読んだのは、中学2年とか3年とか、それくらいの頃だったと記憶している。
17歳の主人公・秀美くんは、そんな学校の価値観とは全く違う価値観で生きていた。
成績よりも大事なことがある。
恋愛対象は同級生だけじゃない。
異性にモテるってとっても大事。
良いこと・悪いことの、表面的体裁ではなく本質的な意味。
自分と違う価値観に耳を傾ける。
他者の価値観に迎合はしない。
僕はそれにとても驚いたし、影響を受けたと思う。
この本に出会ったことで思春期の僕は、
「今の自分の価値観のなかでベターなものを目指す」
ということを一旦辞め
「自分の価値観を疑い、見極め、再構築する」
というコンセプトで生活を送ることになった。
おかげでとてもチャレンジングで刺激に満ちた青春時代を送ることができた。
その結果できあがった自分は、秀美くんほどクールで格好良いものではなかったけれど、何者かに押し付けられたものではない「自分で獲得した価値観」というものを常に意識できる人間になれたんじゃないかと思う。
あれから約25年が経過し、離れて暮らす15歳の息子の誕生日にこの本を贈った。
「すごく面白かった。」
と言ってくれたのはとても嬉しかったし、彼もまた、これから時間をかけて「自分の価値観」を構築していってほしいと思う。