毎朝の結構ストイックなヨガ習慣で感じた変化
エネルギッシュでハードな「アシュタンガヨガ」
アシュタンガヨガというヨガの流派がある。
ヨガの中でも、運動量の多いエネルギッシュで、ストイックなヨガとして、男性にも人気の高いヨガのスタイルである。アメリカではマドンナが人気に火をつけ、セレブの間でも広がっていったという。
アメリカでもこのアシュタンガヨガをベースに応用したヨガをセレブが実践し、宗教性を排除したエクササイズとして、2000年代以降日本でも親しまれているようになった。
アシュタンガヨガには決まり事が多い。
伝統的に親しまれているのは「マイソールスタイル」という練習方法だ。インドにマイソールという土地があり、発祥の地に因みんだ名前ということだ。
原則、平日週5日、朝6時から9時までの間にスタジオに通う。先生が見守る中、黙々と自主練をする。その自主練でやるポーズも順番が決まっている。何日も何日も通い、ポーズの習熟度が認められると難しいポーズに進む。
要は中学生の時の「運動部の朝練」のようなものだ。
生徒は朝スタジオに行ったら、朝黙々とポーズの練習を行い、終わったら着替えて帰る、という仕組みだ。レッスン終わりに生徒同士がお喋りしている様子ほぼ見受けられず、やるべきことをやったら帰る。クールでさっぱりした様子は私も気に入っている点の一つだ。
そして月末に1度「レッドクラス」と呼ばれる、先生の号令に合わせて参加者全員でポーズのタイミングを合わせて行う、いわゆる「1ヶ月の成果確認会」を行う、というものが一連の決まった練習方法だ。
「アシュタンガヨガ」を始めるきっかけ
私もこのアシュタンガヨガを、10月の終わりから始めた。
このヨガのスタイル、慣れていない状態でやると本当に体力的にキツいのである。汗はだらだら、息は切れ切れ、最後の方がエネルギーが枯渇しヨガマットにうつ伏せになった状態から立ち上がれないほどになったこともある。
実はヨガは8年ほど続けているが、私には縁がないものだと思い敬遠していた。
「ヨガインストラクターは練習が生命線ですよ」
2018年秋にヨガインストラクターを始めた頃、インストラクター養成学校何度も先生から言われ、もちろん激しく同意する。
何でもそうだが、他の人に教えるためには何度も同じことを繰り返し、言葉で明確に伝えられるまで、体に落とし込む必要があるのは言わずもがなだと思うから。
ちょうど友人のヨガインストラクターに誘われ、彼女のレッスンに参加する。アシュタンガヨガは、好き嫌い関係なく、そのポーズの順番がきたらそのポーズしなければならない。避けていたポーズを結構やらなければならない。
このレッスンをきっかけにふと気づく。毎日家でポーズの練習はしているが、苦手なポーズって避けがちだったことにだ。ヨガのポーズはそのポーズごとに意識を向ける場所が異なり、そしてきちんと意識できれば効果効能を得られるもの。
教えている生徒さんがメリット享受できないのは、インストラクターとしての責任を果たせていないのだろうな、と思ったのである。
このレッスンをきっかけに、親しいヨガの先生のマイソールクラス、つまりは「運動部の朝練」に私もチャレンジすることにしたのだ。
「アシュタンガヨガ」の毎日の練習はドラマだ
アシュタンガヨガの中で最も大変なことは、朝早起きをするということだと思う。
ヨガのポーズの練習を一通り行うのに大体1時間10分程度が今の私の平均だ。
家からスタジオまで、スタジオからオフィスまではそれぞれ50分程度かかる。仕事を始めたい時間の3時間前には家を出発する必要がある。朝の準備に30分はかかる。
9時の始業ならば、起床は5時半だ。ヨガをしてから仕事のパフォーマンスを落とさないようにするならば、睡眠は最低6.5時間は必要だ。
前日は10:30には寝る必要がある。これまでの就寝時間の平均は午前0時。数日ならばできる。しかし、1時間半早く寝るためには生活習慣を変えなければならない。
加えて、同じ条件で巡って来る毎日はない。
朝寒すぎる日もある。心地よい気候の時もあれば、雨で寝起きの体が重い日もある。
時間に余裕があるタイミングもあれば、突然繁忙シーズンに入る時もある。前日が飲み会で帰宅が遅い日もある。
実はここがアシュタンガヨガの一番の肝だと私は感じている。
決まった時間帯、決まったポーズの順番という一定の枠にはめ込むことで、長年の習慣で身についてしまった、言い訳したり、都合の良い解釈をしたり、怠慢といったクセに自ら気づかせられるのだ。
実際、行かなかった日もある。理由を掘り下げると、前日からその1週間前の過ごし方に問題があったり、そもそも他の仕事の兼ね合いを含めスケジュールに無理があったりする。つまりは自分のスケジューリングの問題だ。
難しいポーズに挑戦すると、何度も何度も繰り返すうちに、できる時とできない時の違いが明らかになってくる。ちなみに最近挑んだポーズで、できない時とできる日の差は、「最終の完成形までやり切る」という意識を持てているか、ということだった。
「運動部の朝練」に毎日行くこと、そして練習の中には、こうした心の葛藤がいくつも出てくる。まさに毎日、起きて、行って、終えるまでドラマが繰り広げられるのだ。
毎日繰り返すルーティンの大切さ
「行きたいとか行きたくないじゃなくて、とりあえず思考や感情を挟まず行ってやってみる。」そして、毎日毎日同じことを繰り返す。
いつの時代の体育会だ、と言われるかもしれない。
しかし、続けているうちに、良い時も悪い時の自分の状態も受け入れられるようになってきた気に不思議となって来るのだ。
体が動かない日もある、朝起き上がりたくない日もある。結局そういう日なんだ、と認識すれば、その後の自分の行動予定を少し変えていけばいいだけだ。明日も明後日も、健康に生きていく必要があるのだから。
ふと、イチロー選手のメジャリーグ現役時代の生活習慣の話を思い出した。
イチロー選手は、ゲームの開始時刻から逆算して、起床時間、就寝時間、食事の時間全てをスケジュールしてるということ。それは、少しでも不安定要素をなくし安定した精神状態に持っていくためだという。
また、打席に入る前の一連の決まった動作も有名だ。「プリショット・ルーティン」と言って、気持ちが揺れてもいつも通りの動作をすることで、自然にバッティングの気持ちに切り替えることができるそうだ。
わずか4ヶ月だが、少しだけ自分の怠慢や考えのクセに向き合い、乗り越えつつあるような感覚を得ている。出社前に運動が終わり日中の活動が制限されないこともいい。体も軽くなった感じがあるし、体調も以前より圧倒的に良い。
「それをやるためにどうすればいいか。大きなものは変えられないから、まず自分が動けばできることを変えてみる。そうすれば次第に周りも変わっていくもの」ヨガで人生が変わり好きなことを仕事にした、と言っていたアシュタンガヨガの先生言葉だ。
ヨガのポーズ、ヨガに通う生活習慣だけでない。人生万事そうなのかもしれない。私は来週もまた朝のヨガに通うために、週末に何をしておくべきか考え始めるのである。