【ラジオ台本】リサーチングクラブ「津本式究極の血抜き」
※こちらは魚食系ラジオ「JUNK FISH!」と連動した記事になっております。
今回は、ラジオを収録するにあたって用意した台本の紹介です。
リサーチングクラブは調査した情報を濃縮したコーナーなので、
「多くの情報を正確かつ飽きさせずに伝えれるか?」
というのがテーマです。
そのため通常より、フリートークの余白が無いガッチリとした構成の台本になっています。実際にはnotionで整理していますが、今回それを書き出し、写真やリンクを差し込むことで、読み物として少し見やすくしました。
それではお読み下さい。
OP 3分
かにへーでーす なおたこでーす そして…
【かに「このラジオは、「魚と食を笑って楽しむ」をコンセプトに、KaniTakoが魚食中心トークをお届けいたします」】
たこ:今回は魚食友人にしらすさんもいまーす。それでは今回はカニさんのコーナーです。カニさんよろしくお願いいたします!
※最初ゆっくりめに話すの意識
「リサーチングクラブ:津本式究極の血抜き」20分
【かに「このコーナーは調べものの虫でもある私【かにへー】が、魚や食にまつわることを調べて濃縮させたカニミソのような情報をリスナーの皆さんにお届けするコーナーです」
たこ:カニミソへの反応
余談:バルダイのカニミソがうまいらしい
たこ:かにさん、今回のテーマは?
津本式究極の血抜き
魚を美味しく食べるための下処理方法の1つ
津本式とあるように、津本さんという方が考えた方法
3年前youtubeでこの血抜きの動画を見つけてから、ず~~っと津本さんのファンをやってた
2年前に会社で「血抜き研究会(チヌケン)」作って同僚に津本さんのすごいことを語るくらいファン
間違いなく魚食文化の発展に貢献した人
そんな津本さんファンが「津本式究極の血抜きとは何か?津本さんがいかにすごいか」を初めて聞く人でも分かるように語る
キューシートの文字数6000文字超えてた笑(原稿用紙15枚分)
※このあと、魚を締める(殺す)方法についても詳しく触れるので、苦手な方は聴かないことをオススメします。
津本式の津本さんとは?
宮崎県にある「宮崎市中央卸売市場」の仲買さん
その市場に持ち込まれた魚介類を、飲食店やスーパーさんに売る仕事をしている方。
いま、47歳くらい
たしかその働いてる会社の営業部長
めっちゃ働いて成果も出して出世もしてる
ワカシ、イナダ、ワラサ、ブリ
ツバス、ハマチ、メジロ、ブリ
見た目かっこいい!つんくさんみたい
その津本さんが、ちょうど5年前。youtubeを始めた
1本の動画
2016年6月4日。マダイの血抜き。
締めた(殺した)ばかりのマダイに、ワイヤーを鼻から入れて神経抜きして、尾に近い部分を背骨を断ち切るまで切って、エラの付け根を切って、水が出ているホースをそのエラの付け根にあてるだけの動画
1分20秒。
ほぼしゃべらない。渋い動画
この1分20秒の工程。
これが元祖「津本式究極の血抜き」
あとで最新の工程にも触れるけど、もともとはこれ。
ホース1本で出来る「究極的に簡単な血抜きの方法」
津本式究極の血抜きとは何か?
尻尾を切ってから、エラの付け根に切れ目を入れて、そこへ真水を入れ、能動的に血を抜く
綺麗に出来ると、ピューって魚の尾の方から血が混じった水が出る
有識者の1人。ルアマガ(ルアーマガジン釣り雑誌)のフカポンさん
津本式の本を編集されたり、テクニックを徹底的に言語化してる方
言葉を借りる
「動脈および腎臓に真水で水圧を掛けることで圧迫し、真水の浸透圧作用により血を溶血し排出する技術」
結局、何がすごいの?
簡単!早い!死んだ魚からも血が抜ける
この「死んだ魚からも血が抜ける」ってのが1つすごいポイント
なんで血を抜くの?
なんでこんな一生懸命血を抜く話をしてるのか
そもそも。
魚を美味しく食べるために、下処理する理由として、腐らせないための冷やすとか超基本は置いといて、
大事なことは2つある
1.魚がもともと持っているエネルギーを劣化させないこと
2.雑菌や臭みを持つ余計な成分を取り除くこと
1.魚が持ってるエネルギーを減らさない
「ATP(アデノシン酸リン酸)」イノシン酸、アデニル酸という旨みの源
元のATPが少ないと、この2つの旨み成分も少ない
ATPは動く時に使うエネルギーなので、暴れたりすると減ってしまう
暴れさせず一瞬で殺す。
魚を一瞬で体を動かさない状態にする
ATPを保つ
そのために活締め=生きてるときに殺す
(内出血がおきての身の劣化、乳酸がたまることでの味の劣化も防ぐ)
さらに神経抜きをする
神経を抜かないと体は生きていると勘違いして痙攣をおこしてATPを消費しちゃう。
あとは氷締め。青物は一気にドカンと水揚げされるし、ウロコも弱くて触ってられないから。
海水に氷入れて0℃近くまで冷やしたものに入れて「つめて~!!」とさせて締めちゃう
魚が本来もってる味を最大限いかすために行う
2.雑菌や臭みを持つ余計な成分を取り除くこと
ビブリオ菌。海水魚。海水由来の菌。真水で洗って除去する
そして血液!栄養たっぷり。魚の隅々まで栄養を運んでくれる大切なタンパク質。
新鮮なものは基本的にはそんな味がしない(餌や魚による)
魚が死ぬと一気に要注意成分になる
栄養たっぷりで水分も多いので微生物が繁殖して腐りやすい
よく冷やしてたら腐るまではいかないんだけど。
残すと劣化して雑味になりやすい
アラ汁をつくるときの黒いアク。あれほぼ血液
あと養殖魚は、脂が多いので、魚の血液は脂肪を含んでドロっとしている
養殖マダイをたくさん締めて返り血をあびてみたらわかるけど、その後エプロンがすごい臭くなる
その血が少しでも刺身にしたとき残ってたら…
さらに!白身魚は、刺身にしたときに血が残っていると、綺麗な白色じゃなくなったりする
料理人にとって、刺身の色はめちゃくちゃ大事
刺身は繊細。色、ちょっとした臭み。全然味が変わる
だから、魚の仕立て方で血抜きにフォーカスあてられる
津本式究極の血抜きのすごさを、発案者「津本さんの3つのすごい」を通して伝えていく
津本さんの3つのすごい
1つ目:死んだ魚からも血が抜ける
津本式以外でも血抜きは行われてる
魚の心臓のはたらきを使ったやり方が主流
魚を、脳を破壊して殺しても、心臓は動き続ける
その血圧で傷口から血が出る
より効率よく血が抜けるように、心臓付近のエラの付け根を切って、水の中に魚を入れておく
受動的なやり方
この水の中にいれた魚をフリフリして、より抜けるようにするテクニックもある
一方、津本式究極の血抜きは、
ホースで水をエラの付け根から動脈、腎臓に入れて「能動的」に血を抜く
しかもルアマガのフカポンさんの言葉
「動脈および腎臓に真水で水圧を掛けることで圧迫し、真水の浸透圧作用により血を溶血し排出する技術」
真水を入れることで血が少し溶けて出しやすくなる
魚の血は人間の血液よりカルシウムが多いから死んだあと凝固しやすい
殺した後、時間がたつと固まって水の中に入れても血が全然抜けなくなっちゃう
死んで多少時間がたった魚でも、津本式なら抜けやすい
これがすごい画期的
例えば、いままで漁師さんも船上で血を抜きたい!ってなったとき、
神経抜きまですると少し心臓の動き弱まるから血が抜けづらくなるかも、でも先にしたほうが魚が暴れずATPの減少抑えれるし…どうしよう…ってなってた
今だと、あとで津本式で少し残った血も抜けるから、神経締めまでしよう!とか判断出来る
※ラジオではここの「神経締め」を「脳締め」と間違って発言しています。申し訳ございません。
そして、活魚を手に出来ない料理人さんも実践できる
活魚を買うのってなかなか難しい
仕立ては基本仕入先に委ねるしかない
養殖魚は、近くの市場や業者さんに朝締めてもらって納品してもらう
締め方がやる人によってブレすごいある
それを料理人さん側でも少し血を抜くという部分で出来る
綺麗に血が抜けた魚は腐敗しづらくなるから長く持たせやすい
フードロスも減らせる
熟成にもチャレンジできる(熟成について、詳しくは今回触れない)
日々、まな板の上で魚と向かい合ってた津本さんだから思いつけた発想
すごい!
【収録後の補足】
・鮮度の良い活魚は、エラの付け根の動脈&腎臓にを切った段階で血がかなり出てくれる&かつ血液が固まってないので抜けやすいです。ここで大半の血液は抜けます。その場合、津本式究極の血抜きはあくまでその後、手早く血を抜くための方法となります。
・死んだ魚からも血が抜けると発言していますが、死んで時間がたつにつれ血液が固まっていくため、津本式でも細かい血管の血液までは抜きづらくなります。また魚の筋肉も弛緩していくため、魚種や状態により血管が水圧に耐え切れず「破裂」するトラブルもあるので、血を抜くのに鮮度が良いにこしたことはありません。
2つ目のすごい:進化している
津本さんのすごいこと2つ目
5年前にこのやり方を思いついてから、ずーーーっと改良していること
お悩み:しっぽの方の身に少し血が残る
魚って尻尾の方の身をズドンと切ると、脊髄や動脈の穴が背骨にそって見える
魚サイズによるけど、1-2mm前後とすごい小さい
そこへも水を入れたら神経抜きも徹底できるし、尻尾側の血も綺麗にとれやすいのでは?
ホースの先につけれる、サビに強くて水をほそ~く高圧でプシューっと出せれる専用のノズルを開発
作業しやすいための包丁やナイフもつくっちゃおう
それもやっちゃう!?
これによる血抜きの手法の進化はもちろん、津本さん自身の進化がすごい
器具つくっちゃうとか、仲買さんの普段の仕事を1つ飛び越えてる
このとき40歳過ぎてる
サラリーマンなら、だんだん慣れで仕事しちゃう人もいる
マネジメントをすることになって、管理業務も増える人もいる
津本さん営業部長だからその仕事もある
絶対めっちゃ忙しい
なのに40歳過ぎて新たなことに挑戦しつづけてる
そもそもyoutubeを始めるのもすごいよね
津本さん2016年にyoutube初めて、今までに450本以上動画出してる
最新:衝撃の事実 あれするだけでこんな美味しくなるなんて…
魚種ごとに締め方や血抜きのやり方がかわってたりする
その動画もある
本人が丁寧に説明してくれる
3つ目のすごい:フルサポート
youtubeに動画でやり方を無料公開してる
ふくやの明太子。作り方をオープン。自分だけの秘密にしない
分かりやすい教材があるから、みんな真似しやすい
津本式は死んだ魚でも検証でき、そのための道具や参考書、参考動画までそろってる
困ったことや質問があったらFace bookにコミュニティーもあって、いろんな過去の議論が落ちてるし、情報交換が出来る
津本式の魚を仕入れてる料理人さん、さらには津本さん本人がアドバイスくれたりする
ここまでオープン、かつフルサポートでやっている魚の仕立て法は他に無い
ウエカツさん。締め方詳しい人にそのやり方を教わるのハードル高い
さらにすごいのが公認試験
時間制と説明制という二段構え
【津本式究極の血抜き公認試験概要】
時間制:1分半位で魚を仕立てれるか
説明制:なぜその作業をやるかを説明しながら仕立てれるか。津本さんがOK出さないともらえない
1分半で処理できるか、1つ1つの処理の理由を正しく説明できるかを動画にとって津本さんに送ると、無料で直々に理解度を評価してくれる
魚の仕立てや構造を理解するカリキュラムになってる
これがまた良いカリキュラム
本気で津本式をやって魚を仕立てたい!全国の仲買さん、養殖業者さん
正解が分からないまま変な自己流を確立させてしまうことが無い
しっかり教えたり公認制度をもうけることで「津本式究極の血抜き」というものの品質も落とさないようにもなってる
すごい!
どこで食べれるの
津本式ドットコムを検索
津本式究極の血抜きの公認者一覧ある
公認をとってる飲食店さんは津本式への想いが強くて、頻繁に仕入れてるから高確率で食べれると思う
津本式は雑菌が繁殖するリスクを減らせているという点で「熟成」と相性が良いから、熟成魚の料理を出されてる飲食店さんは使うこと多い
有名なとこだと、
新宿Sushi Bar にぎりてさん(タコさんも行ったことある)
卓上に○○日熟成のワクワク感。
築地すしOmakaseさん
今まだやってるか分かんないけどランチでとんでもなく手の込んだお寿司のフルコースを3500円。去年12月。津本式で1ヵ月以上熟成したカンパチ入ってた。
大分豊後高田市の「そば六郷(りくごう)」さん。
インスタのファン。
なんか暮らし方とか含めて好き。作った料理の通販もやってる。いつか食べに行きたい
丸魚を食べたい人
取り入れている小~中規模の養殖業者さん、魚屋さんも増えてる
オススメ
津本式究極の血抜き初期のころから取り入れてた養殖業者さん
浜名湖の伸東養魚さん。
ヒラメで有名。奥さんが美人。ホームページやっててそこから自社でショップやってて買える
【かに(サゲ):ということで、以上今回のリサーチングクラブ「津本式究極の血抜き」についての調査報告でした。タコさん、今回のカニミソの濃縮度合いは何倍濃縮くらいですか?1~10倍で。】
タコ:〇〇倍濃縮です!
かに:反応
ED 5分
・振り返り
気になる仕立て。渦巻き式
九州の熊本にいるらしい仲買さんが生み出した技法
インスタで見つけてからずっと追ってた
2019年ころ。津本式の人気や普及を横目に、アピールは控えめにコツコツ急速に器具を開発しながら洗練させ、ついに去年から普及のステージへ入った
いま大注目の仕立て技法
魚の脳天に先が鋭くなった吸引機をぶっさして、しっぽに脊髄が見える程度の切れ目をつけて、神経を抜く
そのあとエラを切って血を抜く
吸引機が特製っぽくてハードル高い
細いところを掃除する掃除機の先っちょ。あれを魚の脳をつらぬけるようにステンレスで固く、細く作ったもの
宮崎の津本式、熊本の渦巻き式。
九州って刺身へのこだわりがすごい。サバの生食文化
かに:最後に、このラジオではリスナーの皆さんからのご感想を募集しています。twitterにてハッシュタグ「#魚食系ラジオ」をつけて呟いて頂くか、「googleフォーム」でも受付けておりますので、是非ご感想をお寄せください。
それでは今回もお聞きいただきありがとうございました!ばいばい~~~~
いろいろな締め方
野締め、氷締め、活締め、活締め神経抜き、瞬締め、電気締め
野締め:何もしない。網をあげたら死んでた
氷締め:生きてる魚を0℃近い海水氷などに入れて急死させる。イワシ、サンマ。青物。さわってらんないから。
活締め:エラや尾を切って魚の息の根をとめる
脳天締め:脳を破壊して魚を即殺する
瞬締め:高圧の空気を脊髄に入れて神経を抜いて締める
電気締め:電気ショックで心臓ポンプを強制的に動かして毛細血管の血抜きをする
魚の仕立てで有名な人
1.上田勝彦さん(元水産庁のウエカツさん)。魚の扱い方の伝道師として浜を歩いた方。
2.大森圭さん。石巻の仲買さん。現在の日本でトップレベルに魚の目利きや、締める技術をもっていて、その解説も無茶苦茶うまい人。
3.北海道の根室の松田さん(ネムロックさん:最近、マダラなど底魚の胃袋を洗浄するノズル「リバーサー」を開発した人)
なぜ津本式は爆発的に広まったか?
釣り人へリーチしたから。
釣り人人口:2019年670万人。増えて来てる
漁師の人口:漁師さんは15万人弱。40分の1以下。つい先日出た水産白書に「漁港背後集落:漁港の背後にある集落」の人口。2020年180万人。漁港周辺に住んでる人ですら釣り人人口の3分の1以下。さらに4割近くが65歳以上。減ってもきてる。
さらに料理人、仲卸さんなどの水産関係者にも浸透。「プロ向け」という信頼感がより釣り人への流行を進めた