京急の駅「品川」│そして僕は妻子の待つマンションに帰るだけ
誰か私に、生と死の違いを教えて下さい――ネットに飛び交う「自殺」「逝きたい」の文字。電車の中、携帯電話を手にその画面を見つめる少女、市原百音・高校一年生。
形だけの友人関係、形だけの家族。今日、少女は21時12分品川発の電車に乗り、彼らとの「約束の場所」へと向かうのだがーー。
居場所のない「一人の少女」の「魂」に寄り添い描かれた傑作。
(Amazonより)
品川駅に行った。
「JR品川駅高輪口」
柳美里さんの小説。
JR山手線シリーズの1つだ。
僕は小説をあまり読まない。
その僕が最近熱中してしまった一冊。
夜更しまでした。
最初の100ページ。
そのあたりで、いてもたってもいられなくなった。
写真を撮っておかないと気がすまかった。
僕は会社帰りに品川駅を降りた。
なにかあるはずもない。
撮りたいものなんてないだろうな。
わかっていたけど、なぜか降りた。
京急の駅だし。
品川駅とは
JR。
京急。
どちらにせよ、品川駅は重要な駅だ。
1872年の日本初の鉄道開通時。
試運転用に最初に開通した駅。
京急にとっては都心への目標地点。
品川を目指して線路を延ばしたとか。
https://trafficnews.jp/post/99296/2
なにしろ駅番号はKK1だ。
品川駅のホームに降りる。
21時過ぎ。
物語の主人公のような女子高生なんかいたら、変だ。
でも、ちょうど小説では、この時間くらいに「約束の地」へ向かったんだよな。
ここから。
ホームでタバコなんて吸えるとこあるの?
なんて思いながら、高輪口に向かう。
JR品川駅高輪口に降りたつ
品川未来プロジェクト。
西口駅前?
西口って高輪口の方だよね。
こんだけ壮大にやると、跡形もなくなるんだろうな。
僕としては京急の駅名は撮っておく。
勝手に感慨深くなる。
KK1だし。
ぼーっと、タクシーのりばのガードレールに腰掛けて行き交う人を見る。
ディズニーランド帰りの女子。
耳、ついたままだよ。
トランクガラガラの人。
こんな夜からどこへ行くのか、帰るのか。
羽田にでも行くのだろうか。
ふと、タクシー乗り場の奥にワンボックスが2台。
イケメンの兄ちゃんがそれぞれ乗ってる。
誰かを待っているのかな。
と、タクシー待ちの列を無視して、荷物を多めに持った若い女性がワンボックスへ向かう。
彼女?
奥さん?
いや、品川発デリヘル?
考えているうちにイケメンが女性の荷物を持って後部座席へ。
ワンボックスはそそくさと夜の国道へ消えていった。
歩道橋から国道を見下ろす
品川駅高輪口から国道を渡る歩道橋に上がる。
しばらくまたぼーっと、国道を過ぎる車を眺める。
なにも感じない。
通り過ぎていくものばかり。
気になりもしない。
あんな小説のタイトルになるなんて、信じられないくらい。
なんでもない、ただの都会だ。
あぁ、そうか。
僕は大人。
小説の主人公は女子高生。
大人になったんだな、と今更思った。
「約束の地」なんて僕にはあるわけない。
この歩道橋を降りたら、妻子の待つ温かいマンションの部屋に帰るだけだ。
それにしても、やっぱり品川は都会だ。
京急の駅っぽくないんだよな。
そう、ここはJR品川駅高輪口。