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フリーランス必見!実績公開NGを覆す6つの武器(後編)
1. はじめに
この記事では、フリーランスを苦しめる「実績公開不可」を「公開可」に覆す「6つの武器」をご紹介します。これらの武器は、法律や契約の知識知見を活用しながら、現状を打破する具体的かつ実践的な戦略です。
この記事は次のような方々向けです。
①フリーランス作家:ライター、デザイナー、イラストレーターなど、個人でクライアントと契約し仕事を行っている方
②フリーランスと関わる企業の担当者・担当部署
2. 前半のおさらい
前半記事では、実績公開不可という課題に立ち向かうための「6つの武器」のうち、3つをご紹介してきました。これらの実績公開を獲得するための重要な知識です。
武器1:クライアントは理由なく交渉を拒めない(信義誠実の原則)
武器2:契約後でも契約内容の変更は可能(契約自由の原則)
武器3:公開不可の理由を聞き出し、交渉の糸口を見つける
もし前半の記事をご覧になっていない場合は、まず以下のリンクからご確認いただくと更に効果的です。
しかし、前半分の武器をもってしても、交渉が一筋縄ではいかないケースも多々あります。後半では、そんな時にさらなる一歩を踏み出すための、具体的な武器をご紹介していきます。ぜひ、最後までお付き合いください!
免責
ただし、交渉を実施するにあたり、以下を必ずご留意ください。本記事で紹介する方法はあくまで情報提供を目的としており、すべてのケースで成功や合意が保証されるものではありません。交渉の結果やリスクについては、読者ご自身の責任のもとで進めていただくようお願いいたします。クライアントとの契約書や法的な観点については、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めいたします。
3. 交渉のための更なる武器
武器4:著作権譲渡と著作者人格権の不行使契約は実績公開不可の理由にならない
「著作権を譲渡しているから」「著作者人格権を不行使にしているから実績公開はできません」――このような理由でクライアントに断られた経験はありませんか?一見もっともらしいこれらの主張ですが、実績公開ができない理由としては必ずしも成立しません。
なぜなら、著作権譲渡や著作者人格権の不行使契約があったとしても、クライアントから許諾を得ることで実績公開が可能だからです。そして実務上も、これらの契約があっても実績公開を認められるケースが存在しています。
重要なのは、著作権周辺の契約内容そのものよりも、実績公開の許諾について合意があるかどうかです。
もしクライアントが「著作権の関係上許可できない」と主張する場合、その言い分が合理的かどうかを見極め、隠れた意図がないか探ることが交渉の鍵となります。
ポイント
著作権譲渡と著作者人格権の不行使の契約でも、許諾があれば実績公開はできます
実務上、実績公開の許諾には、著作権譲渡と著作者人格権の不行使の契約から生じる制約を限定的に解除する効果があると解釈できます
著作権譲渡や著作者人格権の不行使だけが問題であれば、単に実績公開許諾を得ることで解決できます
合意を拒否された場合は、隠れた理由があります
次のアクション
クライアントに対し、「実績公開のための許諾」をシンプルに打診しましょう
相手が許諾を拒否する場合、他に隠れた理由がないか丁寧に聞き出しましょう
武器3を活用して、真の理由を特定しつつ粘り強く交渉を続けましょう
武器5:相手方の言い分の合理性を確認しよう
「それは契約上の理由です」「申し訳ありませんがルールなので」――こうした相手方の返答を鵜呑みにしてしまっていませんか?
実際のところ、これらの主張は、契約内容や合理的な根拠に基づかない単なる言い訳である可能性があります。
たとえば「一定期間が経過したので交渉には応じられない」と言われたとします。しかし、本当にそのような条件が契約に明記されているでしょうか?例え契約に書かれていたとしても、それは法律上有効で正当な内容なのでしょうか?そういった視点で、相手方の言い分を確認することが重要です。
ポイント
合意がない言い訳や不合理な主張に振り回される必要はありません
言い分が契約内容に明記されているかを確認することが大切です
たとえ契約に書かれていても、法律上の有効性を検討する必要があります
次のアクション
契約書や事前合意書を確認し、相手方の主張が明記されているか確認しましょう
相手方に、主張の根拠となる条項や具体的な理由を尋ねましょう
不合理な理由で交渉を拒否された場合、再度交渉の継続を促しましょう
最後の武器:独占禁止法を活用して理不尽を打ち破る
ここまで、あなたは「実績公開不可」という壁に立ち向かうため、いくつもの武器を手にしてきました。しかし、それでもなお、相手方が合理的な説明を一切せず、「業界の慣例だから」「当初の契約に合意いただいていますから」といった曖昧な理由で実績公開を拒絶するケースが発生することでしょう。
そんな理不尽な状況を打破するために、ぜひ知っておいていただきたいのが「独占禁止法」という特別な法律です。
独占禁止法とは?
独占禁止法は、市場の健全な自由競争を守るために設けられた法律です。これは大企業だけでなく、フリーランスや個人事業主のような規模の小さな事業者を保護するためにも適用されます。
中でも注目すべきは、クライアントが不当な強制や一方的な条件を課す行為「優越的地位の濫用」を禁じるという規定です。公正取引委員会の見解によると、以下のような行為が問題視されます[1]。
明確な根拠もなく実績公開を全面的に禁止する
理由に対して秘密保持義務の範囲が過剰である
人材囲い込みを目的として実績公開不可の制約を課す[2]
さらに独占禁止法は、法律の強制力が契約書の条項よりも優先される「強行法規」です。そのため、このルールに違反する契約は無効化されます。仮に「実績公開一切不可」という契約が存在していても、それが不合理であれば制約を無効化することも可能です。
この特性を活用して、不合理な制約には毅然と対応することが重要です。
もし、交渉を重ねても相手方が合理的な対応を全く示さない場合、最終的には公正取引委員会への報告や専門家との連携を検討しましょう。たとえ秘密保持契約を結んでいても、報告自体が秘密保持違反となることはありません。
ポイント
独占禁止法は、市場の健全な自由競争を守るための法律です
独占禁止法は契約よりも優先される、強行法規と呼ばれる法令に属します
強行法規に違反する契約内容は無効化できます
理由のない実績公開不可は優越的地位の濫用として問題視されています
相手方には、合理的な説明を行う責任があります
不合理な制約は、取引の公平性を損なう行為として規制されます
秘密保持契約があったとしても、公正取引委員会への報告は可能です
次のアクション
相手方に実績公開不可の範囲と理由の説明を求めましょう
相手方に独占禁止法違反の可能性を指摘し、再検討を促しましょう
やり取りを記録し、不当制約の証拠を整理しましょう
必要に応じ、弁護士や専門機関に相談して対応策を確認しましょう
最終手段として、公正取引委員会への報告を検討しましょう
4. 参考資料
[1] フリーランス・トラブル110番 独占禁止法(優越的地位の濫用)・下請法上問題となる行為類型 想定例 CASE11
[2] 人材と競争政策に関する検討会 報告書 p.35-36
https://www.jftc.go.jp/cprc/conference/index_files/180215jinzai01.pdf
5. 後半のまとめ
後半記事では、実績公開不可という課題に立ち向かうための「6つの武器」のうち、残りの3つをご紹介してきました。
武器4:著作権譲渡や著作者人格権不行使契約は障壁にならない
武器5:相手方の言い分の合理性を確認しよう
最後の武器:「独占禁止法」に基づく突破策
不合理な条件に苦しむフリーランス作家が希望を持てるよう、これらの強力な武器をぜひ活用してください。
さらに、交渉するフリーランス作家の人数が増えることで、不合理な慣例を変える力も生まれます。一人で立ち向かうだけでなく、同じ志を持つ仲間たちと連帯し、業界全体の健全な未来を目指していきましょう!
あなたの勇気ある一歩が、自分の可能性を広げ、他のフリーランスたちの道を切り開くきっかけになります。そんなあなたを、私は心から応援しています!
最後までお読みいただきありがとうございました!本記事が少しでもお役に立ちましたら、ご支援をしていただけると大変励みになります!
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