【読書】 匣の中の失楽
第4の奇書と呼ばれる本作。
解説には「ミステリーとアンチミステリーを両方兼ね備える作品」とあります。
推理小説好きグループの1人、ナイルズが書いた小説の通りに密室殺人事件が起こる。
その後も続く事件に、メンバー達は個々の推理を展開して、事件にのめり込んでいく。
住む土地の名称に色が使われていたり、登場人物達が次々に推理を披露していく形態は『虚無への供物』へのオマージュかなと感じました。
呪術や密教の図や重力方程式、物理の二重スリット実験、エクゴニンの構造式など、とにかく幅広い推理で頭が混乱する。
溜まり場の『黄色い部屋』には、夥しい数の人形が飾られており、黒死館のテレーズ人形さながらの不気味な世界観も感じる。
この作品ならではの魅力は、巧みな言葉のトリックと「さかさま」の密室。
この意味は読み終われば分かります。
一冊の本でたくさんの本を読んだような感覚。
「ミステリーの奇書」と認識した上で読む作品。