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第5夜 女と男の酒席考 あみだくじとヒエラルキー

 何年ぶりだろう。酒宴の席順を決めるため、あみだくじを引くことになった。全国各地の新聞社などで働く、50~60代の女性たちの集まりでのこと。幹事さんが紙の切れ端に、ボールペンで線を引いてくれた。私の席は4番だ。
 酒席では、「きょうはノンアルコールで」という女性が、かなりの割合でいる。仕事に子育て、介護などで忙しいせいだろう。でも今回は、9割が「飲めます!」組だった。うれしいな。新聞社で働く女性は増えたけれど、管理職はまだまだ少数派。年齢が近い同業他社の同性と、直接話せる機会なんてめったにない。
 乾杯をしながら考えたのは、「これが同世代の男性なら、あみだくじは必要ないかも」ということだった。名刺を交わした瞬間に会社の規模や役職、年齢などで大体のヒエラルキーができ、席順もおのずと決まっていたのではないか。集団内における上下関係を即座に把握し、立ち位置にふさわしい振る舞いをする能力は、男性に一日の長がある気がする。お酒好き、話し好きな人間の多い業界なので、飲み始めると結構ぐだぐだだけど。
 ただ、飲み会の醍醐味(だいごみ)というか、要諦は「少人数でじっくり」にあるように思う。パーティーで参加者の目が輝き始めるのは、中締めのあいさつが終わって、仲良くなれそうな相手に「2次会、行きませんか」と声を掛け合うあたりからだ。つまり、席順が消えてから。
 日常でも、酌み交わしたい相手と約束し、一番星が光る空を見上げながら、飲み屋街へと向かう時の気分は格別だ。おいしいものを食べ、気兼ねなくおしゃべりをしたいのなら、やはり女友達がいい。女性は自分で料理する人が多いので、店の選択に間違いはない。男性の場合は、お店のママさんが好みのタイプというだけで「いい店」になることがある。「僕は、ちょっと食にはうるさくてね」というせりふが出たら、ご用心。高いワインをおごってくれるかもしれないが、かなりの確率で、長いうんちくが付いてくる。
 ただ、こちらが落ち込んでいる時に、ふらりと現われて飲みに誘ってくれるのはなぜか、男性が多い。そういう時は対面でなく、居酒屋のカウンターに並んで座り、ポツポツと話をするのがしっくり来る。「子どものころ、夕焼け空にUFOらしきものが浮かんでいるのを見てさ」。過去の飲み会を振り返ると、どうでもいい雑談や昔話の方が記憶に残っているのは、なぜなのだろう。
 (写真は、新潟市中央区古町通6にある「ジャズ壁画アート」の一部=「ATouch of Art in Niigata デューク・エリントン」制作アーティスト・NOVOL氏=。♥好きを押していただくと、猫おかみ安吾ちゃんがお礼を言います。下記の記事もどうぞ)

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