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【400字旅行記】小笠原の船出

東京から24時間。太平洋の大海原を南へ進むと、小笠原諸島の父島が見えてきた。青く透き通った海にはウミガメが悠々と漂い、港では島の人たちが手を振って、この絶海の孤島を訪れた私を迎えてくれた。

小笠原諸島は東京から南へ約1000km離れた島々で、そして私が人生で最も訪れたかった場所の一つだ。

最大の魅力は、世界遺産に登録された雄大な自然。貴重な固有種が数多く生息し、砂浜にはウミガメの産卵跡が残る。海の中ではカラフルな魚が竜宮城のように泳いでいる。小笠原で過ごした5日間は、夢のような時間だった。

出航の日、私は港でお世話になった方々にお礼を告げて船に乗り込んだ。島の人々は船が離れるのを追いかけるように続々と海へ飛び込み、大きく手を振ってくれた。それは父島の人々と自然が一体となった瞬間だった。まるで父が息子を見送るような温かさで、私を海へ送り出してくれた。「また帰ってくるね!」そう心に決めた船出だった。


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