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3.5 啓蟄、心ワクワク、虫という字について考える
3月5日は啓蟄。啓蟄(けいちつ)は、土の中の虫も地面に出てきて活動を始める頃。
啓蟄は、二十四節気の一つ。二十四節気は、1年を24に分けたもの。春夏秋冬の4等分にしたものを、さらに季節ごとに6等分している。春は、立春、雨水(うすい=雪が雨に変わり、氷が溶けて水になる季節)、啓蟄、春分と続く。(春分の後は、晴明、穀雨と続き、立夏となる)
「啓」は「開く」、「蟄」は「虫などが土中に隠れ閉じこもる」意味で、「蟄」は、「かく-れる、とじこ-もる」という読み方もある。「啓蟄」で、隠れていたものが開き、「冬籠りの虫が這い出る」という意を示す。
長い冬の間、地面でじっとしていた虫が出てくる。我々はコロナで、まだじっとしていなければならない。虫がうらやましい。
虫がうごめく季節だが、「うごめく」という言葉は「蠢く」と書く。「蠢」という漢字は、春に虫がはうように動くことを言い、まさに虫に特化した漢字だ。
漢字には虫を使ったものが多い。古代中国では虫が大手を振るっていたようだ。
虫のつく漢字を並べてみる。
蛇、蝮、蜥蜴、蛙、蝦蟇、蝙蝠、蜆、蝸牛、牡蠣、蛤、蛸、蟹、蜘蛛、蠍、蝎、蜈蚣、蝦蛄、蚯蚓、蛞蝓、蛭、蟯虫、南蛮、虹、風、蛋白質、蜀、触、蝋、蜜、蝕、融、蟄、強……
まだまだあるが、読めない文字も多い。蚊とか蝶、蛾という昆虫だけではない。
日本では「牛」は牛で、それに「子」をつけて子牛、「雄」「雌」をつけて雄牛、雌牛だが、多数の牛と共に生活している英語圏では、cow(雌牛)、bull(雄牛)、ox(去勢した雄牛)など、それぞれの言葉がある。昔の中国ではそれだけ虫に関係する言葉が多かったのか。
中国における「虫」は、本来は蛇をあらわす文字だった。しかも毒蛇、マムシ。
蛇、マムシの象形文字から「虫」という漢字ができた。頭の大きいマムシの絵からできた。古代には、いろんなマムシの絵が描かれた。「蛇」にも虫がついているし、蛇が龍になり、天に昇ってできたといわれる「虹」も虫だ。
「虫」という字は、昆虫だけでなく、小さな生き物全てをあらわしていた。だから昆虫意外にも「虫」が使われている。昆虫の虫の場合は、虫を横に二つ並べていたそうだ。「蠢く」の下の字だ。「蚕(かいこ)」の旧字は「蠶」と書き、これも虫二つだ。
日本では、昆虫の虫は戦前まで、虫二つではなく、「蟲」と書いていた。小さいのがごちゃごちゃいるので三つの虫であらわした。そんないろんな虫が春になり、動き出す。
啓蟄は春の季語でもある。
啓蟄の雲にしたがふ一日(ひとひ)かな 加藤楸邨
啓蟄や雲のあなたの春の雲 加藤秋邨
啓蟄や日はふりそゝぐ矢の如く 高浜虚子
啓蟄の虫より早く起き出でて 山口青邨
虫たちが暗い地面から出てきて動き出す。周りの風景もだんだん暖かさを増してくる。日の光も、冬とは違う暖かさを出してきた。
動物たちの恋の季節でもある。巣を作り、子育てをするために、ツバメもやってくる。人間は繁殖期がなくなって、年中盛りがついているが、他の動物は、快適な自然環境でなければ子育てができない。寒くてもだめだし、暑くてもだめだ。だから春が恋の季節になる。これから始まる恋にわくわくしてくる。
本来は動物であった人間の心もわくわくしてくる。
ところが、年とともにわくわくがなくなってきた。
わくわくがほしくてnoteを始めた。創作をするということは、わくわくを求めているのではないだろうか。わくわくすれば、他のことにも力を出せる。仕事もがんばれるようになってくる。そう思ってこのnoteを書いている。
わくわくだけでなく、どきどきも求めてしまう。
この暖かい春の日、部屋を飛び出し外へ出ていこう。わくわくどきどきが待っている。