【デザインを学ぶ⑥】 『デジタルスケッチ入門』を読んでの感想メモ
こんにちは。きゃめです。
内省しながらデザインを学ぶ過程をnoteに書いています。
前回のnoteはこちら。
今回は最近読んだ本の感想メモnoteです。この本を読みました。
めっちゃ泣きました。
デザイン本を読んで泣くとは思わなかったです。
この本、今年の春にフリーランス仲間が大絶賛していた『デジタルスケッチ入門』です。
著者は長砂ヒロさん。
「コンセプトアーティスト」というお仕事をされている人です。
具体的にどんな仕事なのかはよくわかりません。でも、私が大好きな『SPY X FAMILY』のオープニング映像などにも関わっていらっしゃるそうで、ワクワクが倍増しました。
アニメの『SPY X FAMILY』に出てくる風景が素敵だな、とずっと思っていたのです。
フリーランス仲間からおすすめされたものの、本の中で扱っているデザインソフトがPhotoshopだったのもあり「Photoshop持ってないんだよな~」と買うまではいかず。
「表紙の絵が素敵な、ちょっと気になる本」の立ち位置で、ずっと止まっていたのでした。
その本をなぜ読もうと思ったのかというと… 少し前置きが長くなるのですが、書かせてください。
心を取り戻すための刺激が欲しかった
「楽しい」「感動する」ってなんだっけ?と思ってしまう日々
この夏は公私ともに忙しくて、深呼吸する暇もないような日々を過ごしていました。
そしてピークを越えた先週末にぎっくり腰をやりました。まだ痛くて椅子に座れず、仕事も休み休みです。
思うように働けない焦りはありながらも「こういうときこそ本でも読むか…」と思って、本棚の積ん読ゾーンに行ってみると、少し前に買ってあったこの本に目が留まりました。
数週間前に、お守り代わりに買っておいたのでした。
ここ数ヶ月、公私ともに忙しい日々を送っている中で、自分によくない変化が生まれているのを感じていたんです。
と感じることが増えていました。
思考停止モード、というか、心が動かないモードというか。
食べたいものもなければ、行きたいところもない。あったところで時間がない。日常の中の「やらなければいけないこと」に対応するばかりの日々で心が死にかけていたんです。
さすがに、これはいかん!と思って。
本屋さんにふらふらと「心のサプリになりそうな本」や「落ち着いたら読みたい本」を探しに行き、この本を見つけたのでした。
「おすすめされてから、もう半年も経ったのか~早いな~!」と思いつつ、パラパラと読んだら。
とビビッときて、買って帰ったのでした。深呼吸ができる状態になったら、絶対に読むぞ!と心に誓って。
私がこの本のどんなところに惹かれたかというと、内容がただの技術解説本っぽくなかったところです。
帯に「日常は美しい」と書いてあることからも、技術本とはちょっと違う感じがして。
「日常の楽しみ方を教えてもらえそうだなー」と感じたのが手に取ったいちばんの理由でした。
なので、Photoshopの使い方がわかるようになることや、デジタルのデッサンができるようになることを期待したわけではありません。これからもPhotoshopを買う予定はないです。
何が気になったかというと、
とか、
というところ。
表現をする人の脳内を知りたいとか、デジタルのイラストがどのように生まれていくのかを理解したいと思ったんです。
日常を観察して、感動を取り戻したい
私がデザイン・イラストに興味がある理由は、なにげない日常を可愛く記録したいからです。
日々の小さなことに幸せを感じたり、今日も生きたな~!楽しかったな~!って思いたい。
なんだけど、最近の自分が忙しさに追われて生活に余白がなくなり、心が荒んでいるのを感じていながらも、正直どうしたらいいかわからなくなっていました。
そこに「日常を観察する」という視点を入れることで、いまの自分が忘れかけている大切なことを思い出せないか?を期待していました。
読んでみたら、予想していた通り、操作そのものよりも各章の冒頭部分の文章やコラムの文章がすごく心に残りました。そして、ところどころで泣きました。
疲れ気味のアラフォー母フリーランスなので、情緒がおかしいかもしれないです。笑
他の人が読んだら涙は出ないかもしれません。
でも私は人生のこのタイミングでこの本に出合えてよかったと心から思いました。
個人的に心に響いた文章を引用させてもらいますね。
心に残った著者さんの言葉
表現するために、考える、観察する
これは「レモンの色はレモン色じゃない」っていう話のところで出てきた文章です。
私たちは固定観念を持っていることで、考えるステップを省略していると著者は言います。たとえば「レモンはレモン色だ」というように。
そう思ったままでも生きてはいけますよね。おそらくレモンはレモン色だと思っている人が大半なのではないでしょうか。私も含め。
けど「何かをつくる」ことを目指すならそれじゃダメなんだと、著者は言います。
いちいち立ち止まって、観察して考えることが大事。どれだけ時間がかかって、めんどくさくても。
本の中では実際にレモンを描くところも出てくるのですが、確かにレモンはレモン色ではなかったです。
光の当たり方や光の種類に合わせて微妙に色を変えて、何色も使って表現していました。
私は正直なところ、生まれてからこれまで、レモンが何色かなんて考えたことがなかったです。影に暖色の影と寒色の影があることも意識すらしていませんでした。
文章を読みながら、ポロポロと涙が出てきました。
「観察する」という視点で日常を過ごせば、今よりもっと毎日が鮮やかに見えるかもしれないなあ、という希望のような涙だった気がします。
うまいへたよりも、何を伝えたいのかが大事
これは「明度」についての説明の部分です。
「技術としての明度より、人に与える印象としての明度の方が大事だよね」という文脈のなかで、本質的にはうまいかへたかよりも何を伝えたいかだよね、という話だったと記憶しています。
伝わりやすさという意味で、技術があったほうがいいのも間違いないから、この本では技術を教えているけれども、
本来、優先されるべきなのは「何を表現したいのか」だよね、という話でした。そうだよなあーと、唸りました。
文章に置き換えて考えてみると、美しくて読みやすいけど心に残らない文章もあれば、めちゃくちゃなのになぜか泣ける文章もありますよね。もちろん美しくて感動する文章もあるけどね。すべては、何を伝えたいか、なんだろうな。
私はデザインするならば何を表現したいんだろう。考えてみたいテーマです。今のところは、葉っぱとかお花を描きたい気がします。なんとなく。
知る必要があるときに、はじめて実感として理解できる
著者さんは、まずは技術的にうまくなることを最優先に取り組んでいたけど、だんだんと本質的に大事なのは技術じゃないと気づいたという話なのかな〜と読み取りました。
一方で「自分が必要になったときにはじめて実感できる」ということも書かれていて。ああ、その通りだなあと。
人生って、そういうの多いよね。
本質的なことって、若い頃とか、学び始めた初期に聞いても、わからなかったりするよね。知っていたとしても、実感がわかないというか。
知識として知っていることと実際にできることの間には、大河が流れているよね。
本を読んでわかった気になるだけじゃなくて、実際に手を動かしてやってみるのが大事なんだよね。
途方もないほどの時間をかけて、失敗を繰り返して、そのなかでコツを掴んで、自分流を見つけていくんだよね。
時間がかかるってわかっているからこそ、最初の一歩を踏み出せないっていうのもあるんだけど。それでも変わるためには行動しないといけないんだなって、しみじみ思いました。
なんか、書いていて自分で自分を刺しているような気分になってきたけども。行動しかないんだよね。
表現することは、人があたたかい気持ちで生きるうえで大事
これはグラスに活けたお花を描いているところでの話。
花の絵を4回も描いた(=最初の3回は失敗した)というエピソードが紹介されていて、驚きました。
失敗だとされている絵も私の目にはどれも素敵だったけど、著者さんにとっては「イメージと違った」んだそう。
「なぜこの絵を失敗だと思うのか」を考えて、4回目にようやくイメージに合うイラストが描けたんだとか。
「著者さんにとって描きたいものがどんなお花なのか」という結論の部分を読んだとき、すごい納得しました。
本の中のどこかにも書かれていた気がするけど、人って「なんか違う」は感覚的に思えるけど、なぜ違うのかはすぐにはわからないんだよね。
でも「なんか違う」の中にヒントがあるはずで、その違和感を言語化することを諦めないことが大事なんだろうなと。
自分はなにを表現したいのか、自分らしい表現ってなんなんだろう、というテーマに、一生ずっと向き合っていくんだろうな、と思いました。
どんな一瞬を切り取って描くのか
最後のほうで「目に見えない空気感」の話をされていたのも印象的でした。
絵を鑑賞する人は、絵の中から、目に見えない空気感を読み取っていたりします。
それは「時間の経過」だったり「匂い」「温度」だったり。あるいは「懐かしさ」だったり。
「絵を通して人の潜在意識にアクセスできたときに、空気感の獲得につながるのではないか」という表現をされていて、なるほどな、と唸りました。
たとえば、ビニール素材のバッグの絵を見て、小学生時代に通っていたスイミングを思い出してみたり。
風に揺れる風鈴の絵を見て、おばあちゃんちの縁側でスイカを食べた夏休みを思い出してみたり。
人は何か情報に接したときに、自分の記憶の中にある似たイメージを想像することで理解を補ったりしますよね。絵を見るときにも同じことが起こっているんだろうなと。
だから、誰もが一度は似た経験をしているようなことをテーマにすると、人の感情にアクセスしやすいということなんでしょうね。
これはデザインに限らない話だね。「事例はわかりやすく、親しみやすいものが大事」ってことだよね。メモメモ。
赤いりんごを描くところから始めてみたい
読み終わった後に静かなワクワク感が残った本でした。デスク横の本棚に置いて、疲れたときにパラパラ眺めたい感じの。
著者さんの口調がすごく穏やかで、フォントも優しい印象で、読んでいるとほっこりした優しい気持ちになれるんですよね。
本で描かれている素敵なイラストをすぐに描けるイメージは浮かばなかったです。むしろ描けるようになるまでの長い道のりがあるんだろうなあ、と遠い目になりました。
でもこれからの日常の見え方が少し変わりそうな予感がして、ちょっと心が躍りました。
実際にペンを手に持って描き始めてみたら、さらに世界が変わるんだろうな、とも思いました。
うまくいえないんだけど、感動する瞬間が増えそうです。
タイトルとしては『デジタルスケッチ入門』と書いてあるけど、単なるデジタルスケッチのやりかた本とかPhotoshopの使い方の本としてだけではなく、
日常の観察の仕方のヒントを得る本として、たくさんの人に読んでもらえたらいいなあ~と思って、こうして長々と感想noteを書いてみました。6,000字を超えてしまった。なっが。
「アナログのデッサンでは描き直しが難しいけど、デジタルだとレイヤーを分けられるから、描き直しや色の変更がやりやすい」という内容を読み、
「デッサン初心者だからこそ、デジタルから入るという手もあるのかなー」と思ったりもした次第。
この気持ちがしぼまないうちに(?)デッサンしてみたいです。
これまで何回か葉っぱを描きたいと書いてきましたが、本の中で最初は対象物は「赤いりんご」などがおすすめと書いてあったので、りんごにしてみようかな。
赤いりんごがいい理由は本の中に書いてありました。なるほど!でした。
Photoshopはないんだけど、アイビスペイントでもできるかなあ。
とりあえず、やってみたいと思います!
秋のうちに、その時間を作るのだ!
デザインを学ぶシリーズ、まだまだ続きます。
今回読んだ本はこちら↓