マガジンのカバー画像

創作 SF風。

9
記憶のような妄想のような SF系創作小説です。 ちょっと薄目で見る、くらいで あまり凝視しないでください……照れるから。
運営しているクリエイター

記事一覧

いまも 夢に見る

いまも 夢に見る

いまでも夢に見る

いまも思い出す

覚えているのか 見て覚えたのか
繰り返し繰り返し 見るあの光景

目の眩む閃光と 
空気を震わせるおびただしい数の悲鳴と
轟く海の渦
沈みゆく"大地だったもの"と
消えてゆく 思いと 思い出
耳をつんざく 自分の叫び声

そして 最後に微笑んだあなたの蒼い瞳

私のことを思って 私をいたわって ほほえんでくれたあなた

あなたが最後に見た私は
半狂乱で涙

もっとみる
ソラノカナタ アナタノカケラ         〜episode.3.0  エヴレスト・ゾングル

ソラノカナタ アナタノカケラ 〜episode.3.0 エヴレスト・ゾングル

 
【episode.3.0    エヴレスト・ゾングル】

男は幾度も  女の記憶を"洗った"。

幾度も  幾度も。

女は逆らうことなくそれに従った。

…………だが

洗っても洗っても

なぜか、

女は 飼い慣らされているはずが いつの間にか

ごく自然に こころが離れて行くのだ。

従順に 男のことだけを見ているはずが

いつの間にか  男を見る目が 白むのだ。

男にはそれが 不愉快

もっとみる
ソラノカナタ アナタノカケラ  episode.2.2

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.2.2

episode.2.2

【決意】

風が頬を撫でた。

目の前に広がる 水面を見て
彼女は しばし現状を把握できないでいた。
そよ風が心地よかった。

空………なのか、水面ではない空間は藍色で 
光源はないのに 暗くはなかった。

どこまでも広がるその空間は。

[あぁ、ここは  わたしの、こころの庭

誰にも 冒すことのできない場所]

ここへ来る前に何をしていたのか

何があったのか……考え

もっとみる
Orionのぬくもり    episode.XXX

Orionのぬくもり episode.XXX

Orionが呼んでいる……

……………夜空を見上げる。

あなたは  いまも

わたしを 呼ぶのですか

黄金から赤銅、灰黒へと変わる瞳で
あの 少し憂いた眼差しで
いまも いるのでしょうか………

わたしの はねを隠して

わたしに 名前をつけた

(あなただけが呼ぶ名を)

 

赤い海でも あなたはわたしを捕まえた

腕を掴む 大きな手のぬくもりを

わたしは今でも覚えています

わたしは

もっとみる
ソラノカナタ アナタノカケラ  episode.2

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.2

episode.2

【LYRAにて〜aureola〜】

LYRAの住人の多くは女性体の姿を好んだ。
豊かに波打つ金髪と 金色の瞳が、近ごろのLYRA人の流行りであった。 
言語もあるが 歌を好み、微笑みを絶やさない。
LYRAほど穏やかな星はほかにはないだろう。
奉仕と慈愛の精神が強く
どんな者であろうと 傷ついていれば手当をし
求めるものがいれば与えた。

長くLYRAに生きるアゥレオラは 

もっとみる
ソラノカナタ アナタノカケラ episode.1

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.1

episode.1【略奪】

奪うのではない。
欲しいから手に入れる、それだけだ。

…………と、
"彼ら"は━━━━━オリオンの彼らは言った。
決して、その星の民すべてが"そう"ではないとしても
高い知性、科学力、強い好奇心、身体能力をもつ彼らは………彼らの一部は
『求める』ことに対して貪欲であった。

もちろん、科学力を 他の星や 様々な問題への解決策へと尽力を惜しまない者もいたが
他の追随を

もっとみる
ソラノカナタ アナタノカケラ  episode.0.2

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.0.2

episode.0.2

【MONOLOGUE】

覚えておこう

きみの肌はてのひらに
きみのぬくみはこの血の中に
きみの瞳は この世界のあらゆるものの色に

きみの笑い声は 細胞に響かせて

朝焼けの雲は  きみの髪の色

刻み込め刻み込め刻み込めおれのすべてに  彼女のすべてを刻み込め

かならず  この手に取り戻すために

近ごろ
いままで以上におれに触れ おれを見つめる意味は
わかってい

もっとみる
ソラノカナタ アナタノカケラ  episode.0.1

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.0.1

episode.0.1

【このせかい       〜手記より〜】

わたしが忘れてしまう前に
いくつかここへ記しておきます。
わたしが"いま""そこ"にいない以上、たしかめようのないこともあります。
ただの読み物として読んでください。
忘れてしまってもかまいません。

まずはじめに
あなたが探している『誰か』にはきっと会えます。この手記をあなたが読んだことが
その布石となります。
物心ついた頃か

もっとみる
ソラノカナタ  アナタノカケラ episode.0

ソラノカナタ アナタノカケラ episode.0



【episode.0】

なにから

お話しましょうか。

はじめに覚えているのは………

虹のかかる滝のそば
ミルク色の日差し
原っぱの木陰
わたしの膝でまどろむあなた

わたしは
あなたの 銀色がかった虹色の
前髪が目にかからぬようにそっと指で除けた

あなたは眠りから醒め
サファイア色の瞳がわたしを探してこちらを見た

「夢を見ていたよ………」
少し潤んだ瞳であなたが言う。
わたしの腰に

もっとみる