銀杏BOYZと 『いちごの唄』によせて
『いちごの唄』をやっと読みました。
3年前に買った、しずかなピンクの本。
3年寝かしたということは、
やっぱりフィクションな物語より
生々しい部分が好きなんだと思います。
「峯田和伸さんの7つの詩曲が1つのストーリーになっている」とか
美しい装丁や本の気配とか
峯田さんの描く絵に惹かれて買った本です。
読みながら、ああ、この感じは知ってる、と思いました。
なにかによく似ている。
不器用で優しい中学生(コウタ)と
いつも一人でいる女の子(あーちゃん)の
幸福で不幸な物語です。
コウタ君の親友、伸くんが交通事故であっけなく死んじゃうのは
私はあまり好きじゃないと思いました。
かなしい気持ちになるから。
かなしい物語の救いって何でしょう。
現実世界の苦しみや悲しみは
徳を積むための修行だけれど。
大切な友人が今、存在していることに感謝すること?
死を意識すれば
今ある ‘生’ を意識するしかない。
世界堂(画材専門店)には真っ黒いキャンバスが売っているのだけど
白いキャンバスとは逆に光を描かざるを得ないように。
中学生の好きと大人の好きは違う、
とコウタ君は感じる。
そうかもしれない。
若い頃の方がドキドキや感動は大きい。
脳のドーパミン量も多いし。
大人になればドキドキは減る。
でも、より深い感動は確かに味わえる。
でも、大人みたいに誰かを好きになるとか
心から大切に思うことは
どこか死ににて、かなしい。
仲良しだった兄を亡くしてから、そう思う。
自分が自分でなくなっていく、あの感覚。
どこかとんでもないところに行こうとする。
どうにも戻れない。
そんな不安が全身を包み込んで、時に恐怖すら覚える。
でも、とても甘美な恐怖だけど。
嬉しくて楽しくて幸せで、
やさしい気持ちになるけれど
もしかしたらいつか切なさと悲しさと
腹立たしさも芽生えたりするかもしれない。
何ごとも、ほどほどが良いと思う。
ただ、嫉妬や憎悪を克服してきた人は強い生命力があるらしい。
感情を周囲に撒き散らしちゃいけないけど
そんな自分を認めてあげれば健全らしい。
必要なのは想像力。
自分以外の誰かをおもんばかる想像力は必要で、
「他者への想像力をはぐくむには恋しかない」みたいなことを、
幻冬舎の見城徹さんがいっていた。
コピーライティングの世界では
まずは自分の感情を知ることが大切だと教わる。
本を読んだり、映画を観たりも良いけど。
「できるわけない」こともあるかもしれないけど、
「何かできないかな」と考えることは幸せだし
人は何かしてあげることで幸せを感じるようにできている。
「人間は地球の中で最も弱い存在だから助けあって生きていくわけで
心からの幸せは、誰かの役に立った時だけ」
と師匠はいっていた。
じゃあ、どうやったら人の役に立てるか、っていったら
誰かが自分について、
あるいは誰かが自分の将来について
感じることができるような手助けをすること。
できる人は、みんなこれをやっている。
あーちゃんはコウタ君が自分のために戦ってくれたおかげで
ちゃんとしよう、って思ったり
前を向こう、って思ったりしたみたいに。
あーちゃんの口から語られた言葉。
実は、私も思ったことがある。
人は亡くなるとき、どんな気持ちかを聞くことはできないから
残された人は、もしかしたらそうかもしれないと
どこか思ってしまう。
ざらざらした淋しさと、沁みる傷。
プライヴェートなかなしみを
こんなにわかりやすい形で物語にできるのは
脚本家の職人性なのだと思う。
『いちごの唄』は、人間の無力さと、
やさしさ、いとおしさ、逆にそれ故の強さまで描かれているわけだけど
そういうところよりも圧倒的にかなしみと恐怖が胸を塞ぐ。
峯田さんの歌は、もっとやさしくて強いのにな。
峯田さんの歌はマニア向けで
本と映画は大衆向けだからかもしれない。
ヒット作は作品の完成度とお客さんの満足度が
子供と大人の中間ぐらいの作品が多い。
わかりやすく感動するストーリーで
大多数の中高生と、ある程度の大人は満足するがゆえに
流行を狙えるという。
(目のこえた大人には傑作というほどでもない作品になる)
マニア向け × 大衆向けという掛け合わせが
私の中で何か、消化不良みたいなものが起きた。
物語の楽しみとか役割の一つは
誰かの人生を追体験して味わうことだけど
薄っぺらいかなしみは苦手。
描写を感情的に受取りすぎたからかもしれない。
でも、それを認めることで
ある種のやすらぎを得られるのかもしれない。
この本を読み終わると、
現実はもっとやさしいし、もっと強いという気持ちになる。
現実は、ふしぎな明るさを放っている。
峯田さんの歌や、音楽は良いなあ、と改めて思う。
聴けば幸せになるし
嫌な気分も追っ払えるし。
それから、あーちゃんにとってのコウタみたいに
なにがあっても絶対に自分の味方だ、と思える人がいることは
人生を素晴らしくいいものにする、と思う。
そのことの幸福。
そういう、単純でよろこびに満ちたこと。
そのことの心強さ。
物語の最後は
こんなふうに閉じられる。
これがゴールで
コウタとあーちゃんの新しい物語の始まる。
それから、シリアスな物語の最後(1行)が
ユーモアで終わったのは良かった。
現実へ戻る、明るい気持ちを取り戻すことができて良かった。
***
銀杏BOYZ「GOD SAVE THE わーるど」
「僕たちは世界を変えることはできない」って銀杏BOYZはずっといっていたけど、『GOD SAVE THE わーるど』の世界観は、もっと希望の一光が見えました。なんだか、とっても神々しい。
2018年の銀杏BOYZライブでもらった
「GOD SAVE THE わーるど」のチラシ。
2021年の今につながるとは。
もっと強く、もっと良い方向に
そういう世界になっていくことを心から願って。
また、意味のわからないことをやっていこう。
あなたも、意味わからなくてもやっていこう。
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