護られて在るということ─ 『パタパタミニブック NANA』によせて
20代のころ心待ちにした本。
『PATAPATA MINIBOOK NANA / 山本ヨーコ著 (2003年発行)』
ぬいぐるみ作家・山本ヨーコさんの写真絵本は
いままで見たどんな絵本とも違っている。
まず、おわりのページまで文章がない。
外国に行ったみたいな
可愛くて独特な世界観をしずかに味わい
最後のページでやっと
ストーリーが明かされてホッとする。
ホッとする、というのは
ヨーコさんの手描き文字と
文章から伝わるあたたかみにホッとするのだ。
そして、この小さな絵本から
しみじみとやさしさを感じる。
この本を開く、ときどきによって
思い起こすことが違う。
NANA みたいなカッコいい女の子を思い出したり
外に連れ出してくれる親友を思い出したり
一人で歩くときの見上げるよぞらのことを思ったり。
日常から出て、旅するぬいぐるみたち。
でも、ちょっとさみしい気持ちになったぬいぐるみに
元気になる言葉をかけてくれるひとがいる。
親近感を抱かずにはいられない。
表紙の深い藍色の背景は心静かに落ち着くし
ぬいぐるみのあたたかな言葉に満たされる気がする。
大切な乗り物を貸してくれて
しょんぼりした気持ちをすくい上げてくれる
やさしいぬいぐるみは
だれでしょう?
シリーズ3まであるパタパタミニブックは
どれも「安心」に結びつく。
安心とはなんでしょう?
家があること。
食べ物があること。
友だちがいること。
パタパタミニブック1『DONUT BEAR』と
パタパタミニブック2『PIGGY』は
居心地のいい自分のお部屋や
甘いお菓子、
親友の存在に安心したけれど
パタパタミニブック3では、
それよりももっと大いなる何か
── お家の外に出ても 見護ってくれるひとの存在 ──
別世界を見せてくれるひと
遠くへ行く乗り物を貸してくれるひと
哀しいとき励ましてくれるひとがいることに気づく。
何かに護られている、と思ったとき
この本に出てくる
あたたかなぬいぐるみを思いだすかもしれない。
おわりのページに
ちょこっと書かれた言葉には無駄がなく、
ぬいぐるみたちの世界観にふさわしい表現をされていて
とても夢見心地だ。
生地で表現された森。
手塗りのよぞら。
ぬいぐるみの視線を通し、
みるひとはこの世界が
やさしい場所であることを思い出す。
おわりのページの
ニッコリわらった
ぬいぐるみの笑顔。
また、この絵本は視覚的なインパクト大で
パッケージだけでもまったく斬新。
本を護ってくれる厚手のフェルトに
物語とリンクする手描きの星々。
そうして勿論、
インパクト十二分のぬいぐるみたち。
センスというのは
天性のものなのだなあ、と思う。
凡人には思いつくことも作ることも、
表現することも難しい
ユニークなキャラクター。
外国にいるみたいな空気感に
いっぷう変わった構成もすてき。
はじめからおわりまで
外国のアニメを見ているよう。
パタパタミニブック1と2は
家の中が中心なのに対して
3作目のNANAはそとへ、そとへ、
大胆に場面が広がっていく。
場面が移り変わるたびに
ぬいぐるみたちは
とっぴょうしもない場所にいる。
森やよぞら、
極めて雄大なモチーフが
小さな本のなかに
すっぽりと収まっている。
幻想的でありながら
ぬいぐるみの楽しさや
哀しみはとてもリアルだ。
表紙の藍色の背景は手塗り。
なんともいえない味がある。
山本ヨーコさんは、
絵を描く才能にも
めぐまれたひとだなあと思う。
『PATAPATA MINIBOOK NANA』は
もともと書店での取り扱いはなく
クラウドファンディングに出ている分で
販売終了だそう(現時点で残数 41)。
山本ヨーコさん(yokodoll)のクラウドファンディングはコチラ(終了しました。見ていただいた方、ありがとうございます🐷🐻”)
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