#57 書くことは失敗すること
上の記事を読んで、ある動画を紹介したくなった。米国のジャーナリストのタナハシ・コーツが「書くことは、失敗すること」と語っていたものだ。書くことについての話は無数に転がっているけれど、一番好き。なお、「GRIT やり抜く力」という本でも引用されている発言である。
「私のすべての作品において、失敗はおそらくもっとも重要な要素だ。書くことは、失敗することだから。何度も何度も、嫌というほど。」
"Failure is probably the most important factor in all of my work. Writing is failure. Over and over and over again."
「世界とぼくの間に」というエッセイ集がベストセラーになったコーツだけれど、書くことは自分の「惨めさ」が目の前に現れる作業なのだと語る。
「書くことが大変なのは、紙の上にさらされたおのれの惨めさ、情けなさを直視しなければならないからだ。そして寝床にもぐる。」
“The challenge of writing Is to see your horribleness on page. To see your terribleness. And then go to bed.“
何かを書こうとしたことがある人なら痛いほど分かるのではないだろうか。さらにコーツは続ける。
「翌朝、目が覚めるとあの惨めな情けない原稿を手直しする。惨めで情けない状態から少しはマシになるまで。そしてまた寝床にもぐる。」
“And wake up the next day, and take that horribleness and that terribleness, and refine it, and make it not so terrible and not so horrible. And then to go to bed again.”
「翌日も、もう少し手直しする。悪くないと思えるまで。そしてまた寝床にもぐる。さらにもういちど手直しする。それでどうにか人並みになる。」
“And come the next day, and refine it a little bit more, and make it not so bad. and then to go to bed the next day, and do it again, and make it maybe average.”
「そこでもういちどやってみる。運がよければ、良いと言えるかもしれない。それをやり遂げたら、成功したってことなんだ。」
“And then one more time, If you're lucky, maybe you get to good. And if you've done that, that's a success.”
直して、寝て起きて、また直す。この修正の道のりも、書くことについての本質じゃないだろうか。
コーツは別の動画でも似たような話をしていて、そこでは作家にとって一番重要なことを”perseverance”だと言っている。
”perseverance”は「忍耐」などと訳されるが、語源はフランス語系統で「とても/very」という意味のper-と、「困難/シビア」のseverusから成る。
ロングマンの辞書では”determination to keep trying to achieve something in spite of difficulties”と定義されている。
要するに「大変でも続ける」という意味だ。