【読書日記R6】7/3 心の薬に。「平安女子は、みんな必死で恋してた イタリア人がハマった 日本の古典/イザベラ・ディオニシオ」
平安女子は、みんな必死で恋してた イタリア人がハマった 日本の古典
イザベラ・ディオニシオ 著 (株)淡交社
いろいろなことが重なって頭が巻き切れてしまい、とうとう間の抜けた失敗をしでかしました。
取り返しのつかない致命的な失敗ではないものの、非常にきまり悪い思いをしたので、うつうつと落ち込み、偶々来た別件のメールでぽろりと愚痴をこぼしたところ、翌日、友人が本を差し入れしてくれました。
疲れたときには「笑い」も薬、とメッセージを添えて。
私の趣味に寄り添いつつ、既読を避けて少し外した選書をする心配りの細やかさと知性、素早く反応するあたたかな行動力に元気づけられ、また、惚れ惚れしました。
こんな女性に私もなりたい。
さて、本書は、イタリアという文化背景を持つ著者が、こよなく愛する平安文学およびその書き手である女性たちを読み解くエッセイです。
枕草子、蜻蛉日記、紫式部日記などを「個性的な女性たちが、恋に、出世に奮闘する平安オムニバス」として描きます。
各作品の小見出しも今風で楽しくなります。
たとえば、次の見出しは誰(作品)を指しているかお判りでしょうか。
1.女であることを誇れ!カリスマ姐さん
2.ハイスペック×素直になれない=鬼嫁
3.給湯室ガールズトークの元祖
答えは以下の通り。「光る君へ」でもおなじみの皆様でした。
1. 清少納言(枕草子)
2. 右大将道綱の母(蜻蛉日記)
3. 紫式部(紫式部日記)
まだ気分転換に拾い読みしただけで、きちんと読めていないのですが、思わず笑ってしまう自由闊達な書きぶりは、千年も前に書かれた作品でも、時代を超えて文化を超えて普遍の魅力をもち、また、それを自分なりに好きなように楽しんでいいのだ、と、ともすれば古典に対して身構えてしまう気持ちを取り払ってくれるようです。
元々は東洋経済オンラインで連載しているコラムだそうで、そちらに記されていた古典の魅力に対して述べたこの言葉に深く頷きました。
私が「源氏物語」に出会ったのは小学生で、話の内容もはっきりとは理解できていませんでした。それでも「何か好き」と感じましたし、その後、学びを深めるほどに惹かれていきました。
原文をどのように解釈するのか、人や物、自然の風物など着目するポイントによっても多彩な切り口があります。
また、同時代の他の作品や史実と照らし合わせることで新たな発見が生まれます。
自分の知識が増え、ものの見方が広がるほど魅力を増すそれが古典作品の奥深さなのだと思います。
本書もまた、私に新たな見方を与えてくれそうです。
千年前の女性たちは、私などとは比べものにならない制約の多い面倒な時代に暮らしながら、強靭に愛して恨んで泣いて笑って、そしてその心を書き尽くして生きていました。
それを思うと、私などはまだまだ真剣に生きていないし、書いてもいないなと思えてきます。
友に贈られた「読み薬」実によくききました。
感謝を込めて。