【読書日記】9/5 詩と香水。追悼・福原義春氏「道しるべをさがして」
資生堂名誉会長・福原義春氏の訃報を聞きました。
資生堂の社長・会長として経営に携わり、同時に企業による文化支援活動を推進し、初代企業メセナ協議会会長を務めました。
「道しるべをさがして(朝日新聞出版)」は、福原氏の社会・経済・文化・自然、よろずのことを綴ったエッセイ集です。
名経営者としての手腕が垣間見えるかと思えば、趣味の写真や蘭の栽培への熱い眼差しやナメクジやドクダミなど一般的に表舞台に出にくいものにも注目する好奇心や観察眼。そして何より読書家としての視点。
どの章も学びの種にあふれているのですが、「文化資本の経営」の章で、「人、物、金」に続く第四の経営資源として「文化」を挙げているところは、現代の企業に必須の考え方だと思います。
企業は、社会の中で自然環境の中でどうあるべきか、目まぐるしい混沌の時代に「道しるべ」となるものはなにかということを深く考えさせられるのです。
芸術・文化を愛し支援する経済人、ひとつの憧れの姿でした。
ご冥福をお祈りします。
さて、福原氏は現代詩の造詣も深く、第35回まで続いた「現代詩花椿賞」の創設にも尽力しました。
「現代詩花椿賞」の受賞者に贈呈される特製香水瓶は、一点ものだったそうです。
詩、というものをなんと美しく言い表しているのだろう、と思います。
残念ながら「現代詩花椿賞」は終了していますが、ウェブ「花椿」で毎月の詩が公開されています。
「ことばは力、文字は魔術」ということばも遺した福原氏をしのび、詩集をひもとこうとおもうのです。