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大九明子監督のメルクマール:映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』レビュー

 第37回東京国際映画祭コンペティション部門にならぶ一本。観客賞確実。原作既読の方は致し方なしだが、未読ならそのまま、映画についての前情報もなるべく入れずに鑑賞されたし。
 大九明子監督・脚本で、萩原利久、河合優美、伊東蒼の三者三様のキャラクターデザインの説得力たるや大。ここに銭湯主人に扮した古田新太と主人公友人の黒崎煌代みごとに絡んで見応えある大九明子ワールドを現出させた。河合優美は、本映画祭、様々な作品での起用が見られ、旬の女優であること誰もが認めるところ。しかもどこでも同じ、とはならないあたりに多くの製作者に声をかけられることの理由明白ではあるが、このままだと使いべらしされてしまうのではないか、と心配になるが、それはまた別の話。本作だけに限れば前半と後半の表情の微妙な相違に感心させられるばかり。引っ張りだこ、宜なるかな。しかしながら、本作にあって特筆すべきは伊東蒼。彼女のひと言ひと言、快活多彩な表情なしには作品としての成功はなかったろう。初恋に揺れる女子像を等身大、親密感溢れさせ演じ切った。 
 大九明子が、『勝手にふるえてろ』や『私をくいとめとて』など過去作で積み上げ、近時話題沸騰のNHKドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』で過不足なく描出した人と人とが切り結ぶ感情の襞と同じようなものが、温かな手触りで本作には息づいている。大九明子のキャリアのひとつの到達点を示す作品となるかも知れない。
 全国公開は来年5月予定とのことである。
@tiff 2024
#今日空

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