見出し画像

【読書】刺青(谷崎潤一郎)

 2024年7月5日(金)、時間の合間に、谷崎潤一郎の短編小説『刺青』を読みました。立東舎の「乙女の本棚」シリーズです。絵本でもあり、イラストレーター・夜汽車のイラストも楽しむことが出来ます。

■あらすじ

 清吉という若い刺青師ほりものしの腕ききがあった。〈中略〉この若い刺青師の心には、人知らぬ快楽と宿願とが潜んで居た。彼が人々の肌を針で突き刺す時、真紅に血を含んで脹れ上る肉の疼きに堪えかねて、大抵の男は苦しき呻き声を発したが、その呻きごえが激しい程、彼は不思議に云い難き愉快を感じるのであった。〈中略〉彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己の魂を刺り込む事であった。

『刺青』本文より抜粋。

■感想

 箇条書きですが、記載します。

①嗜虐性?

 上記したあらすじもそうですが、新潮社のホームページにも、「肌をさされてもだえる人の姿にいいしれぬ愉悦を感じる刺青師清吉」とあります。
 こういう感覚をどういう言葉で表現すればよいのか、私は考えました。「サディスティック」ともいえますが、悶える人と一緒に自分も悶える気持ちを愉しんでいるように感じるのです。
 見出しには「嗜虐性」と記しましたが、言葉の定義にもよるなぁと思い、もう少しこうした類いの作品や、その解説に触れてみたいなぁと思いました。
 また、noteでは、クリエイターの方の作品を読むことが出来ます。『刺青』は、谷崎潤一郎にとって初期の作品だそうです。瑞々みずみずしいというのか、こうした新しい感覚の作品を評価した人々の慧眼にも驚きを感じます。

②描写の美しさ

 刺青師や女性の心情や動きの描写、作品中に出て来る二本の巻物の「絵」の描写など、繊細な文章で描かれています(いるように思いました)。
 また、リズ厶感とはまた異なるものの、流れるような、流麗な文章という感じを受けます。
 そして、「恍惚」いう感じに「うっとり」というふりがながうたれている箇所があり、ため息が出そうになりました(笑)。

■おわりに

 あんまり書きすぎると、これから手に取る人が持つ新鮮な感覚を奪いそうなので、これ以上は控えます。短編で、取りかかりやすい作品でした。おすすめです。
 最後になりましたが、冒頭の画像は「蜘蛛」で検索し、t.kobaさんの画像を使用させて頂きました。ありがとうございました。
 本日は、以上です。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集