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【読書】ともに生きるための演劇(平田オリザ 著)
2025年になりました。今年もよろしくお願いします。
今回、紹介する本は、平田オリザさんの『ともに生きるための演劇』です。NHK出版「学びのきほん」シリーズの1冊です。演劇の入門書を読んでみたくて手に取りました。(2025年1月2日(木)読了。)
■はじめに
著者の平田オリザさん(1962〜)は、劇作家、演出家です。私も、これまで作品をいくつか観たことがあります。私は始め、観客視点の入門書を想定していたのですが、読んでみると、平田さんの職業柄、創作者の視点から考える面が大きかったです。
本書では、演劇の起源としていくつか説が挙げられ、その中で、平田オリザさんは「コミュニケーション」に起源がある説を提唱していました。
以下では、あまりネタバレにならないよう、「コミュニケーション」を取り巻く(個人的に)心に残った3つの用語と、そこから自分で考えたことを書いてみようと思います。
■心に残った3つの用語
(1)ハイコンテクスト
本の中で、日本は「ハイコンテクスト」な社会という記載がありました。私は、初めて聞く言葉でしたので、インターネットで検索しました。
(「ハイコンテクスト」とは、)互いの文化や価値観が近かったり、背景や事情をよく理解していたりするため、言葉による詳細な説明がなくてもコミュニケーションが円滑にとれること。
「わかりあう文化」「察しあう文化」という言葉も使われていました。
「ハイコンテクスト」な社会と、「ローコンテクスト」な社会(・ヨーロッパの「説明しあう文化」)で、どちらが優れているとは言えませんが、グローバル化や多様性が進んでいく中で、意識しないとならない概念のように思いました。
(2)対話
話し言葉の概念として、「スピーチ」や「ディベート」、そして「会話」等と区別し、「対話」が定義されていました。本書から少し引用します。
「会話」 …… 親しい人同士のおしゃべり
「対話」 …… 異なる価値観を持った人とのすり合わせ
「対話」は、「相手を論破する」のとも違い、相手が抱える背景や価値観なども考え、結論を探っていく形でしょうか。また、到達する結論にも、AかBかの二者一択ではなく、部分的に譲り合ったり、第三の選択肢や提示するなど、幅があるように思いました。
(3)非認知能力
最後に、「非認知能力」について記載します。これも、私は初めて知る言葉で、インターネットで検索しました。
◯認知能力とは知的な力で、知識・技能、思考力等を含む。(中略)
◯非認知能力とは、主に意欲・意志・情動・社会性に関わる3つの要素(①自分の目標を目指して粘り強く取り組む、②そのためにやり方を調整し工夫する、③友達と同じ目標に向けて協力し合う。)からなる。(後略)
文部科学省の資料から抜粋してみたのですが、インターネット検索で、AIが、様々なサイトをもとにまとめてくれたものも、載せてみます。
・非認知能力とは、IQや学力テストでは測定できない、やる気や忍耐力、協調性、自制心などの心や社会性に関連する能力です。
(4)まとめ
(1)〜(3)に、少し文脈を補足します。平田氏は、グローバル化や多様性が進む現代において、ハイコンテクストな日本社会で、演劇を通して、対話する力を磨き、非認知能力を高めていくことを考えています。
実際、平田氏が活動する兵庫県豊岡市では、全ての公立小学校と公立中学校で、演劇ワークショップを中心としたコミュニケーション教育の授業が導入されているそうです。本の後半には、こうした実践的な取り組みが書かれています。
■考えたこと
私は、演劇を介してコミュニケーション教育することに、以下のようなメリットがあると思いました。
創作であるが故に、やり直しが効きやすい。
映像とは異なり、リアルな実践である演劇の利点が活かせる。
ノンフィクションより、事実を柔らかく受け止めることが出来る。
また、私はクリエイターというより、鑑賞する側であることが殆んどなので、完成された作品をどう思うか、作品に自分の感性を近づけていくことが多いです。
しかし、本書のように、自分の住むリアルな世界を題材に作品を作っていくのは、また異なる視点なのだなぁ、と改めて感じました。
私も今年は、芸術鑑賞でなくても仕事などで、もう少しクリエイトする視点、工夫する気持ちを強めてみたいと思います。
■最後に
今回は、あまりネタバレにならないように、3つの用語に絞って書いてみましたが、その分、全体の流れや主題が希薄になってしまったように思います。本の感想より、紹介に重点を置いて記事を書くのは難しいですが、試行錯誤していきたいです。
最後になりましたが、冒頭の画像は「対話」で検索し、朱夏さんの作品を使用させて頂きました。2人の人が話し合い、重なる部分を見出す点が、自分が考えていた「対話」のイメージと重なりました。どうもありがとうございました。
本日は、以上です。