記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

【演劇】正三角関係(野田地図)

 2024年7月13日(土)19時の回に、野田地図の『正三角関係』を観劇してきました。公演は7月11日(木)に始まったばかりです。メモや感想を残します。

 本作は、ドフトエフスキーの小説『カラマーゾフの兄弟』をベースとしています。同小説の流れを知っていると(知らなくてもよいかもしれませんが)、入りやすかったように思います。
 また、この記事の後半にもネタバレ箇所が出て来ると思いますが、これからご覧になる方は、ネタばれなく観劇した方が面白いように思う作品でした。私自身、他の方の感想記事など読まずに鑑賞して良かったのかなと思います。

■はじめに:チケットについて

 今回も、事前抽選で落選したり、販売日も売り切れだったりして入手が難しかったのですが、結論から言うと、今回は当日券ではなく、事前のリセールチケットで入場出来ました。しかし、チケットの入手は本当に大変だと思うのです。

 当日券もリセールもですが、①抽選形式と②早い者勝ち形式(上手い表現が見つからず、すみません)等があります。細かくは記載しませんが、両者は一長一短です。
 私自身、抽選形式の過去公演で、連日劇場に足を運び、千穐楽付近にようやく補欠当選(その後入場)したことがあります。その時は、劇場スタッフの方に「良かったですね。」と声をかけて貰いました。

 今回の公演は、立見席も事前販売があり即完売していました。入場出来た私が言うのはおこがましいですが、暑い時期であることもあり、何とかならないかと思います。
 公演は続きますが、何度も観ることも出来ないので、事前にカフェイン(アイスコーヒー)を摂り、気合を入れて観劇しました。以下、感想等に続きます。

■『カラマーゾフの兄弟』について

 公演開始後のインターネットニュース等によると、本作のベースである『カラマーゾフの兄弟』や「法廷劇」というキーワードが出ていました。ネタバレ度合いが低いこの点から記載します。

 『カラマーゾフの兄弟』は、ロシアの文豪・ドフトエフスキーの長編小説です。私は過去に半分位まで読んだことがあり(途中で挫折)、後半もあらすじは押さえていました。カラマーゾフ家の父親と3人の息子たちを中心とした話です。

 そして、今回観劇しながら、本作は、自分が想像していたより小説に忠実な流れなのだなと思いました。そのため、大枠ですが、小説のこの場面は出て来るかな、と思ったりもしました。
 主軸は勿論、父親殺しの犯人は誰かという裁判です。取り巻く女性関係やお金関係、現場に遭遇する召使など、懐かしさのようなものを感じました。また、ネタバレとなりますが、ゾシマ長老の死の場面はありました。大審問官は無かったと思いますが、世界観の承継という観点で捉えてみるのも面白いかもしれません。

■舞台『正三角関係』について

 次に、純粋に舞台に絞った感想を記載します。

(1)野田秀樹さんの舞台について

 野田さんの舞台は、それほどたくさん観てきた訳ではありませんが、台詞の詩的さや比喩が印象に残ります。自分でnoteを書くときなど、私は「詩」ではなく、説明文的な文章を書くことが多いので、翻って、野田さんの舞台で「詩」を意識するような気がするのです。

 また、この2年ほど、他の脚本家や演出家(混在していてすみません)の作品を観る機会が出てきて、相対的に野田さんの舞台のファンタジー性を感じるように思います。
 舞台で、布やリボン、テープなどの道具を使う場面を多く見かけます。抽象度が高いのはもちろんですが、削り取った感じや殺伐とした雰囲気ではないのです。道具に動きがあるので、エネルギー性を持っているのか、厚みや温かみを感じます。また、リボンやテープを持った人たちが、疾走し舞台から消える時、エネルギーが消えていく後の余韻を感じます。
 ここは間違っていたら恐縮なのですが、新劇の具体性とは異なり、最低限の「無」から「有」を作るファンタジー性のようなものを感じます。

(2)俳優陣について

 父親を竹中直人さん、長男を松本潤さん、次男を永山瑛太さん、三男を長澤まさみさん(グルーシェニカと一人二役)が演じられていました。
 松本潤さんは、ニュースでも多く取り上げられていますが、私個人としても印象に残りました。年齢的にも積み重なって来ている部分がありますし、花火師という役どころで「男らしさ」や「格好よさ」がありました。
 また最近、他舞台でも、一人二役が同時に舞台に立つ演出を見かけることがあり、今回の長澤さんも面白かったです。私はこの仕掛け(詳細は伏せます)が結構好きなようです。

(3)「正三角関係」など比喩について

 ここで比喩するものについて書いておきます。
 まず、解釈は色々なのでしょうが、「正三角関係」という題名にもあるように、様々な三角関係が出てきます。3人の兄弟、1人の女性を巡る父と長男の関係、長男を巡る2人の女性の関係、少し飛躍しますが、法廷劇なので法曹三者。そして、花火が空に上がることから、夜空の大三角形のような星座を想像しました。
 また、「花火(師)」や「火薬」が、なぜ選ばれたのか、喩えるもは何かなど、考えるのも面白いように思いました。

■長崎について(ネタバレ)

 ここからは、ネタバレ度合が強いです。
 本作は、ドフトエフスキーの小説を舞台としながらも、舞台は第二次世界大戦中の長崎・浦上です。原子爆弾投下の話も当然絡んで来ます。「神が死につつあった時代のロシア」と「キリスト教の歴史を持つ長崎」が重なります。具体的には、長男の花火、次男の物理学、三男の宗教が絡みますが、現代に繋がる要素や問題を抱えているのだと思います。
 また、野田さんの作品『パンドラの鐘』は、同じ長崎を舞台にしており、アメリカとの関係が強く出ていましたが、今回の『正三角関係』では、ロシアとの関係(日ソの不可侵など)を考えさせられました。

 これ以上、あまり詳しくは記載しませんが、もうすぐ戦後80年になります。私は、都会のアパートで暮らし職場との行き来の中、意識が薄くなりがちですが、夏は戦争をより思い出す時期かもしれません。

■最後に(積み残しを含めて)

 その他、何点か記載します。
・法廷劇だったこともあり、動機や意思などが問題になる場面があり、ドストエフスキーの時代はどうだったのかなと、思い馳せたりしました。
・長崎での裁判が終わった後、検事が東京に誘われる場面がありますが、既視感があり、歴史的背景が気になりました。
・ロシアとの関係で、横流しで騙される場面があり、ここも既視感があり、歴史的背景が気になりました。
 後でもう少し調べてみようと思います。

 この後、公演概要など追記する部分もあるかもしれませんが(大きな追記や変更は控えます)、本日は以上としたいと思います。
 冒頭の写真は、会場で展示されていました舞台のミニチュアです。堀尾幸男さんの舞台美術でしょうか。もう少し勉強します。

 東京、北九州、大阪、ロンドンと公演は続きます。スタッフ・キャストの皆さん、体調管理も大変だと思います。突っ走って下さい!

 以上です。

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集