【能】道成寺
2023年7月16日(日)、国立能楽堂に、能『道成寺』を観に行きました。以下、メモを残したいと思います。(鑑賞から早2週間。早めに記録しないといけません。)
私は、能を観るとき、国立能楽堂の定期公演や普及公演に行くことが殆どです。しかし、『道成寺』のような大曲は、定期公演ではあまり見られないのではないかと思い、今回は、喜多流の友枝真也さんがシテをつとめる個別の会に参加させて頂きました。
友枝さんが「道成寺」をされるのは2回目ということです。2回目なので「披キ」ではないのですが、以下「披キ」からメモを残しています。(紛らわしくてすみません!)
■披キとは
「披キ」とは、以下のとおりです。→ リンク
■対談:道成寺ってなんだろう
能・狂言の上演前に、馬場あき子さん(歌人)と織田紘二さん(元国立劇場の理事)の対談がありました。
馬場さんは、学生時代の国語の教科書やテレビで、拝見したことはありますが、実際に話を伺うのは初めてでした。(私も含みますが)「道成寺」を初めて観る方が多いということで、「道成寺」の流れに沿って話をして下さいました。能・道成寺で使われる釣鐘は、80kgもあるそうです。
織田さんは、歌舞伎の「道成寺」との違いなどについて話をされました。
■能『道成寺』について(ネタバレあり)
(1)簡単なあらすじ
一言でいうと、「安珍と清姫の後日談」です。「安珍清姫物語」については、友枝さんのHPにリンクが貼られてありました。 → リンク
今回の能『道成寺』では、新しく出来た釣鐘供養に、霊となった清姫が再び現れ、騒動を引き起こします。
(2)あらすじに対しての感想
文字通り「恋の炎」を燃やす清姫がメインになると思うのですが、安珍がお婿さんになってくれると誤信させた周囲の人にも責任もあるのでは(!?)と、個人的には思いました。
「約束」や「契約」が成立したとまでは言えないにしても、信頼に足る行為だったのか、飲み屋での口約束のようなものだったのか、大学時代の民法の本などを読み返してみようかな、など思う部分がありました。
現代では「契約」というフレームで整理されていますが、(本件では恋愛感情が下地にあるにせよ)約束を破る・破られるという行為は、人間の感情を大きく揺さぶる起点になるように思います。
以下では、能の中で印象に残った部分を記載します。
(3)私が印象に残った部分①:乱拍子
前場で、新しい鐘の供養の場に、白拍子が現れ、舞を舞います。乱拍子の場面です。
素人の私が下手に書くと、誤解を生じさせるかもしれないので、THE能ドットコムの「能楽用語事典」から引用します。リンクをご覧下さい。
シテと小鼓の1対1のやり取りです。上記リンクでは、恨みの籠った鐘を目指して寺の石段を一段一段登る様子と記載されていました。
私は、最後に落ちてくる鐘に入る前に、(怨念の)エネルギーを貯めているのかな、と思ったりしました。
(4)私が印象に残った部分②:鐘後見
舞台上で、鐘を取り付けたり、引き上げたり、下ろしたりする「鐘後見」の方々がいらっしゃいました。具体的にいうと、取り付けは狂言の大蔵流山本家の方々、上演中の上げ下ろしは喜多流の方々がされていました。
私は、なぜだか分からないのですが、この80kgもある鐘を、みんなで取り扱う姿を見ていて、同僚や先輩方と仕事をする自分の職場のことを思い出してしまいました。仕事で特に何かの取り付け業務を行なっている訳ではないのですが、一緒にハラハラする部分もあり、面白かったです。
また、今回、天井から鐘を吊るすということで、笛柱にある環の使い方が分かり(今まで何だろと思っていました)、天井に鐘を吊るす滑車があることを知りました。
写真は、ぼやけていますが滑車です。
(5)その他
他には、山本東次郎さんの狂言『萩大名』、友枝昭世さんの仕舞『羽衣』が行われました。
■最後に
今回のような大曲と言われるような作品も、少しずつ見ていきたいと思います。
本日は以上です。