【演劇・読書】わが友ヒットラー(劇団未来、三島由紀夫)
来年2025年は、三島由紀夫の生誕100年です。先駆けて、大阪の劇団未来にて『サド侯爵夫人』と『わが友ヒットラー』が2本立てで上演されたので、観てきました。
『わが友ヒットラー』の感想を残します。
■あらすじなど
全三幕。登場人物は男性4人です。
上記したヒットラーとレームの他に、ナチ党内の左派シュトラッサーと巨大献金企業社長のクルップが加わります。
■感想など
(1)レームについて
最初は、ヒットラーが、両派(右派のレームと左派のシュトラッサー)から引っ張られたり、逆に、両派をコントロールしたりしようとする姿が描かれるのかなと思いました。その話に、ナチ党が如何に企業献金を取りつけるかという話が加わる形です。「わが友」の「わが」とは、他の3人を指すのかと思ったのです。
登場人物の場面や会話がバランスよく描かれている場面もあり、そうとも読めます。
しかし、観劇が進むにつれ、私はレームに目が行くようになりました。例えば、次の台詞です。
観劇後、新潮文庫やWikipediaの記事を読んでみて、私の感覚はそれほどズレていなかったと思いました。三島由紀夫は、レーム事件に関心を持っていたようです。三島が抱く理想の男性像が投影されているように感じました。
(2)会話の論理性
本作は、同じく三島由紀夫作の『サド侯爵夫人』と対になる作品だと言われています。両作品は、色々な点で比較出来ると思いますが、『わが友ヒットラー』はより現代に近く、事実を部分が多く、男性間の会話であることもあり、論理性を強く感じました。
また、つかこうへいの作品などでも、台詞の量・言葉の量が多いことを感じますが、三島の作品では、より明示的に論理性があらわれているように感じるのです。
こうした論理性を内在した会話を聞いていると、聞く側(観客)としては非常に疲れるのですが、舞台と観客のエネルギーのやり取りのように受け取れる部分もあり、演劇の1つの面白さのように思いました。
(3)その他
ヒトラーが公衆に向かって演説し、他の3人が後ろで聞いている場面があるのですが、舞台上で、ヒトラーが向いている方向など、素人の私からは舞台の使い方として、凄く面白く感じました。
また、歴史的背景やナチ党を巡る当時の状況など、当日の配布資料に書かれてあったり、幕前に短い解説があり、良かったです。
■最後に
同時に観た『サド侯爵夫人』は、また別の機会に感想を書きたいと思います。
来年が三島由紀夫の生誕100年ということですが、来年が楽しみになりました。
冒頭の画像は「鳩」で検索し、Tome館長さんの作品を使用させて頂きました。ありがとうございました。
■公演概要
『わが友ヒットラー』
作:三島由紀夫 演出:しまよしみち
【出演】
アドルフ・ヒットラー:島 芳道
エルンスト・レーム:川西 聡雄
グレゴール・シュトラッサー:林 睦人
グスタフ・クルップ:辻 智之
◇公演期間
2024年10月25日(金)〜27日(日)、11月1日(金)〜3日(日)
『サド侯爵夫人』との2本立て公演
◇会場
劇団未来ワークスタジオ@大阪
本日は、以上です。