【Netflix】「A24」製作のドラマ「逆上」が面白い *なぜ「BEEF」という原題なのか
6日、世界一斉公開されたNetflixの新作ドラマ「逆上(BEEF)」が面白い。批評家筋にも好評のようだ。
日本では最初、原題どおり「ビーフ/BEEF」のタイトルで予告されていたが、最終的には「逆上」という邦題に変わって配信されている。
あの「へレディタリー」「ミッドサマー」などで知られる「A24」製作のダークコメディ。
主人公は2人。いずれも、ロサンゼルスに住むアジア系アメリカ人だ。
リッチな女性実業家、エイミー・ラウ(アリ・ウォン)は、中国系アメリカ人で、日系男性と結婚し、娘が1人いる。
貧しい韓国系の便利屋、ダニー・チョウ(スティーブン・ユアン)は未婚で、仲の悪い弟と住んでいる。
(スティーブン・ユアンとアリ・ウォンは本作でプロデューサーも務めている。ドラマ上も、実年齢と同じ、1980年代生まれ、40代前半の設定)
仕事では成功しているが、心が満たされない日々を送るエイミーと、うだつの上がらない下積みで鬱屈しているダニーが、路上の「煽り運転(road rage)」をきっかけに仇敵となる。彼らは、家族や周囲を巻き込んで激しく憎み合うが、それぞれが思いがけない感情体験をし、人生が大きく変化していく・・
現代人は、なぜいつもイライラして、孤独で、「承認」ばかりを求め、そして、なぜ幸せになれないのか。その生態と心理を、ユーモラスに、ときに残酷に、解剖して見せてくれるようなドラマだ。
「A24」製作らしく、知的で、下品で、スタイリッシュで、露骨で、でも、どこかスピリチュアルで、飽きさせない。
登場人物がアジア系なので、我々に親しみやすいのもよい。「韓国系」「中国系」「日系」が、それぞれドラマのモチーフになり、また笑いのタネにもなる。「韓国系」と「日系」の微妙な対抗意識が描かれており、アメリカでもそうなのか、と思ったりする。
アジア系アメリカ人の中でも、「非アジア系と結婚すべき」派と、「アジア系同士で結婚すべき」派が、いまだにあるらしい(本ドラマの主人公は後者)というのも面白い。
もっとも、ドラマの中の日本観が、日本人にはピンとこないところはあるが、それは韓国人や中国人にとっても同様かもしれない。
ところで、原題は「BEEF」という。
別に「肉」が出てくるドラマではないのに、なぜ「BEEF」なのか。
それについて説明する記事があった。
Why Is 'BEEF' Called 'BEEF' ?(netflix.com)
それによると、「BEEF」は「牛肉」の意味ではなく、
have a beef with~ 〜に不満がある
という俗語表現で使われる「BEEF」のようだ。
ドラマが描いているのは人間関係の「確執(feud)」であり、それをよりキャッチーな言葉に言い換えて「BEEF」となったらしい。
邦題の「逆上」は、その意味を伝えているが、あまりキャッチーではないね。
<参考>