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【Netflix】「視線」 日本アニメの影響を受けた秀作スリラー

【概略】


「視線」(2022)
Watcher

夫の仕事の都合でブカレストに移り住み、孤独を感じているアメリカ人女性。地元で連続殺人事件が起きているとの報道があるなか、自分が誰かにストーカーされているのではないかと疑い始める。

出演: マイカ・モンロー、カール・グルスマン、バーン・ゴーマン
(Netflix公式サイトより)

予告編(英語)↓


【評価】


本作は、2022年のサンダンス映画祭で上映され、大賞候補になった秀作スリラー。

最近、Netflixで見られるようになったが、拾い物と言える。100点満点で82点。

ルーマニアのブカレストが、こういう都市型ホラー・サスペンスの舞台としてぴったりですね。「ドラキュラの故郷」の陰影を生かして撮影されています。


クロエ・オクノ(1987~)監督の長編映画デビュー作です。彼女は共同で脚本も書いている。

chloe okuno


クロエ・オクノはアメリカ生まれのアメリカ人ですが、名前からして日系だと思われます。

そのことと関係あるかはわかりませんが、彼女はあるインタビューで、本作が影響を受けた映画として「ローズマリーの赤ちゃん」「セブン」とともに、日本のアニメ「パーフェクト・ブルー」(1997)を挙げています。


この映画のトーンや映像表現の参考になった映画はありますか?

What were some of your inspirations for the film's tone and the visual language?

ええ、いくつかあります。いちばん大きいのは「ローズマリーの赤ちゃん」で、構成や語り口で影響を受けました。(中略)

ほかに「パーフェクト・ブルー」という映画があります。映画というか、日本の今敏が監督したアニメですが。デヴィッド・フィンチャー同様のゴージャスな広角ショットのなかで、のぞき見されていると感じる女性を描いています。彼女が孤立を感じているのも同じで、非常に大きな影響を受けました。

Okuno: Yeah, there were quite a few. I think the big ones were—Rosemary's Baby was definitely an influence, certainly in composition, and I think narratively as well. Just it's a true psychological thriller and is an apartment-based movie, where we're really creating a tone and a feeling with the production design and the cinematography. Se7en was also an influence. I think David Fincher just generally always shoots his movies so beautifully. So also in terms of lighting and color palette, that was something that me and the DP and the production designer looked at quite heavily.

There's a movie called Perfect Blue, which is actually a Japanese animated movie from Satoshi Kon. But that also just has all of these gorgeous wide shots, where you have a woman who feels like she's being watched, and she's very isolated. So that ended up being a big influence.


私は「パーフェクト・ブルー」を見ていませんが、その予告編を見ると、いくつかのショットや、ストーカーの造形で、「視線」に影響を与えているのがわかります。


「パーフェクト・ブルー」より 「視線」同様、窓からのぞかれるシーン
「パーフェクト・ブルー」より ストーカーの姿が「視線」と似ている
「パーフェクト・ブルー」より 建物の通路でストーカーが迫ってくる。似たシーンが「視線」にもある

「パーフェクト・ブルー」予告編↓


この世代の若い映画監督は、もうアニメから強い影響を受けているんですね。

実写映画だけを見て、映画を語れる時代は終わった、と実感せざるを得ません。


この映画では、「ローズマリーの赤ちゃん」「パーフェクト・ブルー」同様、女性が孤立し、心理的に追い詰められていく過程が描かれています。それによって憔悴していく姿を、「イット・フォローズ」のマイカ・モンローが好演しています。

そして、「ローズマリーの赤ちゃん」と同じく、緊張感をずーっと引っ張って、最後の最後に急展開し、衝撃的な結末を迎えます。

特別な新鮮味はないかもしれませんが、過去のホラーやサスペンスからよく学んでいて、質が高く、満足できます。エラソーなレビューですみません。


<参考>


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