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健康資本をストック!所得と寿命の悲しい相関
「体が資本」まさに健康というものは、誰もが最も必要とする掛け替えのないもの。健康寿命さえ高まれば、人生の幸福度や満足度を充足させ、よりよい人生を長く送ることが出来るはずです。私の願望として、たとえ命の灯が消える日時が定まっていたとしても、より長く日常生活を不安なく送れる程度に健康でありたいところです。
この考え方について、アメリカの経済学者であるマイケル・グロスマンは、健康がどのようにして人の幸福に寄与するか、またその健康を維持改善するために選択する行動についても経済学的な意思決定の観点から提示しています。
●健康消費(Health Consumption):
健康な身体そのものが幸福を生み出すものとして存在する。それを維持するための運動、食事、医療などが幸福度を直接的に向上させ、健康を維持改善するための"消費"とされる。
●健康投資(Health Investment):
将来の健康状態を改善させるため、早期の治療や健康診断、運動、食事を配慮し、健康学習を行うことなどが健康を維持改善する。これによって労働生産性向上や医療費の削減、そして幸福な余暇時間につながる"投資"とされる。
●健康資本(Health Capital):
健康状態そのものが価値を持ち、健康は加齢や不健康な生活と共に減少していくストックという概念。適切な投資を行う事で維持増加する。このストックが多ければ多いほど、健康的で活動的な生活を長く送ることが出来るようになる"資本"とされる。
またグロスマンによれば、人間は健康消費と健康投資の総和である健康的で活動的な生活という幸福度を最大化させるように行動しているとしています。そして実はこの理論によって、それまで説明できなかった"教育水準の高い人ほど、健康水準が高い"という事象について説明されることになりました。
教育水準が高く、所得水準が高い人ほど、効果的に健康資本を蓄積する事が可能だからです。実際にアメリカのスタンフォード大学教授だったラジ・チェティらの研究によって、所得が高い人ほど寿命が長いという事が明らかにされました。ここでは所得上位1%の人は下位1%の人と比べて、男性では約15年、女性では約10年寿命が長いという結果が導き出されています。
健康が幸福度に相関関係があるとするならば、所得が低いことが不幸であり、高い事は幸福であると読み替える事が出来ます。我々の業界でもある福祉の世界は、全産業労働者と比べて低所得であることは明らかな事。日々、人と関わる人間であるからこそ、心のゆとりのためにも健康であることを何より大切にしたいところです。
そして実際のところ、ブルーカラーである我々は膝や腰など身体のどこかしらを傷めることが必然であるかのような状況です。また夜勤などの場面では一人で多くの利用者に対応しなくてはならず、事故は命に関わる問題である事から、長時間労働の中で仮眠など満足にとることはできません。さらに身体の痛みが睡眠の質を悪くするという悪循環も待ち構えています。
このような事からも必然的に健康を害する事が多く、通常よりも健康資本であるストックの減少幅も大きいように思えます。だからこそ、健康投資という概念に出来るだけ早く気が付き、健康的な食事、運動、睡眠などを意識しなければならないのだと考えます。投資は複利の力によって、早く始めれば早く始める程有利なものです。この場合、健康投資も同じようなものだと思えます。
適度な運動、バランスのとれた食事、質の高い睡眠。これは人間誰もが重要な三種の神器です。これに丁寧な歯磨きを加えたいところですが。より多くの健康資本をストックするため、このような事を意識しながらコツコツと日々の暮らしを積み立てていく事こそが、まさに「兎と亀」ということでしょう。
介護に携わる者として、いや人間にとって健康こそが確実に幸福度を高めるものであることを認識します。このことからも自らと要介護者の健康増進に確実に生活の中で取り組んでいかなければならないと考えています。そしてまた、筋トレや学習も投資の概念によく似た性質のもの。私自身、毎日積み重ねの重要性を肝に銘じるためにここに記します。