「自分たちで動いて変化を起こす」中東地域のフェアトレード推進の柱、バスマさんのインタビュー
3月6日付のnote「オンラインでお箸をつくるまで」で登場した女性バスマさん。架け箸が今クラウドファンディングで取り組むオリーブのお箸の立役者である彼女の2017年のインタビューがあったので、そちらを通して彼女の思いを伝えられたらと思います。
創業/労働環境の改善へ
HLHC(彼女の勤め先)は地域の人の雇用をいかに守るかをテーマに1981年に創業しました。中東初のフェアトレード認証団体でもあります。
フェアトレードには10の原則があり、公正な価格の保障やジェンダーの平等、労働環境の改善などが柱になっています。しかし発足したときは、この労働環境の改善に多くの困難がありました。
そもそも、ずっと慣れているやり方を変える必要性をわかってもらえなかったり、初めてのことでノウハウがなく全く手探りの取り組みでした。
木材の加工では粉塵が出るので、その健康被害をなくすために塵を集めるポンプを取りつけ、一箇所に集めたり、塗装には専用の設備を造ったり。
最初は理解を得られなかった取り組みも、成果が見え始めると別の団体からノウハウを請われたりするようになりました。
こうして、HLHCでは労働環境の改善にかなり本腰を入れて取り組んでいるのですが、何世紀も続いてきた地域の伝統工芸(貝の真珠層の加工やオリーブの木工品)は危機に瀕しています。
公正な価格の保障と移民問題
特に貝細工は元々イタリアの人がこの土地にもたらした産業なのですが、近年環境問題や職人の健康の問題から縮小し、50ほどあった工房が10ほどになりました。
オリーブの木工品の課題は価格競争です。中国などからの安価な製品に押されてしまう地元産の競争力を高める必要があります。これについては観光庁などと会議していて、抜本的な解決策は見つかっていないのですが、
私は中国がパレスチナで商売するのは止めないし、それをどうこう言うのはフェアではないと思っています。けれど、製品にしっかりとマークをつけること。どれが中国産でどれがパレスチナ産かがわかり、消費者が選べるようになることが大事です。
HLHCのような団体がきちんと原価計算などを行い、労働に公正な対価を払うことで、作り手も安心してこの土地に暮らし続けることができます。今ではこうした手工業は地域の人の収入源のひとつになっています。
公正な価格で移民を防ぐのです。
なぜなら移民はパレスチナが抱える大きな問題だから。
HLHCではキリスト教徒とイスラム教徒が協働していますが、不安定なパレスチナの市場を見限り、ヨーロッパに活路を求めてキリスト教徒はどんどん移民してしまっています。10年~15年経てば、キリスト教徒のパレスチナ人はいなくなってしまうと思っています。
ここベツレヘムはキリストの生誕の地です。単に宗教的ではない、特別な空気感と土地の歴史が内包されています。”聖地”をどうやって管理するのか。大金をはたいてやってくる世界中の巡礼者のためにも、キリスト教徒としてここに留まりたいのです。
自分たちで変える努力
先日、オランダのとある団体とデザインを共同開発して、コンテストで受賞しました。
パレスチナの国内市場は政情に左右され非常に不安定です。どうしても、海外への輸出が肝要になってきます。今でも常時取引がある団体が複数あり、必ず次の取引があるというのは職人の安心に繋がっています。(とはいえ、輸出が容易なわけではなく、ブローカーを介す必要がありますが…)
こちらのデザインに取り組んだ当初も、オリーブに塗装は難しいなど否定的な風潮はありました。しかし、労働環境も作る製品も、変える努力をしないといけません。
パレスチナには、平和と生きる権利が必要です。
外から来る人には自由があるのに、私たちにはない。これがパレスチナに生きる私達独特の感覚です。でも、ただ諦めてしまっていいのか。
自分たちで変化を起こす。そして、平和と権利が保障されたパレスチナをつくっていくのです。
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カバー写真:HLHCS公式HPより