会計検査院のお仕事 その4 〜消費税相当額の補助金返還漏れ〜

このシリーズでは、筆者が指摘に関与(※)した案件をご紹介しています。

※端緒を見つけたり、取りまとめを担当したりするなど、部分的に関与したものを含みますが、お手伝い程度のものは除いています。

今回は、本記事投稿時点で最新の2019年度決算検査報告からのご紹介です。筆者が関与した案件については、こちらの記事で速報的に取り上げています。

ところで、こんな疑問があるかと思います。

退職してから1年半近く経つのに関与しているとはどういうこと?

会計検査院の検査結果は、様々な理由でとりまとめに時間が掛かることが多いです。なので、筆者の在職中に主体的に関与していたものが、最新の報告書にまだ掲載されているというわけです。当然、報告書の形に取りまとめているのは、引き継いだ後任の方となります。

それでは、指摘の内容に入ります。

仕入税額控除した消費税額に係る補助金を返還していなかったもの

(内閣府 指摘金額205万円)

 この補助事業は、医療法人が、平成25、26 両年度に、所有する老人保健施設の建物等に係る放射線防護対策を実施したものである。そして、本件補助事業の補助対象経費には、外注により実施した放射線防護対策工事に係る消費税(地方消費税を含む。以下同じ。)額が含まれていた。
 消費税の課税事業者である事業主体が補助の対象となる放射線防護対策工事を外注することは課税仕入れに該当することから、確定申告の際に課税売上高に対する消費税額から当該放射線防護対策工事の外注に係る消費税額を仕入税額控除した場合には、事業主体はこれに係る消費税額を実質的に負担していないことになる。このため、原子力災害対策施設整備費補助金交付要綱(平成 25 年府原対第 166 号)等により、事業主体は、補助事業完了後に、消費税の確定申告により補助金に係る消費税額のうち仕入税額控除した額が確定した場合には、その額を速やかに報告し、当該金額を返還しなければならないこととなっている
 しかし、同法人は、補助事業完了後の消費税の確定申告の際に、補助金に係る消費税額のうち仕入税額控除した額が 2,059,857 円と確定していたのに、この額について報告及び返還を行っておらず、不当と認められる

https://www.jbaudit.go.jp/report/new/all/pdf/fy01_04_02_10.pdf

解説

消費税は最終消費者が負担するものであり、事業者が仕入れ等により支払った消費税については、売上に係る消費税(預り金的性格)から控除することで、最終消費者のみが負担する仕組みとなっています(事業者は差額の預り金的消費税を納めます)。

https://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/consumption/301.pdf

そして、補助金は、事業実施前(課税仕入の前)に消費税込の事業費を前提に交付されるため、確定申告で仕入税額控除を行うと、補助金としてもらった消費税分だけ得をしてしまいます。このため、得した分をちゃんと返しなさいよ、となっているわけですが、この医療法人は、ちゃんと返していなかったことから、不当事項として指摘することになりました。

ちなみに、放射線防護対策工事とは、原子力発電所等に事故が発生し、放射性物質が周囲に飛散した緊急時において、屋外退避することが合理的でない半径30km圏内(これをUPZといいます。)の施設等で、陽圧化により気密性を高めて放射性物質の侵入を防ぐための設備の設置等を行うものです。一つの施設につき、2億円の補助金の予算が付いています

筆者は、会計検査院に在職中、全国の原子力発電所立地道府県及び隣接府県の実地検査を行っており、原子力防災については、かなり詳しくなりました。内閣に報告を行った以下の検査にも携わっています。

放射能測定器具に関しても、そこそこ詳しくなりました。この関係の指摘も行っていますので、いずれご紹介したいと思います。

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