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会計検査院のお仕事 その5 〜民間企業に対する指摘〜

前回に引き続き筆者が指摘に関与した案件をご紹介します。今回は、民間企業に対する工事の指摘です。民間企業でも、国の補助金を受給していれば検査対象となります。

前回の記事はこちら

非常用発電機の設計及び管理が適切でなかったもの

(経済産業省 指摘金額3690万円)

以下の引用文については、だいぶ端折りましたが、それでも長いので、太字部分辺りを拾い読みしていただくと良いかもしれません。事業主体の実名(石油会社)については、リンク先をご参照ください。

 この補助事業は、地震等により国内において石油製品の供給不足等が生ずる場合にも石油製品を安定的かつ効率的に供給できる体制を構築することを目的として、石油製品出荷機能強化事業費補助金の交付を受けた石油連盟が、製油所において石油製品の出荷設備等の機能を強化するなどの事業を実施する石油会社に対して、当該事業に要する経費を補助するものである
 事業主体(石油会社)は、平成 26 年度に、巨大地震に伴う津波被害により出荷設備等が電源を喪失した場合に電力を供給する非常用発電機 9 台を設置するなどの工事を実施しており、非常用発電機の固定については、仕様書において示された地震により生ずる加速度に耐えられるものかどうかを耐震設計計算により確認せずに、非常用発電機 1 台当たりアンカーボルト 4 本(径 16mm)を用いて倉庫の床面に固定していた。
 しかし、事業主体によれば、上記の固定方法については、請負業者の長年の施工経験に基づく知見によるものであるとのことであり、仕様書において示された地震により生ずる加速度に耐えられるものかどうかが判然としないことから、設備機器等の設置工事における技術上の指針として広く使用されている「建築設備耐震設計・施工指針」(独立行政法人建築研究所監修)に示された計算方法に基づき、耐震設計計算を行ったところ地震時に当該アンカーボルトに作用する引抜力は2.67kN/本から13.01kN/本となり、いずれも許容引抜力 1.20kN/本を大幅に上回っていて、耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった
 また、非常用発電機の管理状況を確認したところ、28 年 11 月以降、アンカーボルトを取り付けていなかった
 したがって、非常用発電機 9 台(工事費相当額 36,903,986 円)は、設計及び管理が適切でなかったため、地震時に損傷してその機能が発揮できなくなるおそれがある状態となっていて、これに係る国庫補助金相当額 36,903,986 円が不当と認められる

https://www.jbaudit.go.jp/report/new/all/pdf/fy01_04_10_04.pdf

解説

設備の耐震設計については、会計検査院が最も得意とする分野かもしれません。筆者はこれ以外にも受水槽の耐震設計の指摘をしています。

このnoteの読者には、技術屋さんはあまりいないと思いますので、技術的な解説は割愛しますが、アンカーボルトの耐震計算のさわり的なものについては、上記過去記事で平易に書いています。ご興味があれば是非お読みください。

今回の指摘で凄いのは、アンカーボルトの固定方法が請負業者の勘というところです。民間企業の検査を何件か実施しましたが、官庁発注の工事に比べると仕様なり設計なりがアバウトなケースが多いですね。

これまた凄いのが、結局アンカーボルトも取っちゃったというところです。これは、緊急時に倉庫から搬出するのに、ボルトを外している時間がもったいないという判断なのですが、地震による転倒や倉庫の壁への衝突等で破損したら意味がありません

ということで、設計及び管理が不当となりました。

おわりに

民間企業が国の補助金を受給した場合、会計検査院の検査を受ける可能性があります。自己資金で事業を行う場合よりも慎重さが求められると言えるでしょう。



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