「国際協力」から見る日本とフィリピン1
2024年4月末、南沙諸島周辺で、中国船によるフィリピン船への放水妨害がニュースになりました。これまでも同様の事案があり、フィリピン側にはけが人が複数出ており、フィリピン外務省は駐フィリピン中国公使に抗議するまでに至っています。
2023年11月に、岸田総理はフィリピンを訪れ、さらに2024年4月には、日米フィリピンのサミット会談も開催され、対中国を意識した政治がここ数年で一番活発になっているように思えます。
*アメリカの副大統領や関係閣僚もここ1年で何度かフィリピンを訪れたりしています。
以下、完全に主観ですが、過去に国際協力や中国関係(このあたりは次回に記述予定)の仕事をしていた経験も踏まえ、日本の外交・国際協力の現状について何が起きているかを書かせていただきます。専門家ではないので、あくまで推測できるレベルの話としてお読みください。
国際協力の位置づけ
「途上国」との外交において、「国際協力(ODA)」(*草の根レベルの支援は除きます)は重要なツールです。純粋にその国の発展のために行うものが多いですが、なぜ日本がそれを支援するのかといえば、外交のためにほかなりません。もう一つ挙げれば、インフラ等が整うことで、日系企業のビジネスがしやすくなる(間接的に日本に恩恵がある)ということも挙げられます。
極端な話、日本が支援しなくても、ほかの国が支援(無償・有償≒融資、を含む)もできます。でも日本がそれをするのは、国際的な外交の場でほかの国に日本を支援してもらうため・日本側に賛同してもらうためのツールとなっているからです。これは今日本と関係の悪くなっている中国やほかの国も同じことを考えているわけです。
こうなると、日本の味方になってもらうために「国際協力」をするという言い方もできます。そしてこうも言えます。「日本が支援している」のではなく「支援させていただいている」あるいは「支援をさせてくださいとお願いしている」と。(日本政府は絶対にこういうことは言いませんが。)
「途上国」からすると、いろいろな国が支援や援助をしてくれるので、場合によっては選びたい放題なのです。そんな中で、日本を選んでもらうことが日本にとっては重要なポイントになっているのです。
資金力では中国には勝てない
大きな視点で見ると、日本は中国には資金力では勝てません。
例えば報道では「フィリピンに2000億円支援」などと出ますが、この類は、「贈与=あげる」ではなく「借款=お金を貸す」のであって、長期にわたって(20-50年など)利子をつけて返してもらうものです。ちなみにこの円借款の予算は1.4兆円(2022年度)です。
純粋に無償で支援をしてあげるものも当然ありますが、額としては全世界対象で約1600億円(2023年度)のみとなります。(これを多いとみるか少ないとみるかはここでは触れません。)
資金力があれば、いわゆるハコモノ(インフラ)を世界中にたくさん作ることはできますが、日本はそれはできないので、ソフト面、例えば人材育成などの分野での支援を多くしています。
主にJICAがその役割を担っていますが、1-2週間程度の短期研修や、1年あるいは複数年にわたる長期研修、日本の大学院に留学してもらい、各国の開発課題を解決するための研究をしてもらう留学生支援などなど、多くのメニューがあります。ちなみにどれも「日本に来てもらう」ことが前提です。
この時代、知識を伝えるだけならオンラインでもできるものもありますが、日本に来てもらうことの目的は、単に対面のほうが学習・研究にきめ細やかな指導ができるということのほかに、できるだけ「親日家」を増やしたいという狙いもあります。
外交は国益が最重要視されますが、やはりそれとは別に「日本を好きでいてくれること」は、外交(コミュニケーション)をするうえでとても大切なのです。特に国同士が対立しているときでも、親日の相手であれば、本音を引き出せたりもするものです。
少し長くなりましたので、今回はここで。
次回は日本の外務省が国際協力をするうえでの最近のトレンドっぽいこと(=僕の主観)をお伝えします。