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アーシュラ・K・ル=グウィン 『風の十二方位』の読書感想|万人受けはしないだろうけど、ここにしかない独特な雰囲気は魅力的
今回は、アーシュラ・クローバー・ル=グウィン (Ursula Kroeber Le Guin)の『風の十二方位』の読書感想を書いていきます。
『ゲド戦記』の原作者であり、どこかで聞いた「たった一人の子どもが虐げられることで他の全ての住民が幸せに生きている"オメラス"」の話に興味を持って読んだ、アーシュラ・K・ル=グウィンの17の短編集です。
感想
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アーシュラ・K・ル=グウィンは初めて読んだ作者であり、冒頭の『ゲド戦記』と「オメラス」以外はなんの前情報もない状態でした。
率直な感想としては、本当に独特な雰囲気だと感じました。今までにありそうでなかった視点、SFのようなファンタジーのような、ここにしかない作風。フワフワとした掴みどころのない感覚、とにかく不思議な感覚になることは間違いないと思います。
ただ、掲載されている17作品のほどんどがハッキリと何かを提示することがなく、ものによっては革新を語らずに終わったり結末を迎えずにかなり余韻を残したりという形が多いです。なので、人によっては合わない人もいる気はします。そういう意味では、『ゲド戦記』もこんなだったな、と思わずにはいられません。
『風の十二方位』はこんなあなたにオススメ
「これがアーシュラ・K・ル=グウィンの作品なのだな」と受け入れ、この世界を一つの世界観として楽しめる人であればオススメはできますが、『ゲド戦記』がよくわからなかった、退屈だと感じた人は、この短編集も多分合わないと思います。
逆に、ゲド戦記に"何か"を感じた人、みんなが言うほどつまらないとは思わなかった、という人は、合う可能性が高いと思います。
もちろん、本を読む、というのは、いつも自分の好きなジャンル、自分と合うものばかり読むものではないし、それではせっかく“自分が体験しないであろう世界を体験できる”という読書の魅力が半減してしまいます。
気になる方はぜひ立ち読みなどで読んでみてほしいし、とりあえず色々な作品に触れてみたいという人なら、買ってしまって良いと感じました。
アーシュラ・K・ル=グウィンにしか表現できない世界なのは、本当に間違いないありませんからね!