経理のスキルアップを考察する
(最終更新日:2022/8/15)
みなさんの「経理の仕事」とはどのようなイメージでしょうか?
「月次決算を5営業日で行い、期末決算では決算整理仕訳を入れる」
「営業からあがってきた経費を処理する」
など、年間の決算スケジュールが決まっている中ある程度ルーティンの部分もありますし、これ以外にも他部署からの相談に乗ったり、監査法人対応をしたり、多様な業務があると思います。
基本概念
筆者は現状の経理業務のみならず周辺業務について、「付加価値」の観点と「攻め・守り」の観点から、今後の経理業務の発展可能性をまとめてみました。
経理=「守り」×「付加価値が低い」?
まず、皆さんが思い描くいわゆる「経理」は、図の左下、「守り」かつ「付加価値が相対的に低い」仕事に該当すると考えます。(お許しください)
前述したとおり、経理処理という作業はバック機能であり、単純作業が多く、ある程度標準化されているため、代替される可能性が高いことが理由です。
多くの経理人材がこの領域にはある程度自信があるものの、この領域にとどまっている、またはここから抜け出せていないというのが実態だと思います。
筆者は、このスキルから発展的に「高付加価値」の分野、「攻め」の分野にスキルを伸ばしていくことを提唱したいと思います。
「守り」×「付加価値が高い」の領域とは
次に、もう少しイメージがしやすいスキルが、図の左上にある「統制整備」「事象→会計の想起、会計論点の整理」です。
皆さんも、JSOX対応や内部統制の整備、上述した会計論点対応など、聞いたことがある、または少し経験があるという分野だと思います。これらのスキルは知識や経験が求められ、会計士が得意とするポジションであり、上場企業においては内部監査室や経理部マネージャー以上が担っている事例が多いです。実務的なノウハウもあまり出回っていないため、ある程度付加価値が高い仕事だと位置づけています。
ただし、企業内においては売上をあげる・キャッシュを稼ぐといった仕事ではなく、経理の延長線上にある「守り」の仕事と位置付けています。(もちろん、統制整備はガバナンスに関するスキルのため、考え方によっては「攻め」に転じる例も多くあると思います。)
ここは経理が次の考えるキャリアとして一番考えやすく、経理の仕事から見ても親和性が高い分野です。会計に慣れ、理解が深まった人が内部統制の見直しをする機会が増え、より高度な会計処理を考える機会にチャレンジするのはイメージしやすいのではないでしょうか。筆者もベンチャー支援・IPO支援において、経理向けの勉強会や実際の導入作業のお手伝いをする機会が多くあります。
「攻め」の分野について
対して、表の右側である「攻め」にプロットされたスキルは、いわゆる経営企画が担う仕事です。最近だと、FP&A(Financial Planning & Analysis、ファイナンシャルプランニング&アナリシス)などとも呼ばれます。
管理部の中でも、会社の進むべきビジョンや方向性、戦略について大きな地図を描く仕事や様々な目線で投資評価のモニタリングをしていく仕事はハードルが高く、コンサルや投資銀行、ファンド経験者などが多く就いているポジションです。会計士でもなかなか難しい領域であり、経理出身者などもってのほか、という意見もあるかもしれません。
しかし、中長期的な目線でこの分野へ進む、進まなくともこの分野の考え方を身につけることは、自分の付加価値があがり年収があがる以上に、良い影響をもたらすと信じています。
まずは「事業計画」「予算」を知るというスキルです。会社は当然やみくもに経営されているわけではなく、綿密に組まれた「事業計画」「予算」をクリアするように運営されていき、いわばこれが航海でいう「地図」に該当します。この「地図」を正しく理解することは、ビジネスモデルを把握する能力につながるとともに、自分も航海する仲間として、会社をどのように動かしていきたいかというマネジメントからのメッセージを正しく理解するために、身に着けておきたい能力です。
もう一つ、個人的に重要なテーマを記載します。
突然ですが、皆さんは「経営」で一番大事な視点はなんだと考えるでしょうか?
ビジョン、ミッション、経営戦略、社会的意義、社会貢献、企業風土、付加価値、株価、株主価値、配当、ROE、ROIC、雇用維持、人材育成、売上規模、売上向上のための営業施策、投資、コストカット、、、など議論は尽きないと思います。
筆者はここでは、経理人材の目線を考慮して、あえて「ガバナンス(企業統治)」であると主張したいと思います。
ガバナンスが大切な理由とは?
ガバナンスと答えた理由は、企業の行動はすべてガバナンスで説明可能であり、裏返せばガバナンスによって設計されているという点に尽きます。
例えば、皆さんの会社が新規事業や投資を行い、それが仮に失敗した場合、どうなるでしょうか。
など、考慮すべき事項は様々ありますが、おそらく議論の中心となる意思決定プロセスを考えるという内部統制・リスクマネジメントの観点は、すべてガバナンスの問題であると指摘されることが多いです。
この例にかかわらず、企業の行動はすべてガバナンス=ルールによってコントロールされます。それだけ重要な概念なのです。
また、ガバナンスは複雑かつ難解な概念です。
会計や税務は、法律や基準に準拠して一定程度の処理が決まっており、答えがあります。しかし、ガバナンスに正解はなく、企業の置かれた状況に応じて、様々な最適解が存在します。
ガバナンスをどのように設計し、運用していくかは、会社の永遠のテーマだと思います。そして、会社全体を把握する能力というのは、ビジネスマンとしての能力を上げる必須かつ必要不可欠なスキルであると考えています。
なお、ガバナンスの読み物として参考になるのがこちら「CGS研究会」です。
経理人材の皆さんには、重要テーマの1つとして、ガバナンス=どうやってルールを作っていくか、仕組み化していくかを念頭に会社を改善していく、すなわち、後方から会社全体を見渡し船が変な方向に進んでいないかの「眼」をもつ、そのような人材になることを提案します。
仕組み作りは会計人材がプレゼンスを発揮できる領域です。
そのために、経理として多様な目線、すなわち「守り」のみならず「攻め」の機能まで勉強・経験した上でキャリアを伸ばすことが有用です。
まとめ
皆さんはどんなスキルを身につけて他分野までキャリアを展開していきますか?
もちろん、ガバナンス以外にも面白くて、これから先知識が陳腐化しにくい、会社から要請される知識というのは沢山あります。
具体的に、4象限のスキルを細かいサービス・スキル別に列挙すると、以下が考えられます。みなさんが興味があるのはどこでしょうか。
今後は「経験」「スキル」「収入」の面を語っていきます。
いろいろな角度から「今後の経理の仕事術」について考えていければと思います。
こちらのサイトにも、Noteにはない記事を載せていますので是非どうぞ